地震 第2輯第64巻2号 に掲載された総合報告 「南海トラフ巨大地震」 |
朝日新聞(2013.7.18)の「南海トラフ巨大地震 200~300年後」によると、東大地震研の瀬野先生が、南海トラフ関連の多数の論文を検証した結果、規模はM9以下(M8.8)で、起きるのは200~300年後だという論文を発表した。
こんな巨大地震が起きる確率が60%だといっても分かりにくいが、繰り返す地震の繰り返し間隔は数1000年、数100年の間に何回発生したかで、回数で割ればいい簡単な計算だ。すると南海トラフ巨大地震の繰り返し間隔は100~150年になり、いつ発生してもおかしくない時期に来ている。
だが、歴史に残っていない、知られていない地震があると、その数値は変わってくるし、メカニズムの違った地震が入ってきても同じだ。
しかし、こういう数値は、まだ先だという危険が遠ざかる数値の方に惹かれやすいのは当然で、ついつい信じてしまう。
そこで、この論文を日本地震学会事務局から購入し読んでみた。「地震 第2輯 第64巻 第2号2012年1月」の総合報告に「南海トラフ巨大地震・・その破壊の様態とシリーズについての新たな考え」というタイトルの論文が掲載されている。1年以上前の論文だ。
ここで、12の南海トラフ巨大地震に関して疑問点が指摘されている。
684年白鳳地震から1361年の 正平地震までの間隔は200年 だったが、1854年安政地震から 1946年昭和地震まの間隔は90年 |
最近の南海トラフ巨大地震が100~150年の間隔で繰り返すといわれていることから考えると90年は不思議ではないが、過去の巨大地震から考えるとい短すぎないかというのだ。
2つ目は、1854年の安政東海地震では駿河湾の奥まで地下のプレートが破壊したが、1944年の昭和東海地震ではここまで破壊しなかった。何故だ。
3つ目は、ゆっくり地震が2001年に浜名湖付近のプレート境界で始まったが、最近終わった。この不安定な滑りは地震を誘発するはずであるが、いつ起きても不思議ではないといわれている東海地震を起こさなかった。不思議なことだ。
これらの疑問点を解明すべく、新しいモデルを提案し、12の巨大地震の中から、宝永地震、安政南海地震、安政東海地震、昭和南海地震、昭和東南海の5つの地震の震度分布の違いを多くの関連論文から精査した。
歴史的地震を固有断層面A,B、C D,Eに割り振り、安政型地震、 宝永型地震の2つに分類した |
安政型地震には、684年白凰地震、1096年永長地震、1498年明応地震、1854年安政南海地震、1854年安政東海地震が分類され、間隔は400年。
宝永型地震には、887年仁和地震、1361年正平辞意sン、1707年宝永地震、1944年昭和東南海地震、1946年昭和南海地震が分類され、発生間隔は350年という。
そして交互に発生し、今度は安政型地震で1498年の明応地震、1854年の安政地震を参照すると発生年は2210年で200年先になるというのだ。
最近の地震学の成果も取り入れた解析がなされており、南海トラフ関連の多数の報文が検証され、おかしい点は除いてまとめられた論文であり、一読すべき内容だ。
100~150年間隔では、すでにいつ起きても不思議ではないが、今世紀中ごろという説もある一方で、今回の「まだ200年先」という新説でちょっとは安心するが、起きれば壊滅的被害をもたらす南海トラフ巨大地震だ。
死者32万人、経済損失220兆円と言ってもすぐには信じられない。対策を立てれば死者は5分の1、損失は半減するというのも疑わしい限りだ。
3.11東日本大震災を機に、地震学者は何かが吹っ切れたように最悪事態を発表し、責任逃れの様相を呈するが、この論文のような厳しい精査も必要ではないか。
でも、これから200年先、日本はどうなっているか。想像がつかない。
朝日新聞 2013.7.18 南海トラフ地震 200~300年後 |
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