日本の安全は安保関連法に頼るのか、それとも国民の多くが願う憲法9条を堅持で守るのか。安倍総理の10年来の念願、「国民の命、安全を守る」と大見得を切って始まった安保関連法の国会審議も「急ぐ必要はない」「説明が不十分」と言われる中でドタバタ劇の末に成立したが、政権は今後も丁寧に説明し、国民の理解を深める」とトンチンカンなことを言う。
安倍総理は岸家、安倍家の墓参りをして「法の成立」を報告したというが、岸家、安倍家の念願の政策課題であったのか。別荘地でのゴルフと言い誤解される行動の多い総理だ。
本来なら国民に提案し、理解が進んだ段階で選挙で賛否を問うのが筋ではなかったのか。それなのに安倍政権は人気が落ちても議席数を確保できている間に成立を目論んだ。結果的には安倍総理の作戦勝ちだが、その政治手法はファシズム的で自民党の「反立憲」「反護憲」は今後の選挙でその責を問われる事になった。
私も変質してきた国会を立憲主義、護憲の国会に立て直す必要があると思う。
ところで日本の安全をどうやって確保するか。安保関連法で米軍の力が抑止力の強化になるのか、それとも従来のように憲法9条を堅持すべきなのか。
安保関連法賛成派の国際政治学者、外交官、軍事評論家は、安全保障環境は時と共に変わってきており、今の中国、北朝鮮の脅威を考えれば抑止力として「良い法だ」というが、何も国際政治学者や外交官、軍事評論家に指摘されるまでもなく危機感が抱いている。
でも、反対派は国会審議の前に解釈改憲を閣議決定したことは立憲主義に反し、憲法違反だと主張する。憲法に問題があるのであれば憲法改正手続きですべきだと正論を吐く。
多くの憲法学者が「違憲」と言う中で「合憲」と主張する憲法学者は極少数では太刀打ちできない。
自民党の高村さんは「法令審査権は最高裁判所に有り、憲法学者ではないと、最高裁の砂川判決を「合憲」の根拠にするが、元最高裁裁判官も「砂川判決は集団的自衛権については言及していない」と反論する。
一方で、国際政治学者は国際法上は個別的自衛権も集団的自衛権も認められていることという。従来からの内閣法制局の見解は「 集団的自衛権は認めるも憲法9条から行使はしない」という見解で法的安定性を保っていたが、安倍総理は内閣法制局長官を更迭してまで我を通した。
総理という権力者が人事権まで使って政策を曲げようとするのだから野党は黙っていないが、与党の自民党は全員ダンマリを通した。
7月の国会前の集会で北海道から参加した施設の職員のプラカードに「安倍総理 あなたが脅威です」と書かれていた。多くの国民の総意だろう。
安倍総理は時々国会で妙なことを言い出す。みんなの党の渡辺さんの主張を取り込んで「責任野党」と所信表明で言い出すかと思ったら今度は「積極的平和主義」と言い出した。
私は日本人なら「積極的平和主義」というと憲法9条を堅持することと思っていたが、安倍総理は集団的自衛権を行使できるようにして同盟国と世界の平和維持に努めるというのだ。日本が世界の中心に出ようというのだ。
でも本来であれば国連が中心になるべきではないのか。
世界で紛争が始まれば国連の事務総長が動き、安保常任理事国で調停、制裁など行動するべきであるが今は国連が役割を果たしていない。
シリアの内戦、難民問題、中国の南シナ海での埋め立て軍事施設化、尖閣諸島での領海・領空侵犯、アラスカ方面での米国への領海侵犯など、国連常任理事国である中国とロシアの国際ルールを守らない不法行為が要因になっているのだからどうしようもない国連の現状なのだ。
そういった中国などの脅威に対して成立させた安保関連法に対して、自由主義国はエールを送るが中国は「専守攻防」を破棄したのかと批判するし、ロシアは警戒感を表明したと言う。無法国家の勝手な論理には困った物だ。
ところで、安保関連法が成立すると「用心に越したことはない。予め備えておくことが重要なのだ」と自民党幹部は言う。
「備えてはおくが使うことはないだろう」という意味であれば何も制定する必要はない。今まで通り「集団的自衛権は認めるが行使はしない」で良いのではないか。
同型国である米国等の要請で動くことになるのだろうが、今回の法案の成立過程を見ても支援要請でまた国会が混乱し、反米意識が高まる事態は米国の望むところではない。米国の要請は相当慎重になるのではないか。そうでなくても米国の軍事費削減を日本が肩代わりしているのだ。
国会審議では想定される事態がいろいろ議論されていたが、実際に優先度が高い軍事行動としては、中東での支援行動、東シナ海、南シナ海での中国を監視する活動、北朝鮮のミサイルへの対応だろうか。
中東での後方支援活動は兵站になり危険性が最も高い軍事行動になる。政権は「リスクは低い」と言うが、戦争を知らない人たちの言うことだ。PKOでの駆けつけ警護も今までは危険と背中合わせの状態だったが、今後は危険の中へ突っ込んでいくことになる。
安保関連法は6ヶ月以内に施行される。
国連主導の平和維持活動が出来れば抵抗も少ないが、米国主導の有志連合での活動となると国民の理解が得られるか。国会の事前承認では今は自公が圧倒的多数の議席を占めるので政府提案も通るだろうが、安倍政権後は分からない。
政権によって対応が異なれば、それこそ法的安定性を害することになる。
安保関連法の適用を許すこともなく世界の平和維持活動が出来るのは、国連の安保常任理事国に与えている拒否権を廃止し、安保理事国で調停、制裁行動がとれるようにすべきではないのか。
中国、ロシアに対しては指導者が変わることを期待したいが、現状改善を急いで国益に反する譲歩をしてはいけない。
「将来に対する備えはするが使わない」、そういう安保関連法であって欲しいと思う。
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