鳴り物入りで始まった黒田日銀総裁の「量的・質的金融緩和」も政策運営で日銀は一枚岩ではなさそうだ。5月は株価、長期金利ともに大きく変動し、市場の先行き不安感を示す動きであった。黒田総裁も長期金利のコントロールは難しいと弱気を見せる局面もあったが、金融政策運営をどう見ているのか、4月26日の政策決定会合議事録要旨を開いてみた。
活発な意見が交わされているようで、量的・質的金融緩和後の動向、物価目標2年、2%の見方、物価上昇実現の見方、金融政策上のリスクとそれに関わる日銀の財務健全化も話題に上っていた。
しかし9人が一枚岩ではなく、「2年で2%物価目標」の時期、見通しの判断では大いにもめそうだ。9人の多数決で決めるので最後は決まるだろうが政治との駆け引きになる。
議事録によると、マネタリーベースは140~156兆円台で推移し、今後も年60~70兆円で買い増していくという。市場にはカネがダブついているというのだがドンドン増やすらしい。
今の金融環境は緩和状態にあるが、更に景気改善につれて強まっていくと見ている。
導入後、振れが大きかったが長期国債買い入れの運営方針を変更したために落ち着いているが、金利の押し下げに繫がる国債購入、押し上げに繫がる物価目標の早期実現という相反するものを受け止めなければならないために動揺したのだろうとも考えている。
金利の上昇は実体経済の好転を示唆するものと言い、企業収益のファンダメンタルズを反映した見方を示している。決して「副作用」ではなく、いわゆる調整局面と見ているのか。
これからの金融政策運営については、2年、2%で委員のニュアンスの違いを見せつけている。
見通し期間の後半には2%の物価上昇率が実現できそうと言う見方が大方だが、複数の委員は後半にかけても物価上昇率の実現は難しいとの見解を示している。
先の決定会合では、全員一致で2年で2%の物価上昇を目指すことだったのではないか。
基本的目標は「2年程度の期間を念頭に2%の物価目標の実現」であるが、継続期間を2年程度に限定し、「その時点で柔軟に見直す」に変更したらどうかという意見も出ている。その方が市場の信認に繫がるというのだろう。
さらに、先行き2%に達することが見通せる状況になれば、達成したと評価する意見も出ている。
しかし、目標に掲げた以上は、2%物価上昇率と言える状況を2年程度で実現するよう金融政策を運営する必要があるという委員もいる。
各委員によりニュアンスが違っているようだ。総裁はまとめるのが大変だ。
今、FRBのバーナンキ議長は量的緩和引き締めにも言及するようになってきた。日銀も2%の達成、時期について厳しい判断を強いられることになるだろう。
また、金融政策上のリスクとして、政府債務残高は急増する中で金融機関の国債保有残高が高水準であることにも触れ、リスクを入念に検討する必要があるという。政府債務が1000兆円を超え、国債の信認にも影響が出て金利が上がれば金融機関の損失は計り知れない。
日銀自身も資本金1億円の株式会社で資産として国債を110兆円持っている。貸し出しが30兆円、その他14兆円で資産総額は154兆円だ。一方負債は銀行券86兆円、当座預金58兆円、その他9兆円の計154兆円になる(参考 アルム二研究会「日本銀行の役割とアベノミクス」野口講師)。
国債の下落は資産の大幅下落になるのだ。大規模な国債買い入れをやっているのだから日本銀行の財務の健全性維持も重要なのだ。日銀だから倒産することはないだろうが・・。
あらゆるリスクを検証しながら、日銀の金融政策運営に国民の生活が託されているのだ。
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