2015年12月31日木曜日

「かかりつけ医」、「かかりつけ薬局」に頼りすぎは危険ではないか

「かかりつけ医」、「かかりつけ薬局」に頼りすぎるのは危険ではないか。医療費の高騰を抑えるために過剰投薬、残薬を減らせば年間100億円の削減が期待出来ると言い「かかりつけ医」、「かかりつけ薬局」制度を充実させれば多剤投薬、副作用増も防止できるのではないかと期待されている。

新聞には高齢者の多剤投薬に取り組む医師の事例も出て来たが、それは今のところ特殊な事例だし、施設に入っている高齢者には適応しやすいが、そうでない者にとっては「良い医者」「良い薬局」をどうやって選ぶかが問題だ。

田舎で医者も薬局も少なければ顔見知りの医者、薬局と言うことになるが、高齢者で診療科も多義に渡れば「かかりつけ」など理想論で終わる。それぞれが我関せずで自分の担当分しか考えない。

患者は当然に十何種類の薬を飲み、副作用かどうかは分からず体調を崩し診療科も増えていく。

逆に医者や薬局が多ければ「かかりつけ医」、「かかりつけ薬局」を選ぶのも楽だろうと思うだろうが、これが又大変なのだ。どの医者、どの薬局が良いのか分からないのだ。

取り敢えず開業医で診察を受け、ダメなら病院と言うことになるが紹介状がなければ初診時に別途費用がかかる。1500円から5000円ぐらいの幅があるようだ。

いろんな医者がいる。なかなか腹部の痛みがとれないので願い出てCT検査を受けた。通常なら「1週間後に結果が出るから来るように」と言うことになるのだが、直ぐ結果が出た。どうも検査技師が判定しているようだ。1回だけでは異常が分からないのでしばらくしてもう一度検査しようと言うことになった。

「そんな問題ではないだろう」と思いその医者は避けた。

高血圧も難しい判断になる。まず基準値が結構変更される。記憶では、昔は160/90mmHgだったが、何時か135/80mmHgになり今は140/90mmHgだ。要観察からいつの間にか「異常なし」になる。これが人間ドックの基準値ではもっと高くなるのだ(確か147mmHg?)。

医者に行くと、何も言わないのに勝手に「血圧を測りましょう」ということになる。医者の前で測ると高めに出る私は、いつも血圧を注意されてウンザリする。

医者によっては家庭での測定値を重視してくれるが、医者による測定値しか信じない者もいる。「家庭で使っている血圧測定器を持ってこい」といわれ比較したこともある。

結局、区の特定健診では家庭での測定値を参考にせず、診察室での測定値で血圧を「要治療」と判定された。そう言っても薬を飲めとは言わない。この医者も止めた。

私の場合、最初は総コレステロール値が250位あったが、そのうちにコレステロール値で悪玉コレステロールが基準値より高かったので高脂血剤を服用することになったが、人間ドック学会の基準値ではクリアーしている。更に悪玉コレステロール/善玉コレステロールの比が2未満で正常と言われるようだが、服用すれば2未満でも服用を止めれば2~2.5の間だ。2.5以上は心筋梗塞などの危険があると言われている。

次から次へ新しい所見が発表されるので患者は混乱するが、そこら辺の医者や薬剤師は知らない。そういう情報がある事を知っていても本気で調べている者はいないようだ。

薬局でも「お変わりありませんか」とか「薬は効いていますか」など質問されるがある種の高脂血剤が免疫機能を下げる危険があることを質問しても分からない。

医者が「家庭での血圧は135mmHg以下にするように指導している」というので、一度降圧剤を飲んでみようと思い1錠呑んだところ今までに経験したこともない180~190mmHgになったので服用を中止し医者に行ったら「全部飲んでから来い」という。薬局で降圧剤と高脂血剤の副作用を聞いたら「知らない」という。調べてくれと言うと薬品会社か問屋の営業に電話で聞いて「そんな話は聞いたことがない」と言うことになった。

この医者と薬局は利用するのを止めた。血圧は1週間後に正常に戻った。無理して下げるのも問題だ。知人の奥さんが亡くなったと言うことで葬儀の手伝いに行った。聞くところによると「今日医者に行く予定だった」という。降圧剤で治療しながら脳溢血(?)で亡くなったというのだ。そういう事例が多い。

そんな事をしているうちに、通う医者がなくなった。一度服用を止めて検査してみてどうなるか考えようと思っている。医者は近くに総合病院がありHPを見ると「迷ったらまず総合内科を受診」というフレーズに注目した。ここに行って診察を受けようと思う。人間ドックもやっており日本人間ドック学会の会員でもあるのでいろんな考えが聞けるだろう。
どの医者を選び、どんな薬局を選ぶかは患者の責任かもしれない。薬局の量販店が増え、アルバイト薬剤師の多い薬局で「かかりつけ薬局」など期待出来ない。


日銀の一途な量的・質的金融緩和の評価をどう思うか

現在の物価、名目所得は量的・質的金融緩和策を導入後
上昇に転じたと日銀が主張する資料
経団連審議委員会での黒田総裁講演「転換点を迎えて」より
出口戦略の「で」の字も言わない日銀の一途な量的・質的金融緩和策への評価をどう思うか。目標である2%物価安定目標にも近づけない今、軌道修正、出口戦略に言及することは混乱を招くし、アベノミクスの否定にも繋がり安倍政権がぶっ飛ぶことになるので官邸はウンと言わないだろう。

黒田・日銀総裁は厳しい立場に立たされていることに違いはない。来年の後半から2018年の安倍総理、黒田総裁の任期切れまで、何時政権と袂を分かつか。

脱デフレに向けた2%物価安定目標も2016年後半には達成の姿勢を崩していないが、3%を超える成長率を前提にしているために専門家の間では不可能とみられている。

そして、量的・質的金融緩和も80兆円の買い入れを継続すると言い、市場の予想に反して追加緩和しなかった今回の「補完」措置も資産買い入れを一層円滑に行うための趣旨に合う措置だという。

更に金融緩和の限界論も指摘されているが、黒田総裁は「何か限界があるとは思っていない」と否定する。

最近の記者会見、日本経団連審議委員会での黒田総裁の講演「転換点を迎えて」から日銀の考え方を拾ってみた。

今年の日本経済を物価面で見ると、1年を通じて概ね0%程度で推移しているが物価の基調は着実に改善している。生鮮食品、エネルギーを除けば直近では+1.2まで上昇している。これは日本がデフレにかかって以来初めての経験だという。

だから日本経済は緩やかな景気回復を続け、2%物価安定目標への道のりをたどっているとみている。

又、量的・質的金融緩和の効果として、消費者物価、名目所得共に量的・質的金融緩和導入と共に反転上昇した資料(図参照)を示し、デフレ脱却が確実に視野に入ってきたと評している。疑問を挟む予知はないと強調した。

そして、専門家から指摘されている量的・質的金融緩和の限界について、80兆円の買い入れを継続しているが金融機関によっては国債をすっかり売ってしまったり、日銀にあっては保有している国債の償還がかなり増えており、今回の補完措置は、より柔軟に弾力的に国債買い入れが進められるようにしたとも言い、その効果が実体経済へ効果的に浸透することを期待しているようだ。

だから、黒田日銀は、何ら限界はないと主張するのだ。

日本銀行はデフレからの脱却、2%物価安定目標を実現するために「出来ることは何でもする」という姿勢を崩していない。

ゼロ金利下での量的緩和政策は効果がないというのが経済学の通説(?)だったはずだし、FRBは金融政策の正常化を目指しやっと利上げに踏み切った。

日本でも過去に速水総裁の時、政府の反対を振り切ってゼロ金利から利上げに踏みきり、景気後退を招いたために再度ゼロ金利に戻した苦い経験がある。


成果があやふやなうちに出口戦略に言及することは政府や日銀の信用を落とす危険もはらんでいる。しばらくは日銀も強気の発言を繰り返さなければならないのだろう。

2015年12月27日日曜日

12月26日、23時21分 東京湾地震?:「ビシッ」、「グラッ」一瞬の出来事だった

23時21分東京湾地震
2015年12月27日気象庁地震情報
26 日、午後11 21 分頃、テレビを見ていたら「ビシッ」、「グラッ」ときた。「あれッ地震では」と思ったが一瞬の出来事で終わった。NHKにチャンネルを合わせてしばらく見ていたが地震情報は出なかった。時々こう言うことがある。

気になって27 日の朝、気象庁の地震情報を開いてみると、22 12 分震度2、M3.1、23 04 分震度1、M2.8、23 16 分震度1、M2。 7、23 18 分震度1、M2.7、そして今回の23 21 分震度2,M3.4で東京、千葉、神奈川、埼玉など広範囲に揺れたようだ。震源は北緯35.5度,東経39.8~9度で深さは20km、おなじ場所で5 回揺れた。

確か、この辺りは9 月にも大きな地震があったはずだ。日本気象協会のtenki.jp の東京湾地震を見ると2012 年に4 回(このうち7 月にはM5.4,震度4)、2013 年は無く、2014 年に3 回、そして2015 年は今回までで9 回(うち5 回が26 日の5 回の発生になる)。

2015 9 月12日5 49 分の地震は車で群馬に向かっている時のことでラジオで情報を知った。M5.2,震度5 弱で東京にとっては久しぶりに大きな揺れだった。震源場所の位置は同じだが、深さが60 kmと深かった。何故、調布で5 弱かという疑問もあった。

東京湾付近の地震は、M8クラスの関東大震災クラスが心配されているが、その前にM7 クラスの内陸型地震の可能性が大きい。1894 年の東京地震M7,1855 年の江戸地震M7クラスだ。

出かけるときは、「今日は地震が起きないように」と願っているが、観光場所など人出の多いところに行くと皆楽しそうにしている。


きっと地震の発生する危険など忘れているのだ。そうしないと楽しめない。寺田寅彦博士が言っていたような気がする。

2015年9月12日5時49分
東京湾地震M5.2、震度5弱

2015年12月25日金曜日

トランプさんが米・大統領?:はっきりものを言う政治家が望まれているのか

米・大統領にトランプさんの可能性? 私たちには投票権はないが生活に大きく影響する米大統領選が始まった。注目せずにはいられないが、今ははっきり物を言う政治家が望まれているのか。中道、リベラルではなく、右派、左派がヨーロッパでも頑張っている傾向を見ると米国でも当然だろう。

私だって米大統領選がブッシュvsクリントンでは飽き飽きする。従来のように知事経験者でないために政治的しがらみもなく、募金ではなく自分のカネで選挙戦を戦うというトランプさんの挑戦にはチョットばかりの期待が持てる。

民主党大統領が続いたために今度は共和党だろうと思うが、その共和党候補者にあってトランプさんは41%と言う高い支持を得、2位のクルーズさん、3位のルビオさんを大きく引き離しているとメデイアは報じる。

しかし、一方で50%の人が「トランプさんは大統領候補としては恥ずかしい」と、「誇りに思う」23%、「どちらでもない」24%でマイナスに思っている現状をテレビの情報番組が報じている。

確かに「イスラム教徒は入国禁止」、「俺に任せれば中東和平だって話を付けてみせる」など今のオバマ政権がモタモタしている政治課題に切り込むし、ヒラリーさんなど女性を軽蔑する発言も多いことが顰蹙を買っているのだろう。

予備選では優位に立つために強気の発言もしているのだろうが、本選では実際の政策を訴えていかなければならず、多くの米国民がどう判断するか。

しかし、今のトランプさんのやり方は前大阪市長の橋下さんのやり方に似ていないか。相手をやじり、罵倒し好き勝手なことを言うが「発信力」と誤解され人気を博す。でも本選ではそうはいかないだろう。アメリカの力は弱くなったとは言え世界の警察官の役目は期待されている。

トランプさんが大統領になれば日本も影響を受ける。

日米安保、新しく制定される安保関連法でも尖閣は自分で守れ、南沙諸島では「航行の自由」作戦で日本も軍事参加せよというだろう。日本車が米国で売れていることに反対している。米国産業を守るためにTPPだって米国では反対論が大きい。TPPでGDPは14兆円伸び、雇用も80万人増と言っているのは日本だけでは。

一方、米・大統領選では意外な結果になった前例がある。1980年のカーターvsレーガンでレーガノミックスのレーガンさんが勝利した。掲げたスローガンは「減税で税収増」だったが失敗した。今の安倍総理のアベノミクスも同じ運命か。

イギリスのサッチャー元首相、ドイツのメルケル首相、ロシアのプーチン大統領、言ってることとやってることが違い、顔を合わせて握手するも理解が深まったと安心するのは危険な中国の習主席そして我が国の安倍総理、世界ははっきりものを言い、YESかNOが分かる政治家が出てくる時代なのかもしれない。

トランプさんが、このまま大統領になるかどうかはわからないが、トランプさんが高支持は得ていることは、他の対立候補が大統領になった時にも、その政治姿勢は影響を受けるだろう。


参院選、衆参W選(?)よりも注目だ。

2015年12月23日水曜日

新国立競技場A案に:僅差の優劣に大成建設ありきか

毎日新聞 2015.12.23
新国立競技場がA案に決定したが、その評価得点は僅差で、その優劣には大成建設の存在があるのではないかと疑う。大新聞は23日、一面で新国立競技場が隈さんと大成建設グループ提案のA案に決まったと大々的に報じた。

新聞報道では審査員全員の合計980点で、A610点、B602点で満足度は約60%の出来と言うことか。素人が考えると僅差でどっちでも良いことになる。審査委員はA案を選んだ理由に「工期短縮」「コスト削減」を重視したと言うが、B案だったら「建築計画」「大会後の維持管理」を上げるのではないか。

タイトルが「杜のスタジアム」と言っていたが、まさか「森のスタジアム」になりそうになった。またまた組織委員会の森さんが「B案がいい」と言って批判されていたが、B案を選ぶと森さんの意向を忖度して決めたのではと疑われるのを恐れたのではないか。A案で理由付けを考えたとも思われる。

それと気になるのは、前回のザハ案で大成建設は競技場内部のシート席などを担当しており、以前新聞報道では既に資材を発注したと報じられていた。ここで大成建設を外せばその後の処理が面倒になるのを避けたのではないか。

確か、ザハさんがA案を称して2年間苦労して提案したザハ案に似ているとコメントしていたが、当然だろう。ザハ案でも大成建設が担当していたので似ておかしくはない。


やり直したとは言え、何かありそうな今回のA 案決定だ。そのうちに裏話が出てくるだろう。

2016年経済予測:経済見通しが専門家によってどうして違うのか

2016年の経済がどうなっているか、経済見通しがメデイアに出るが同じ経済指標がありながらどうして専門家によって予測が違うのか。経済学では予め実験は出来ないし、過去に経験したしたことがないから見方がマチマチになる。

心理学者のフィッリップ・テトロックが20年間、284人の政治、経済学の専門家について調べた結果、専門家がそうでない人より優れている訳ではなく、知識が増えるが予測力は増えず、一流の学術誌に論文が載ったといってもジャーナリストや新聞をよく読んでいる人に較べて突発的な状況を読むことが上手いわけではないという(「科学で勝負の先を読む」ウィリアム・パウンドストーン 青土社 2014.12)。

更に、予測の実情は全体的に貧弱だが、懐疑論があるのは健全と言うことだとも言う(同上)。

又、朝日新聞(2012.10.11)に面白い記事「危機読めない経済学」が掲載されている。200811月、ロンドン大経済政治学院の新築開所式に出席したエリザベス女王が周りの経済学者達にリーマン・ブラザーズ破綻による金融危機に関して「どうして、危機が起きることを誰も分からなかったのですか」と聞かれ経済学者達が激しく動揺したという。

その時は十分な説明が出来なかったので、後日、学者や実務家が集まって討論し「誰も全体を見ていなかった」、経済学者は政策を示すエリートだったんだという結論になり女王に手紙を送ったというのだ(同上)。

予測が外れても旧来のモデルに拘って修正せず現実から目を背ける人も多いという。大半の予想は最近の流れの延長線上にあるものから予測するので「当たるも八卦当たらぬも八卦」と言うことか。

ケインズの高弟にあたる著名な経済学者が「私が経済学者になったのは、経済学者に騙されないため」と言ったことを本で読んだことがあるが頷ける。

2016年の日本経済の予想も、期待感を煽り経済を上向けさせたい政府、日銀、各種審議会で政権へYESマンの立場にある人たち、在野の民間エコノミスト、政府の政策に関係ない学者達では見方が違う。

読売新聞(2015.12.23)によると、政府が経済見通しを発表、2016年度GDP成長率名目3.1%、実質1.7%、GDP600兆円を目指すには実質2%、名目3%が必要なために個人消費は今年度1%から2016年には2%、設備投資も今年度2.8%から2016年には4.5%と順調な回復を想定しているが、新聞は「実現不透明」と疑問を呈している。

一方、政府や日銀は経済情勢をどう見ているのか。

安倍内閣の経済の舵取り役の経済財政諮問会議の第20回議事録要旨を見ると、民間議員がアベノミクスの現状をデフレ脱却は前進しているが民需の動きが弱くGDPギャップもマイナス幅の改善が遅れているがGDP600兆円に向け取り組みを本格化する必要があると提言。アベノミクスの成果として税収増78兆円と見て1億総活躍社会、財政健全化に活用すべきだという。

安倍総理も総括で、アベノミクスの3本の矢によって日本経済が再び成長を取り戻しデフレ脱却へ後一歩だと言い、戦後最大の600兆円に向け歩みを確固たるものにし、更に経済を強くする。成長と分配の好循環を作るのだという。

ところが日刊ゲンダイ電子版によると、民主党議員が安倍政権になってからのGDPの伸びの情報公開を求めたところ、2.5%で、民主党政権時の5.7%の半分程度だったのだ。これで良くもアベノミクスの成果などと言っていられるかと言うことになる。

アベノミクスの当初の3本の矢は失敗し、新たに新3本の矢を放つことにもなったが評判は良くない。600兆円を目指すには成長率4~5%が必要でここ20年経験したことのない数値なのだ。また冨の再分配を目指し経済界に賃上げを要請しているが、何故か春闘の要求額は低迷している。

又、日銀の「当面の金融政策運営に関して」(日銀 2015.12.18)によると、新興国の減速はあるが輸出は持ち直し、国内需要、設備投資は緩やかな増加基調、雇用は確実に改善、個人消費は底堅く推移、住宅も持ち直している。企業の業績も慎重な動きはあるが総じて良好で物価、消費者物価も前年比0%だが上昇率も全体として上昇している。

そこで、物価は当面0%だが、日本経済の先行きは「緩やかな回復」を続けているとみている。

何かしら良いとこずくめで、日本経済は安泰のようだが本当に大丈夫か。懐疑論もはねのけて、こんな評価であれば何か不健全な気がしてならない。

アベノミクスも正念場を迎え軌道修正が必要になっているし、原油価格の下落は燃料費の下落でメリットになる点も多いが産油国の経済危機は金融危機にもつながる。現在継続中の量的緩和も円安から物価高での生活苦で国民経済への影響は大きい。選挙を控え政権はどう見ているのか。消費税10%も軽減税率で線引きが大揉めだったが、財政健全化、社会保障制度維持の面からも政策が変質してきた感じだ。

1000兆円を超える借金問題に絡み2020年にはPB黒字化を国際公約しているが9兆円をどうするかで四苦八苦している。

又、日銀の量的緩和は財政ファイナンスの傾向になってきたが、既に国債発行残高の30.3%を日銀が保有し日銀の金融政策も限界に来ている。FRBも利上げに踏み切ったが日銀はどういう出口戦略を描いているのか市場や国民に説明がない。政府、日銀共に「打つ手なし」が正直なところだろう。

安倍官邸はメデイアの政権の政策に対するニュースに目を光らせているのだろうが、あらゆる角度から広く議論を起こすべきだ。


「経済学者の予測は最も必要とされるときに、最も正確性を欠くもの」とは世界共通の事実らしい。政府の審議会でも反対意見が見られないところに健全な議論はなく、国民に間違った情報を流す危険がある。

2015年12月22日火曜日

2%物価安定目標達成にはもっと高い4%を設定すべきだったのか

2%物価安定目標達成には、もっと高い4%を目指すべきだという意見がメデイアに載ってきた。 日銀の異次元の量的・質的金融緩和にもかかわらず、原油価格の下落、中国経済の減退など理由があるにせよ日銀、政府が目指す2%物価安定目標の達成も先送りで2016年度後半という。安倍総理は脱デフレを匂わすが無理な経済状況が続く。

金融政策の正常化に向け利上げに踏み切った米国でも2%は達成していない。

思いだしてみよう。安倍総理が2%物価目標を決めたときのことを。民主党の前原さんが衆院予算委員会で「2%に決めた根拠」を安倍総理に聞いたとき、「2,3,4%といろんな意見が出ているが一番可能性がある2%にした」と応え、前原さんは「その程度の根拠か」と今後も追求すると言って次の質問に移った(当時のNHK国会予算委員会中継)。その後2%が検証された記憶はない。

一番低い数値が一番達成可能とみるのは当然としても、目標が低ければ政府、日銀の意気込みの程度を国民、市場は憶測する。目標が高い方がより高い数値を達成する可能性はあるはずだが、需要がない、設備投資は低水準、賃上げも一部の大企業だけでは家計は振るわず消費は伸びず、脱デフレなど叶いっこない。

そんな時、ピーターソン国際経済研究所のA・ポーゼン、O・ブランシャールさんらは、企業が賃上げするまで法人税減税の国会審議を中止、公的部門の名目賃金を引き上げ民間の賃金に上振れ圧力をかけ、最低賃金の他に政府が管理する賃金を5%以上引き上げ、賃金を物価スライドすることを提案する(日本経済新聞2015.12.15 日本の経済政策への提言より)。

企業が賃上げするまで法人税下げの国会審議を中止せよとは言い考えだ。すべて企業の要求を丸のみする安倍総理にとっては耳が痛いだろう。

更に、少なくとも3年間が非伝統的金融政策である量的緩和の継続を宣言、合わせて2%のインフレ目標をもう少し高く設定することと言う(同上)。インフレ率が高くなると国の借金も減る。デメリットもあるがメリットも大きいことは多くの専門家が指摘していたことだ。

一方、クルーグマン教授も実際に2%のインフレ率を達成するには、「4%のインフレ目標」を掲げるべきだと言い、多くの国民に物価が上がることを信用してもらうことが大事だという(週刊現代2015.12.26)。

両者の提言には一理ある。アベノミクスもその効果には疑問が呈され、軌道修正の必要性が説かれてきた。

今になって、2%物価安定目標を達成するために4%を目指すと言ったら、「アベノミクスは失敗だったのか」、「今継続中で限界も近づいている日銀の量的・質的金融緩和は効き目があったのか」と言うことになり黒田さんや安倍さんの任期である2018年まで持たないのではないか。


安倍政権のことを考えると軌道修正は責任論にも繋がり無理だろうが、何らかの変更は避けられないのではないか。

通常国会は経済に力を入れるようだが安倍総理には新3本の矢、財政健全化、規制改革、黒田総裁に出口戦略を問いただしてほしいものだ。

2015年12月20日日曜日

憶測呼ぶ安倍-橋下会談:メデイアは、唯利用されているだけでは

大阪市長を辞めたばかりの橋下さんが安倍総理と会談したことが憶測を呼んでいるが、メデイアは唯利用されているだけではないのか。東京でおおさか維新の会と安倍政権の関係者が集まり3時間も会談したパフォーマンスは見事と言うしかない。「首相の一日」欄を見ても数分、数十分刻みの会談だし、経済財政諮問会議などの出席時間も1時間程度だから重きを置いていたのだ。

2人の関係に一体どういうメリットがあるのか。

確かに、政権と長時間会談が出来るほど太いパイプを持っていると言うことは橋下さん自身にとっても存在価値を上げることになるし、一方、安部総理にとっても橋下さんのような行動力、発信力のある政治家(?)は身内にしておきたいだろう。

メデイアは政策では是々非々、野党とは一線を画し野党分断も狙っているのではないかと憶測するが、一部に参院選に出馬するのではないかとみられている。

今まで大阪府知事、大阪市長として地方自治ばかりでなく国政にも大きな影響(?)を与えてきた。中央に出てくればカメラを引き連れての行動が目立った(予めメデイアには予定表を流すので追っかけるのは楽だ)。

テレビニュースでも橋下さんの会見の様子が頻繁に流れる。何か面白いことを言うのでメデイアとしては重宝するのだろう。地方の知事や市長の出番に較べれば群を抜いて多い。

政策の一番の売りは大阪都、副都心構想だろうが、大阪だけでやれるものではない。兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県など近隣府県はどう思っているのか。ほとんど発言を聞いたことがない。

「維新の会」を結成し国政にも進出した。地方政治を預かりながら国政にまで手を出す行動力は立派だった。国の政治を動かさなければ地方自治は二進も三進も行かないと考えたのだろう。

市長や知事をやりながら国政政党の代表を務めるハードな仕事をこなしてきたが、「毎日の仕事が忙しく、そんな余裕などない」と言った知事もいたがそれが本音だろう。以前、長野県知事だった田中さんが国政政党の代表を兼務したことがあるが県議会からも批判され追われる羽目になった。

橋下さんは追われる羽目には至らなかったが、自ら止めた。

又、橋下さんは他の野党とくっついたり離れたりを繰り返した。第三極構想を打ち上げたがうまく行かない。旧「みんなの党」の当時の渡辺さんとは友好関係になり同じ街宣車の上で耳打ちしたり、満面の笑顔で握手をしていたと思ったら、慰安婦問題発言で嫌悪な関係になり離れていった。その後、みんなの党は解散、維新の会も変わっていった。

その間にも「政策には是々非々で」と言いながら安倍総理との関係は変わらなかった。

大阪W選では自民党大阪府連vsおおさか維新の会になり自民党本部も自民党候補者を応援したが安倍さんや菅さんは妙な動きをした。大っぴらには橋下さん率いる「おおさか維新の会」を応援しなかったが、影ながら応援する動きをしたのだ。でも官高党低の自民党にとって官邸を批判する力などなかった。

橋下さんが自由な身になったとは言え、おおさか維新の会の法律顧問に就任したらしいが、安倍総理をどう利用していくのか。安倍さんあっての橋下さんであり、自民党とは犬猿の仲(?)と見られるが安倍さんの任期は2018年まで、自民党との関係をどう修復し政治家生命(?)を維持して行こうと考えているのか。。

又、橋下さんには発言に火種を抱えるし、親密になりすぎると仲違いする習性があり身内だって攻撃する。国民にとっては正論で面白いが組織の維持という点では危険きわまりないのだ。


メデイアが作り出す橋下像、安倍―橋下の関係を正しく評価する国民の目が大事ではないか。参院選、憲法改正など橋下さんが係わるであろう政策に惑わされてはいけない。

2015年12月19日土曜日

何故急ぐ! 2%物価安定目標、日銀と政府が袂を分かつ時

何時、政府と袂を分かつか
日本銀行本店
何故急ぐ!、2%物価安定目標、日銀が政府と袂を分かつ時が来るのか。歴代日本の政権が脱デフレ宣言を目指して来たが叶わず、2年前「2年で2%」を掲げ黒田・日銀総裁が就任したが、原油価格低迷、中国経済の停滞、米・利上げによる新興国経済の不安など理由はあるが物価上昇は至難の業と映る。

2年の達成が不可能とみて日銀は2016年後半に先延ばしした。それでも消費者物価が下振れすると「間髪入れず追加緩和」の姿勢を示し市場の失望を防止しようとするが日銀の「打つ手は限界」感が強い。

18日に開いた政策決定会合では「追加緩和」の意味合いを薄めるために「緩和補強」策を打ち出し6vs3で決定したようだ。米国の金融政策正常化に向けた利上げを受けての日銀の政策決定に市場は失望し、株価は366円下げて18986円後半、円相場は63銭高の121円79銭~81銭、金利は0.27%で0.025%下げ低金利を維持する。

政府と日銀が一体となっての脱デフレ、2年で2%物価目標達成を狙ったが、日銀の金融政策、特にゼロ金利下での量的緩和は正統派経済学者が効き目なしと評価していたとおりになりそうで、税制改革、構造改革など政府の役目が重要になってくるが参院選を控えての税制改革、一向に進まない構造改革に絶望感が強い。

アベノミクスの成果(?)で企業では内部留保、預金も膨らむ一方の経済低迷に政府、日銀は二人三脚で設備投資、賃上げでの冨の再分配を要求、消費拡大で物価上昇を目論む。
これが目指す経済の好循環なのだが経団連会長は同調するも経済界は一体ではない。

「設備投資もやれるものはやっている」「賃上げは経営者と労働者の関係」と冷たい。経団連会長も浮いている感じだ。

そして、安倍政権は新3本の矢を放った。「的か矢か」と冷笑されるが、GDPを2020年までに490兆円から600兆円にすると言う。当然名目成長率は3%だ。「そんな可能性すらあるのか」と専門家は疑うが安倍総理周辺のYESマンは強気の発言をする。

ところがGDPの成長率を民主党議員が情報公開を求めた結果が日刊ゲンダイ電子版に掲載されている。民主党政権時のGDPの伸び率は5.7%だったのに対して安倍政権での伸び率は2.5%だと言うのだ。民主党政権時は福島第一原発事故など甚大な事故を経験したときであったが安倍政権は負けている。
安倍総理は国会審議で民主党議員の質問に「民主党政権時代はどうだったか」と反論していたが、これではみっともない。

日銀にだってGDP600兆円に向け政府から政策上の注文があっただろう。達成時期は2020年だ。そんな時安倍政権は存在しないはずだ。

日銀政策決定会合の委員が冷静に考えて判断したとき、政府と袂を分かつ時が来るのか。

2016年夏は参院選だ。2%物価安定目標は2016年後半になっている。どう経済指標をいじくるか分からないが、「後半には達成」への期待感を煽れば良いだろう。

でも2017年になると達成不可能であれば日銀総裁、副総裁の責任論が出てくるだろう。少なくとも岩田副総裁は自ら言ったことだから辞任やむなしだ。

2018年になると、安倍総理、黒田総裁の任期が切れる。安倍総理の任期は切れるが鳩山さんなどは党則を変えてでも安倍続投ののろしを挙げている。でも官高党低で自民党内にも不満分子が多くなっているようだ。次は保守系リベラルの出番と言うが、有力候補者は全員が安倍保守系政権の要職に就いている。「今日からリベラルです」と旗を揚げることが出来るのか。

黒田さんも日銀の本流ではない。安倍総理に引き立てられたから職にいるのであって政治的背景が無くなれば再任は無理ではないか。日銀本流が巻き返しを図るだろう。

その時、アベノミクスは失敗と言うことになるが、次の衆院選で国民へ信を問うことになる。

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2015年12月18日金曜日

米、金融政策正常化へ利上げ:日銀はアベノミクスの第1の矢で政治的足かせか

米・FRBは金融政策正常化に向け非伝統的金融緩和政策を止め利上げに踏み切った。一方日銀はアベノミクスの第1の矢が政治的足かせとなり独自の出口戦略は立てられず、やり方によってはアベノミクスの否定で安倍政権がぶっ飛ぶことにもなりかねないのだ。

FRBと日銀の国債などの保有残高を見るとFRBの保有高550兆円(円換算)、対GDP比(2015年)25.5%に較べ日銀は保有高315兆円、対GDP比63.8%と言う異常な割合、日銀の国債保有は30.3%になり海外では財政ファイナンスではないかと疑われているが実際にもそうなのだ。

しかし量的金融緩和、出口戦略では日本が先輩に当たる。

出口戦略では失敗したが、速水総裁の時、政府が景気後退の恐れがあり中止を要望したが日銀は利上げに踏み切り、案の定、景気後退を招き元に戻した前例がある。日銀は当時の経済状況から金融政策は金利の上げ下げによる伝統的な政策に戻すことを急いだようだ。結果は失敗し批判を浴びた。でも金融政策は日銀の仕事、政府が口出しする分野ではない。

最近も、この事例を挙げて日銀が量的緩和を止め利上げをするのを政府が牽制したことがある。

その後、欧米がデフレに陥る(?)危険があった時、当時の白川総裁が「日本の金融政策を参考にせよ」と世界に訴えたとき、FRBは「日本の言うことに従う筋合いではない」と言う意味の反論をしていたと思うが、リーマンショック後に急速に市場にカネを流す量的緩和に踏み切った(日銀はその時徐々に増やしていた)。

ゼロ金利、量的緩和は経済学では非伝統的金融政策だったが、米国内の雇用、経済成長の好転が見込まれることからFRBの前議長が敷いた利上げの線上をイエレン議長が利上げを決断したことになる。

安倍総理も日銀総裁を更迭してまで異次元の金融緩和を実施したが脱デフレは見られず逆にデフレに戻る危険も見られるし、2%の物価安定目標の達成時期も2016年後半に先送りされた。消費者物価指数の動向を見ながら指標が後退するときは「躊躇せず追加緩和」を匂わす。疑心暗鬼の市場も黒田総裁の言及で期待感をにじませる。

FRBの利上げのタイミングが議論されている中で、国会の予算委員会で野党議員に「出口戦略は?」と問われ安倍総理は「専門家に任せている」と直接の言及を避けたことがある。当然と言えば当然、無責任と言えば無責任だった。

安倍総理はリフレ派の意見を採用し「第一の矢」を放ったが的を離れそうになったのだから軌道修正する必要があったが何ら言及していないのは無責任になる。

更に、アベノミクスで新3本の矢も放ったが、経済の好循環には及ばず、経済界に設備投資、賃上げを要求、黒田総裁もかねがね賃上げの必要性を訴えていた。政府、日銀が二人三脚で同じ訴えをしているのだ。

以前は頻繁に会談していた二人だが最近は遠のいている。安倍総理と黒田総裁が会談したとなるとメデイアは騒ぎ「どんな話をしたんだ」と詰問するが、黒田総裁の顔は冴えない。政府と日銀では考え方が違うようだ。

物価上昇を目指し、追加緩和も辞さない日銀だが、政策決定会合では一人の委員が2%物価達成時期を中期目標にするよう提案しているがいつも1vs8で否決されている。朝日新聞(2015.12.9)の「危機後の中央銀行」の記事でG30評議会議長のジェイコブ・フランケルさんのインタビュー記事が載っていたが、「2%インフレ目標は短期的に達成するものではなく、中期的な目標と捉えるべきだ」と言う。

日銀の黒田総裁も金融政策の運営に苦しんでいるのではないか。米国とは反対に政治課題とコミットしているために独自色を出そうとするとアベノミクスを否定することにもなりかねず、安倍政権がぶっ飛ぶ危険もはらんでいるのだ。

それでいて、失敗すると日銀のせいにされてしまう。「2年で達成しなければ辞任する」と豪語した岩田副総裁が責任を取るか。

日銀が国債の30%を保有することは財政ファイナンスと疑われるし、2020年にPB黒字化が出来なければ市場の信用を失ってしまう。国債は下落、長期金利は上昇、勿論内部留保も300兆円を越えるし、借金してまで設備投資する必要が今のところ無いとは言っても日銀を始め金融機関の経営は危うくなる。

金融政策、金融システムの信用を失うのだ。日本経済の混乱は目に見えている。いつも経済危機は銀行経営が危なくなるときだ。

出口戦略は米国と同時にやった方が良いと思うのだが。出口戦略、量的緩和の先輩格である日本が後れを取ったことになる。