2013年6月11日火曜日

円相場と株価:「アベノミクス」、「異次元の金融政策」を考え直してみないか

読売新聞 2013.6.11
激しく変動する円相場、乱高下の株価:「アベノミクス」「異次元の金融緩和」に私たちは惑わされていないか。誰が言ったか定かでないがアベノミクスが放つ「3本の矢」、黒田日銀の「量的・質的金融緩和」の冠につく「異次元」に今までとは違った何か新しい政策に過大な期待を寄せ過ぎたのではないか。

「3本の矢」も1本目は大胆な金融政策、2本目は景気回復に向けた財政政策そして3本目成長戦略だ。大胆な金融政策では「2%の物価目標」を掲げ日銀総裁にはコミットする総裁を配した事が特徴だ。しかし「取り敢えず1%を目指し、その後は上昇もある」と言う白川体制とどう違うのか。

財政政策では、国土強靱化を御旗に掲げバラマキ予算とまで言われた公共事業を増やした。今まで我慢していた土建業者に大盤振る舞いと言うことか。おかげで赤字財政を突き進むことになった。

成長戦略は、過去にも各政権で検討していた政策の焼き直しだ。今まで成果が乏しかった政策にどういう息を吹き込もうとしているのか。市場が期待していた法人税減税、規制改革、雇用創出に期待外れの感がする。

成長戦略発表後に株価が大きく下落したことが衝撃だったが、安倍総理は何の反省もない。慌てた甘利経済産業相が法人税減税を言い出したり、安倍総理は9日の東京。大井町での遊説で「秋には成長戦略第2弾を出す」「投資減税をやる」と改革を進め、決める政治を聴衆に誓った。

「○○の矢」で政策内容の乏しさをカモフラージュした格好だ。

思い出すのはレーガン元大統領のレーガノミックスだ。減税で増収を目指す政策は、南カリフォルニア大学のラファー教授のラファー曲線に頼っていた。レストランでお皿の上に布巾が置かれているのを見てヒントにしたらしい。

逆放物線で、横軸に税率、縦軸に税収を取る。税収が最大になる税率があるとするが、その税率がいくらかは分からない。

税率が低い領域で税率を下げると税収も下がるが、税率の高い領域で税率を下げると税収は増えるというわけだ。しかし、レーガン大統領の時、税率が高かったのか、低かったのかは分からないままでの減税だ。結果は失敗だったと聞いた。

一方、日銀の異次元の金融政策。白川前総裁が渋っていた「2%物価目標」、「2年で達成」、「2年でマネタリーベース2倍に」は驚きを持って市場に歓迎された。

「取り敢えず1%を目指し、それから上げていく」「マネタリーベースは対GDP比で先進国一高い」という白川総裁時とは打って変わって円安、株高に変わった。

ところが国債の大量買い入れ→長期金利の低水準を期待していた日銀の意向とは違って
長期金利は上昇し、金利で国民の生活にも影響が出てきた。黒田総裁は「長期金利のコンロロールは難しい」と言う。

今回の円相場、株の乱高下は「市場は壊れ、日銀はコントロール不可能」という専門家も出てきた。

同じように1ドル99円でありながら、ある時は円安で輸出産業が買われ株高になり、ある時は円高で輸出産業が売られ株安になる。不思議なことだ。99円なら同じ結果でないといけないのではないか。へッジファンドは、ちょっとした変動を儲けにつなげる。コンピューターによる高速取引、1秒でも早く、1円でも多く稼ごうとするヘッジファンドに振り回されるようではアベノミクス、異次元の金融緩和も効果は不明だ。

「アベノミクス」の3本の矢、異次元の金融政策の本質を見直し、従来にない政策で期待出来るのか、実効性があるのかも見直してみる必要がないか。

東京都議選では、候補者が「アベノミクスの実感がありますか」と問いかけ、実感が持てるように更に政策を要求していくという。

安倍総理は「秋には第2弾の成長戦略を発表する」「投資を促進させるために投資減税もやる」という。

「これでもか、これでもか」の安倍総理に対して、市場は失望するばかりだ。たとえ期待できたとしても内容は分からずじまいで、後に失望へと変わる。一度冷静にリセットしたらどうか。


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