2015年9月24日木曜日

夢の再生医療「STAP細胞」にとどめ

夢の再生医療としてノーベル賞候補に匹敵する快挙として華々しく論文発表されたSTAP細胞も直ぐ捏造疑惑がネット上に流れ、理研も右往左往し対応に手間取っていたが、読売新聞(2015.9.24)によると理研の調査結果がNATUREに発表され「STAPはES細胞由来だった」ととどめを刺した。

世界中で発表された研究論文が捏造、コピペなど不正行為があったことが容易に検証できる今の技術に驚くとともに、最近では東京オリンピックのエンブレムでの盗作疑惑のようにイベントで華々しく発表された分、注目を引きすぎた感がする。

もし、STAP細胞論文を公表せず黙って発表していたらどうなったか。恐らくこれほど騒がれることもなかったろうと思う。しかし、それでは理研の目論見に反するのだ。

世界三大研究不正事件と言われるほど今回の捏造事件は不可思議なことが多すぎる。

専門外の小保方さんが再生医療分野での研究を始め、研究仲間の伝手でハーバード大関連の病院の麻酔科教授だったバカンテイさんのアイディア、指導でSTAP細胞研究に取り組み23年の短期間に研究成果(?)を発表できるほどになったことにもメデイアは小保方さんを持ちあげ、秀逸な研究者として煽った。

不思議なことの一つ目は、バカンテイさんは小保方さんにどういう指導を行っていたのか。アイディアは植物からとったようだがバカンテイさんは自ら実験をやっていたのか。小保方さんが自ら再現テストに苦しんでいる時、酸処理ばかりでなく、細い管を通す必要があるとアドバイスしていたがその方法でも再現は不可能だった。何ら小保方さんを援護したことにはならない。

早い段階で米国の学会は「STAP細胞は存在しない」とコメントしているのが新聞に載っていたが、それでもSTAP細胞を力説していたのはどういうことか。

二つ目は、小保方さんは何故、日本で続けて研究しようとしたのか。小保方さんが持ちこんだ研究テーマは他の機関は採用しなかったが、理研の若山さんだけが理研の自らの研究室に迎え入れたという。若山さんは理研に黙って小保方さんに研究の場を与えたそうだが、そんなことができるのか。

研究費を若山研究室の費用から捻出したとすると刑事事犯になるが、バカンテイさんから出ていたとも考えられる。

三つ目は、理研内で目玉となりそうな研究を探していたらハーバード大で研究していた小保方さんのSTAP細胞が目にとまり、応募期間、応募手続きも無視して正式な研究テーマに取り上げることになった。その後の研究は秘密保護のために所内の研究発表等はせず、秘密裏に進められたようだ。

後に理研のコンプライアンスが問題になったが、正式な手続き、研究報告の手はずを踏んでいれば、優秀な理研の研究集団だから研究の問題点が明らかにされ、こんな不祥事は未然に防止できたはずだ。STAP細胞論文は所内の研究発表の段階で没になっていたはずだ。それが出来なかったことが残念だ。

四つ目は、誰が、どうしてES細胞を混入したのか。一番可能性があるのは実験をやっていた「小保方さんがES細胞を混ぜた」と見ることだが、小保方さんは頑固に否定している。誰が考えたって実験担当者以外が他人の研究資料に手を加えることなんてできっこないはずだ。

「知らない」「やっていない」では研究者としての責任を回避することは出来ない。

特に弁護団を組んだことは心証を非常に悪くしたのではないいか。

恐らく、懲戒解雇処分、損害賠償請求など今後理研と争うことになる事は分かっているので、弁護士が「「知らない」「やっていない」「STAP細胞はある」だけ応えろ」とアドバイスしている事は容易に想像出来る。弁護士は真実を追求するのではなく、依頼人を守ることが本職だ。

小保方さんも弁護団を抱えているために理研の実験不正の検証が終わり懲戒処分を決める前に依願退職を許してしまった。これで懲戒処分は逃れることが出来た。更に損害賠償請求も論文掲載料のみで済ませることが出来た。理研はゴタゴタが長引くことを嫌ったし、理研の非を追求されることも避けたのだ。

後、弁護団が活躍出来るのは早稲田大が博士号の学位を取り消したときに異議の申し立てが出来ることだ。ここでも早稲田大はゴタゴタが起きるのを嫌って何か策があるのか。

しかも小保方さんは地に落ちた研究者になったが、弁護団が背後にいることで「危険な研究者」のレッテルを貼られ今後不自由をするのではないか。

寧ろ、理研の特殊事情から成果を出すことをせっつかれ実験に成果が出ていなかったこともあり、「ES細胞を混入させ成功したかに見せよう」と考えたとすれば、まだ未熟な研究者として同情を買うことも出来たのではないか。早い時期に真実を説明しなかったことが悔やまれないか。

五つ目は、これだけ日本の科学界の信用を失墜させて事件を起こしながら理研トップの責任の取り方に疑問が残る。理研トップの野依前理事長はなかなか責任をはっきりさせようとしない。「研究での不正は現場の研究者が責任を取るべきで、組織のトップが取った例はない」と責任回避の発言をした。皆、「責任を取るはずだ」と思っているのだから理研という組織はどうなっているのかと言うことになる。

最後は定期の人事異動という格好で野依理事長や理事連中が辞任した。このときも「責任を取ったわけではない」と引責辞任を否定したが、皆引責辞任である事は分かっていた。野依さんは「もう年なので」といっていたがその後文科省傘下の研究所の役職のたらい回しに乗っかった。

世界的にも著名で優秀な研究者だった笹井さんを失い、組織は大幅な改変となった。また多くの研究者は任期雇用で成果を出すために過酷な環境で研究をしているブラック企業もどきの実態も明らかになり、新しく理事長に付いた松本先生は研究者の待遇改善、「研究者のやる気」に頼る運営を目指すという。

今回の事件で日本学術会議や他の学会から再現実験など止めて早急な処分を要求され、理研もそうしようと考えたようだが、文科相や科学担当大臣まで「再現実験をやるべし」と介入してきたために問題解決がゴタゴタした感が強い。

後になって考えればもっと上手く解決出来たのではないかと思えるが、普段から研究不正防止に力を注ぐ一方で、不正が発覚したときは「どう処置するか」、マニュアルの作成も必要ではないか。


又、研究者は弁護士に隠れてはいけない。自分のやったことは自分の言葉で説明すべき責任がある。そうすれば又、道も開ける。

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