2013年1月31日木曜日

日本経済再生:民が成長戦略に乗るか、経営者マインドを変えられるか、そこが問題なのだ。


日本経済再生には、政府の成長戦略に民間が乗ってくるかどうか、企業の経営者マインドを変えられるかどうか、そこが問題なのだ。24日に開催された第3回経済財政諮問会議での麻生副総裁・財務相の発言だ。さらに、成長戦略に乗ろうとする企業が出てきて、内部留保を取り崩し、銀行から借入金を起こし、設備投資することをしない限り日銀が資金供給量を増やしても、そこから先にカネは出ないというのだ。

安倍総理から2%物価目標を突きつけられ、道筋と説明責任を果たせと言われている日銀には援軍の発言だが、その通りなのだ。

今、断片的だが日本経済の状況が色々言われている。

市場にはカネがダブついている、日銀は資金供給するが日銀の口座に預けたままになっており、43兆円ともいわれている。企業は投資せず、賃金も抑えて内部留保は260兆円にもなる。民のカネで投資しようと思う事業が見当たらない。

特に日銀はカネの動きを知っているから情報は正確だろう。この会議でも、白川総裁が経済、物価の見通しと金融政策について資料を提出し説明している。

企業の成長期待が低下するなかで、賃金は2009年半ば以降、低下傾向が続いている。雇用については不足している非製造業と過剰感のある製造業の二極化が目立ってきた。消費者物価は、ここ数ヶ月は0%横ばい。価格設定行動も仕入れ値の上昇を売値に転嫁出来ない難しい状況が続いている。

驚いたことに、上場企業の実質無借金企業の割合が4割を超え、非上場企業も含め現預金保有額は215兆円だという。

企業がもっともっとお金を使う状況になれば日本経済の成長は可能で、日銀は引き続き強力な金融政策を運営し、日銀の使命をしっかり果たしたいという。

でも日銀の金融政策だけでは、どうしようもないのだ。

麻生副総理・財務相の発言が本音なのだろう。

給料を上げたら、雇用を増やしたら法人税で減税するインセンテイブに民間がのるか。バランスシートを見ても債務超過は消えたが、設備投資をしない。労働分配率も増やさない。

さあ、これはどうするか。ここのところが問題なのだと麻生さんは至極当然の指摘をする。

これでは、日銀が資金を供給しても、そこから先にカネはいかない。これは企業の経営者マインドの問題でもあるという。

経営者が如何に「その気になるか」、どうすれば気分が変わるか。

デフレ、円高、政府の成長戦略がどうなるか。日銀の金融政策も大事であるが、ほとんどが政治の問題だ。

経済財政諮問会議は、もっと日本経済の病根の核心に迫らなければならないのでは。民間委員から、デフレを正面から取り上げて議論する。麻生副総理の疑念をストレートに取り上げて議論することが提案されていた。当然のことで注目したい。

2013年1月30日水曜日

2%物価目標へ、「政府は政府、日銀は日銀として」孤立する白川・日銀総裁

第3回経済財政諮問会議
議事要旨
内閣府HPより

2%物価目標達成へ、「政府は政府、日銀は日銀としてやっていく」と言わざるを得なかった白川・日銀の孤立が浮き彫りに。鳴り物入りで復活した24日の第3回経済財政諮問会議で金融政策の集中審議がされたが、安倍首相の所信表明では「政府と日銀が緊密な連携で」のはずが、日銀へ丸投げする安倍政権の姿をさらけ出す結果になった。

第3回経済財政諮問会議の議事要旨が公開されたので内閣府のHPを開いてみた。50分という短い時間に官僚や出席委員が作成した資料を基に議論されたようだ。

甘利委員が「金融政策、物価などに関する集中審議」を行うと宣言し白川総裁に説明を依頼した。

白川総裁は、資料に基づいて、経済、物価の見通しと金融政策について説明した。その中で、上場企業における実質無借金企業は4割を超え、非上場企業を含めると現預金保有額は215兆円を超えていることを説明し、この緩和的な金融環境が活用され、企業がもっともっとお金を使う状況になれば日本経済はもっと成長すると発言した。

この発言に、茂木委員が、成長戦略できちんとした目標がなかったり、企業マインドが研究開発や設備投資に向かないから、こういう状況になっていると思うが、「民間に資金がある、新たな成長戦略を取るから金融緩和をやらなくても良い」と言っているのではないと思うが、ミスリードにならないようにと釘を刺した。

これに対して白川委員は、成長力強化の取り組みがないと金融緩和をやらないというわけではない。政府は政府として、日銀は日銀として強力な金融緩和をやっていきたいと全く齟齬はないことを主張した。

安倍政権と日銀の緊密な連携に疑問符が突く状況ではないか。

最後の安倍総理の総括でも、日銀に任せているが大胆な金融緩和を期待する。デフレファイターとして目標を達成してほしい。次回に目標達成に向けた道筋をしっかり描いてほしいと言うばかりだ。

安倍総理に2%物価目標への責任など感じられない。日銀にやれやれと言っているだけだ。

政府の中でも麻生委員は冷静に見ている。
企業が給料を上げたり、人員を増やせばインセンテイブを出すと我々は言うが、民間が乗るか、乗らないかが問題だ。バランスシート上も債務超過は消えたが、企業は設備投資をしない。労働分配率も増やさない状況が続いている。

さあ、これをどうするか。ここのところが問題で、最後の経済成長路線に乗る企業が出てきて、内部留保を取り崩したり、借入金を増やして設備投資をしない限り、日銀が資金供給量を増やしても、そこから先にカネが出ない。如何にその気にさせるか、その気になるかが重要なのだ。

麻生委員の発言は、この会議では日銀寄りの発言であるが、一番的を得ていると思う。

さらに麻生委員は言う。この1ヶ月、何もしていないのに株は2割あがったり、円が1割安くなったりしているが、何をしたかと言えば、何もしていない、国会も開いていないのに気分は変わるのだという。

民間からの高橋委員が同調し、このことを次回にストレートに取り上げて議論したらどうかと提案した。

高橋委員は他にも良い提案をしている。

企業の余剰資金を如何に投資に振り向けさせるか。如何にしたら賃金、雇用を伸ばすことが出来るか。若者や女性を含む人材の育成が出来るか議論していかなければならないと言う。

そして、肝心なことであるがデフレを正面から取り上げて議論したらどうかとも提案している。

私も賛成だ。我が国だけどうしてデフレから脱出出来ないのか。デフレの要因は何なのか。

円高は通貨流通量で議論すれば良いのか。日銀の政策を批判するエコノミストは、リーマンショック後、欧米の中央銀行は通貨を2~3倍に増やしたが、日銀は1.2倍で少なすぎると言えば、日銀はマネタリーベースで残高は120兆円、対GDP比27%で先進国一高い率で、供給量は十分であると反論する。

統一見解もなく、それぞれが別個理由で行動しているようでは、デフレ脱却、円高対策など期待できない。

兎に角、安倍総理の日銀丸投げ姿勢は、「強い経済を取り戻す」公約に反するのではないか。

これから開かれるであろう国会審議で徹底的に討論すべきである。平行線で終わる議論などやっても意味はない。
中央銀行バランスシート
週刊エコノミスト2012.2.28















講演 チャレンジングな経済環境
下でのわが国の金融政策
2013.1.12
日銀HPより
  

2013年1月29日火曜日

デフレ脱却、円高対策:果てしなく続く金融政策論争


デフレ脱却、円高に向け「一段の」、「大胆な」、「従来と次元を異にする」など冠は違うが金融緩和論争が果てしなく続く状況にある。ここに来て2%物価目標も加わり、日銀と政府の責任の擦り合いも目立ってきた。安倍総理の28日の所信表明演説でも「日本銀行において2%の物価安定目標を出来るだけ早期に実現する」ことを言い忘れなかった。

今後、政府と日銀の一層の緊密な連携とは言いながら、その責任を日銀に押しつけている感じだ。

中央銀行のバランスシート
リーマンショック後の通貨
供給量が日銀は他国に
較べて少ない
週間エコノミスト2012.2.28
特に円高要因として、08年秋のリーマン・ショック直後からの通貨供給量の違いを挙げる政治家、エコノミストが多い。

米国・FRBは2.8倍、欧州中央銀行は2.1倍、イングランド銀行は3.5倍に増量したが、日銀は1.2倍で明らかに少なすぎる。通貨の高い、安いは通貨の流通量によって決まり、これでは明らかに円高だというのだ。

ところが、日銀はマネタリーベースを国によって経済規模が異なるので対GDP比で比較した結果、先進国一高水準にあり、決して通貨の流通量不足ではないと反論する。

それによると、日本は対GDP比で26%、米国は17%、ユーロは18%で、リーマンショック後、大量に資金を供給しているという。

経済指標の取り方によって、どうしてこのように真っ逆さまの結論になるのか。

包括的金融緩和政策は効果
があった。対GDP比較でも
2012年日本は26%、
米国は17%である
講演チャレンジングな経済
環境下でのわが国の金融政策
2013.1.12
日銀HPより
昨年の国会審議を聞いていたが、質問者である国会議員の「通貨供給量が少なすぎるのではないか」との質問に、参考人の日銀・白川総裁は「対GDP比で見ると先進国一高水準である」と反論した。

結局は、いつも平行線で議論がかみ合っていなかった。

それが今も続き、デフレ脱却、円高対策が遅遅として進んでいない。

リーマンショック時、通貨流通量を90~100兆円とすると、その2倍の200兆円まで増やすとすると、後80兆円ほど必要だ。

それで解決するのか、それとも危惧している好ましくないインフレを招くのか。


28日に国会も開会した。当然に、経済再生の重要課題として、デフレ脱却、円高対策が審議のテーマになるだろう。

今度こそ、平行線ではなく、お互いに納得出来る結論を導き、一致団結して経済再生に当たるべきではないか。

先の衆院選では、「経済の専門家である」ことを訴えて当選した議員もいる。そういった議員が集まって日銀と議論し、知恵を出すべきではないのか。兎に角、突っ込み不足で曖昧なまま政策を実行することだけは止めてほしいと思うのだが。

2013年1月27日日曜日

2%物価目標へ:日銀は、何故変節したのか


22日の決定会合で日銀は、賛成7vs反対2で2%目標設定へ舵切りし、共同声明となった。日銀は何故変節したのか。「組織防衛のため」との憶測も出来るが、25日の日本記者クラブでの日銀・白川総裁の講演「中央銀行の役割、使命、挑戦」で、その訳を知ることが出来た。

それによると、金融政策が経済活動に波及し、物価に波及するには相当な時間がかかる。そのためには金融面での不均衡を含めた様々なリスクを点検しながら、柔軟な政策運営が必要だ。

そう考えると「目標」と表現するのもわかりやすいし、日本銀行法の「物価の安定を図ることを通じて国民経済に健全な発展に資する」と言う理念に基づいて新たに設定された物価安定の目標のもとで、金融政策を運営していくというのだ。

要するに金融政策が物価に波及するには時間がかかりタイムラグがあるので、様々なリスクを検証しながら、物価安定、持続的成長の実現を目指すという。柔軟な物価目標であり、日本銀行の枠組みもそう理解できるということなのだ。

もどかしい言い訳をしなければならないところに日銀の苦悩がありありだ。

品質管理で言うと、目標は「2%物価上昇」、P→D→C→Aを繰り返しながら「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展」を実現することなのだ。ただ目指す過程で好ましくない事象(たとえば急激なインフレ傾向)が確認された時に、どう対応するのかがはっきりしていない。デフレからインフレに転換していくのにインフレ・ターゲットを設定するのは世界でも始めてのケースなのだ。


そして、2%目標達成の時期は明確になっていない。ここはチョット品質管理と違うところだが、海外の中央銀行も同様の考えだと正当化している。安倍総理の意向で「出来るだけ早く」と言うことなのだろう。

しかし、この目標達成は容易ではないことが分かる。

現在の日本経済は、潜在成長力が徐々に低下していることを指摘している。経済成長率=就業者数の伸び率+付加価値の伸び率と考えると、最近の状況は就業者数の伸びは-0.6%、付加価値の伸びは1.5%で成長率は0.9%で1%をきっているのだ。

白川総裁は、低成長が不可避とは言わないが、規制緩和などを積極的に進めて行かなければならないと従来の考えを繰り返している。日銀だけの努力ではどうしようもないことは誰だってわかる。

それにしても、どうして日銀はたたかれ続けるのか。金融政策の面で、非伝統的政策を駆使しているが、未だ経済の回復は不満足で失業率は高く、物価上昇はゼロ近辺だ。そこに日銀の責任があると思われているのだ。

そこで、白川総裁は中央銀行としての日銀の組織、仕事にも言及している。

メデイアの日銀に関する報道が金融政策に集中しているが、それは中央銀行としての仕事の一部であり、日々行っている銀行業務、銀行実務が大変重要なのだとメデイアに理解を求めている。

もう日銀たたきは止めたらどうか。

安倍総理は、今回の共同声明を画期的内容と評しているが、民主党・野田政権時の共同文書と内容は大して変わらないじゃないか。

これからは「痛み」を伴う財政改革、競争力強化などによる構造改革が必要になってくる。ここは政治の仕事だ。

そして経済界も「ああしてほしい」、「こうしてほしい」の「おねだり」ばかりでなく、企業の立場で何が出来るか提案すべきだ。

先の記者会見で「日銀、政治、企業がそれぞれの立場で努力する」ことの必要性を説いたのは日銀の白川総裁だ。

安倍総理、経済界はどう考えているのか。経済財政諮問会議でも、もっと核心に触れた議論をやって欲しい。

国民に日本経済再生の道筋を示すのは安倍総理の仕事だ。日銀のせいにしてはならない。

[後記]
28日の安倍総理は所信表明演説で「2%物価目標達成の責任は日銀にある」と述べたという。

ちょっとおかしい。

日銀の当初の1%目処を拒否して、2%目標を強制しながら、その達成責任は日銀にあるとはどういう論理か。

こうすれば、こういう筋道で2%目標が達成できるということを説明することが、今の安倍総理に必要ではないか。 

自らの責任を横に置いて「強い経済を取り戻す」では、民主党政権と変わらない。参院選など戦えないのでは。

地に落ちたとはいっても、民主党の代表は経済評論家だ。国会での審議に期待したい。
                             (2013.1.28)

2013年1月25日金曜日

2%インフレ目標への道筋:安倍総理こそ道筋を示すべきだ

安倍総理が日銀に道筋を
示せと要求する。
一方海外では日銀への
強要に懸念を示す
2013.1.25 読売新聞

2%インフレ目標に向かって、安倍総理こそ道筋を示すべきではないのか。政府、日銀が2%インフレ目標を明記した共同声明を発表したが、市場はすでに織り込み済みで、且つ2014年からの無制限買い入れ策も10兆円ほどしか増えないことが分かって市場の反応は鈍かった。

その結果に焦ったのか、24日の経済財政諮問会議での金融政策集中審議で、安倍総理は「1日も早く達成してほしい。大胆な金融緩和を期待する」と言い、「出来るだけしっかりした目標達成の道筋を示せ」と日銀に要求したらしい(讀賣新聞2013.1.25)。

デフレ脱却、無理なごり押しの2%インフレ目標を押しつけ、その責任を日銀に負わす「日銀いじめ」の構図が見え見えだ。

しかし、すでにゼロ金利に近く、日銀の金融政策にも限度もある。デフレ脱却は政権、日銀にとっても大きな課題だが、白川総裁が就任するときも、「誰がなっても難しい舵取りを迫られる」と言われたほどだ。

相も変わらず安倍総理は「大胆な金融緩和」を期待すると言うが、逆にどういう緩和策を頭に置いているのか。

内閣府参与の浜田さんや静岡県立大の教授などのインフレターゲット論者の請け売りだけしているのか。

日銀の報告を元に議論するのも一つの方法ではあるが、内閣府参与達の考える2%インフレ目標達成への道筋を示したらどうか。

デフレ脱却に向け、通貨流通量の問題、日米金利差の問題などもっと要因について議論されなければならないのではないか。さらに「カネは市場でダブついている」、「民間が自分のカネで投資しようとする事業が見つからない」をどう考えるのか。

白川総裁がいつも「金融政策だけでは無理で、財政政策、成長戦略も必要だ」と言う。日銀ばかりに頼らず、政府も道筋を国民に示すべきではないか。

日銀ばかりいじめているので、海外から「中央銀行は政治家の尻ぬぐいばかりしている」と批判が出始めた(讀賣新聞2013.1.25)。

こんなことばかり続けていると、国債の信認が失われ、金利は上昇し、日本経済は大変な事になる。政府債務が1000兆円を超す先進国一の悪さであることを忘れてはいけない。

安倍政権として、しっかりした道筋を示さなければ、選挙戦での威勢の良い公約も色あせたモノだったことになり、民主党の二の舞で参院選など戦えない。

今は「日銀悪者たたき」で日銀の信頼は揺らいでいる。

政府こそ財政政策、成長戦略で2%インフレ目標へ道筋を示すべきではないのか。共同声明でも、政府と日銀が協調することを言っているのではないか。

2%インフレ目標をごり押ししたのは、安倍総理、あなたなのだ。

2013年1月24日木曜日

成長戦略はTPP参加から

産業競争力会議と共に規制改革会議
の活動も重要になる
民主党政権時は看板を外していた

民間を喚起する成長戦略はTPP参加ではないか。23日に開催された政府の産業競争力会議の記事を新聞で見た。会議の名称からなのか、「企業の競争力を高めるための政策」を求める意見が多く、それに対して安倍総理は「意味のある行動こそ重要と述べて前向きに取り組む姿勢を強調したという(讀賣新聞 2013.1.24)。

やっぱり規制改革による経済構造の変革が必要ではないか。そのためには業界や官僚組織の利権が絡んでうまくいかないことは今までの経験から分かることだ。

それを打破するためには「外圧」を利用するしかない。

そこで直ぐ思いつくのはTPP参加だ。民主党政権時から与党内でも反対意見が多く、政府の参加姿勢に抵抗している経緯がある。国論を二分する政治課題だから利権、制度維持も絡み、おまけに選挙を控えれば先送りがお決まりのコースなのだ。

TPP参加では、全分野で関税撤廃ともなれば農業を守れとか、医療制度を守れとか反対意見が賑やかだ。

「参加すればどうなるのか」、国会でも議論されるが政府、官僚は「参加しなければ情報が入らない」という。「まず参加してどうなっているのか、どういう議論がされているのか」を知ることが大事だとも言う。

でも、TPPに参加して閉鎖的な市場を開放し、利権を排除することが産業の競争力を向上させることに貢献できるのではないか。

会議で民間議員が、官僚の事務局が作成する資料に何だかだと意見を言い、従来からの会議と似たような報告書を書き上げるよりも、「TPP参加」こそ、一番会議の目的に合っているのではないか。

市場を開放し、そのサービスを利用するのは消費者である国民だ。利用者として、消費者として意識改革も必要になる。生命の安全に関わることでも自ら責任を負うことも必要だろう。

又、サービスを受けることにより淘汰されることも出てくるだろう。やはり海外の方が良いと言う場合もあれば、やっぱり国産だと言うこともある。

切磋琢磨して国産も強くなっていかなければならない。規制で保護された産業分野に将来はないのだ。

しかし、心配な点もある。訴訟だ。TPPの趣旨に反するような事態でも起きれば海外からの進出企業はとんでもない高額の損害賠償を要求するだろう。

そうならないためにも、しっかりした構造改革が必要になる。

1%目途から2%目標へ:日銀は死んだのか


物価目標1%目途から2%目標へ、あれほど拒否していた2%目標を明記せざるを得なかった日銀は、本当に死んだのか。デフレはどの国でも経験しているが短期間に脱出している。一方、15年もの長い間、デフレから脱却出来なかった我が国にとっては、政治家や日銀を良く思っていないエコノミスト、そしてメデイアは「誰かを悪者に」しなければならない状況に置かれ、「悪者は日銀」となったのではないか。

安倍総理は、日銀を悪者にして、言うことを聞かなければ日銀法を改正してでも2%目標を設定し、デフレ脱却、日本経済再生に賭けると訴え、政権の座に返り咲いた。

又、日銀の金融政策を甘いと考えるエコノミストは、通貨供給量の不足が円高に結びついていると批判する。

メデイアも日銀を悪者に仕立て上げ、政権との攻防を煽る。

「日銀は死んだ」と考えられる理由に、日銀は政権の強い要求に屈して1%目途→2%目標に舵切りを余儀なくしたと言う説と、日銀法改正を武器に独立性を危うくしかねない政権の攻勢に「組織防衛」の為に屈したと言う説が考えられる。

でも、今回の2%目標設定で日銀は政権に屈したのか。そうではないと考える。

白川総裁は報告書でも「インフレーション・ターゲッチング」とは、最近では「フレキシブル・インフレーション・ターゲッチング」と言い、目途と目標を区別する意味はなくなっていると説いているではないか。

だとすると、目途を目標に変えたってどうってことはない。政権が目標設定に拘ることも理解できない。

ただ、途中経過として1%の目途を目指すか、途中経過は止めていきなり2%目標を目指すかの違いはあるだろう。

今回の日銀の決定会合で2委員が、2%目標に反対していた。メデイアの報道で、その理由は達成できない目標を掲げることは、日銀の信頼を失うことになるからと言うことだった。

真っ当な意見だ。私もまず1%をめざし、財政政策、成長戦略などの効果が出てきた時点で2%を目指すかどうかを考えるべきだと思う。

目標に向かっての検証を経済財政諮問会議ですると言うのだが、毎回屁理屈と思われる理由をタラタラ述べるのも考えものだ。

安倍総理は、国民に約束したのだから早いうちの成果を狙っているのだろうが、給料も上がったということを肌で感じるには時間がかかる。急ぐあまり悪いインフレを招きかねない。

2委員の反対が正当ではないか。メデイアの報道ではこの委員は緩和論者で民主党政権時に委員に加わった民間人だという。

2%目標明記でも、達成期日は「早いうち」で特に指定はない。向きになって日銀は屈したと判断する必要もないのではないか。日銀の言いたいこともしっかり記されているではないか。

2014年からの無制限買い入れでは、月に13兆円の買い入れになるが10兆円しか増えないという解説に疑問があったが、国債に満期があるので市場に出回るお金は減ると言うことらしい。納得だ。でも、市場はこれで失望したのだろう。

そして内容的にも民主党・野田政権時の合意文書とも大きな違いはない。

ところが、組織防衛のためにやったというのであれば論外だ。国民の生活より日銀という組織を政権から守ル為の譲歩だとすると、そんな日銀は解体すべきだ。

白川総裁は絶対に言わないだろうが、この見方は多い。日銀OBの見方としてメデイアに記載されているが、これこそ日銀の信頼を失する発言ではないか。

日銀自身の意識改革が必要だ。象牙の塔を脱して雇用にも責任を持つ中央銀行であってほしい。

2013年1月23日水曜日

デフレ脱却を「賃上げ」からも出来ないか


安倍総理の「アベノミクス」では、デフレ脱却は難しそうだ。まず「賃上げ」からも始められないか。22日の2%物価目標、資産買い入れ無制限枠を謳った政府、日銀の共同声明も市場はすでに織り込み済みで大きな反応はなかった。そりゃそうだろう。昨年10月の民主党・野田政権と民主党との合意文書の内容と大きな違いはないのだ。

安倍総理は、自分の考えが押し通せた為に、画期的内容だと自己評価したが、「1%を目途」が「2%目標」に変わった程度だ。フレキシブル・インフレーション・ターゲッチングとは目途とか目標に分ける意味はないので、目途も目標も同じことなのだ。

次の三本目の矢である「民間の投資を喚起する成長戦略」も、各政権がそれぞれ挑戦したが成果の話となると、民主党政権で成果があったのは30%程度という。

事業を上げていくのは官僚だ。目新しい事業が残っているとは限らない。しかも自分のカネで事業を展開する民が、いま積極的に投資しようとする意欲のある事業は見つからないとも言う。

他人のカネ(税金)で、事業を展開する官に任せておくと利権がらみの無駄な投資になりがちだ。

しかも、デフレ脱却→円安、株高→投資、企業収益増→雇用創出、給料アップのシナリオを描くには時間がかかる。

むしろインフレは進んでも、給料は上がらないと言う最悪のケースも考えられる。日銀は2%物価目標を達成するまでには時間もかかる。その過程で予期せぬリスクも検証しながら持続可能な成長を確立していくという。

デフレが日本だけ15年もの長期に続いているのは、世界的に珍しい。

いろんな要因があるのだろうが、発展途上国との競争での人件費コストダウン、国民のデフレ期待、異常な円高で安物の輸入などが上げられるだろう。

特にデフレ期待は大きいが、最近デパートでは高級品も売れ出したという。それでも安売り競争は続く。

そんな経済状況なのだが、「デフレ脱却」には、春闘を前に「賃上げ」から始めたらどうか。

平素は「会社の業績は好調」などと経営がしっかりしていることを強調する経営者も春闘やボーナス時期になると、「先行き不透明」を主張しベース・アップ、ボーナス闘争に釘を刺す。

固定費に占める人件費の割合は大きく、従業員を犠牲にして企業は収益を上げている。内部留保も260兆円に達するという。

経済界も経済再生に向け「おねだり」ばかりするのではなく、少しは「賃上げ」でデフレに風穴を明けたらどうか。

日銀は2%物価目標に向け新たな金融政策で挑戦しようとしている。政府も第三の矢・成長戦略を検討しているが、成果となるとはなはだ疑問だ。

では、民間は何が出来るのか。

2%目標へ共同声明:画期的というが、その実効性?

自分の考えが取り入れられ画期的と
評価する安倍総理
2013.1.22 NHKニュースウォッチ9

2%物価目標、無制限緩和の政府・日銀共同声明は、安倍総理が画期的文書と評価するも、その実効性には疑問が残る。一見、日銀が政府に折れた感がしたが、成長力強化への取り組み、政府、民間、日銀がそれぞれの立場で努力する重要性を白川総裁は主張するなど双方の主張が再確認されることになった。

1月22日の日銀「「物価安定の目標」と「期限を定めない資産買い入れ方式」の導入について」を読んでみた。

従来の1%目途を2%目標に、金融政策の効果波及には時間がかかるので、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、問題を生じていないかどうかを確認していくと言う。

日銀が発表した共同声明
2013.1.22
一気に2%の目標を目指すには行き過ぎたインフレをもたらす危険もある。そうならないように常に点検しながら持続的成長を確保すると言うことなのだろう。

この2%目標の導入の採決では賛成7,反対2で物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とすることに2委員が反対している。

さらに、新たな緩和手法として2014年から「無期限緩和」のオープン・エンド方式(麻生財務相)を導入することになった。実質的なゼロ金利と資産買い入れ措置を必要と判断される時点まで継続するという。

これについては全員一致で賛成したようだ。

そして今回の共同声明となった。

日本経済がデフレから早期に脱却し、物価安定の元で持続的成長経路に復帰するために、成長力強化への努力と金融面からの後押しが必要であると、強力な金融緩和を日銀は進めていくと従来の日銀の考えを主張する。

政府、民間、日銀がそれぞれの立場で
努力が必要と訴える白川総裁
2013.1.22 NHKニュースヲッチ9
一方で、大胆な規制・制度改革など政府の取り組みもしっかり実行されることを期待すると、政府への注文を忘れなかった。

しかし、この目標も実効性では疑問符がつく。
参考に提示された政策委員の見通し分布チャートで消費者物価指数を見ると2014年では0.9%を予測している。消費税率引き上げの直接的影響は除いたという。

これから見ても2%の目標は高いことになる。2%を目標に取り敢えずは1%を目指す考え方の方が目標達成に向かっての説明責任もとりやすい。さらに、その過程でリスク要因を検証し軌道修正することもやりやすいのではないか。

安倍総理は、政権公約、参院選を控えて効果を焦っているのではなかろうか。

政策委員の見通しチャート
消費者物価指数
2014年で0.9%
そして、財務相を経験していなかったことが、この大胆な(?)要求になったのではないか。麻生財務相や民主党政権時代の安住財務相は、財務省の意向に沿った発言をしているように思える。

安倍総理と麻生財務相との間がうまくいくのか。政権の運命がかかっている。

この2%目標設定で、今一番危惧されているのが、給料アップを伴わない物価上昇は、国民生活に悪影響をもたらすことは自明の理だ。

そうならないようにリスクの検証するようだが、具体的に「どういう現象が現れるとどんな処置をするのか」その手法が決まっているのか。

今回の共同声明まで、日銀法の改正まで持ち出しての安倍総理のかなりのごり押しがあったのは確かだ。

今後は、規制制度改革、税制の総動員での経済構造の変革、財政構造の改革で政府の役割が重要になってくる。

経済財政諮問会議で定期的に検証されることになるが,
政府、日銀ともに他人任せは許されない。きちんと国民に説明責任を果たせるように安倍総理のリーダーシップが期待できるのか。国民は見ているのだ。

2013年1月22日火曜日

2%目標明記、無制限枠:日銀は安倍政権に折れたのか

速報を流す読売オンライン
2013.1.22

日銀は安倍政権に折れたのか。2日目の日銀の決定会合の結果に注目していた。午前、為替は89円41~42銭、株の午前の終値は42円安の10705円で市場は様子見だった。13時頃テレビで「日銀「2%目標明記」、「無制限枠」決定」のテロップが流れた。

ネットで詳しく見ようと思ったが、讀賣新聞電子版で「速報 日銀が金融政策決定会合 「物価目標2%」を決定」のタイトルだけが流れていた。

日銀が安倍政権の強い要求に折れたのだろうか。

今まで15年間、日銀の政策ではデフレを脱却することは出来なかった。識者は「この辺で思い切った政策転換を」という発言は大きかった。

そして何よりも、選挙戦での自民党・安倍総裁の口先政策だけで市場は大きく動き、円安、株高基調に変わった。そして「経済を取り戻す」と強く訴えた自民党が政権の座に返り咲いた結果、日銀はこれを民意と感じ取ったのだろうか。

それとも、政権に「非現実的政策」と反論していると総裁人事、副総裁人事を控えて日銀という組織が持たないと考えての組織防衛で政権に屈したのか。

日銀にしても、安倍政権にしても国民経済を守る自信があっての決定なのか。

共同声明での会見に注目したい。

[後記]
市場は織り込み済み(?)で、乱高下しながら円高、株安になった。
ドルは39銭高の89.20円、株価は37円安の10709.93円。

2%目標にどうやって行くかが不明で、波及効果には時間がかかること。無制限枠も2014年以降ということで期待を裏切ったことになるか。

今後は、安倍政権の規制緩和、財政規律、成長戦略が重要になってくる。安倍総理の力量が問われるが、難しいのではないか。

                (2013.1.22 16時)


第三の矢・成長戦略で民が動くか


「アベノミクス」の最後の三本目の矢・成長戦略で民が動くか。まだ内容がはっきりしていないが、各政権で何回も検討され官僚が作成する政策(事業)だ。安倍政権になったからと言って新しいモノが出てくる可能性は低い。

自分のカネで事業を展開する民は手を出さず、他人のカネ(税金)で事業をする官しかないような戦略は好ましくない。

第一の矢・大胆な金融政策は、脱デフレに向け、日銀と政府は共同声明で共同歩調をとることを強調する。安倍総理の強い要請もあり2%物価上昇率目標を明記する予想記事が流れている。

第二の矢・機能的な財政政策では、10兆円を超える緊急経済対策を発表した。公共事業重視のバラマキ予算との批判もあるが、財界は一様に評価する。2013年度予算も92~93兆円を予定しているようだ。

財政審議会は、機動的な財政運営を行いつつも、財政再建への道筋も明確にすべきだと忠告する。

そして今度は民間が動かなければいけない、第三の矢・成長戦略だ。安倍政権としての成長戦略の内容がはっきりしたわけではないが、民主党時代から各政権が成長戦略を検討しているが、効果が出ないうちに内閣が変わったり、政権が変わることを繰り返している。

これからの成長分野と言えば、環境、エネルギー、医療・介護などが上げられるが、規制緩和も絡み簡単にいくモノではない。

中央官僚が作成する政策は出尽くしているはずだ。同じ内容の事業が名称を変えたり、悪く考えると流用した内容になっているはずだ。

日銀は、低利の資金を提供できれば、企業は投資しやすくなるだろうと低金利維持を貫いている一方で、財界では今投資しようとする事業が見当たらないというのだ。

自分のカネを使って事業を展開する民が動かず、他人のカネ(税金)を使って事業をする官が動くのでは「民間の投資を喚起する」第三の矢とは言えない。

官民ファンド設立の動きもあるが、税金の無駄遣いに終わるのではないか。

民間の投資を喚起する成長戦略こそ安倍政権の力量が問われる。

マクロ経済を扱う経済財政諮問会議の下に ミクロ経済を扱う産業競争力会議が作られたと思うが、安倍政権がどう舵取りをするか注目したい。

2013年1月21日月曜日

当面の為替水準、1ドル100円:通貨流通量の是非の議論を

1ドル100円が当面の円安の下限になりそうだが、通貨供給量(流通量)の是非から、きちっと議論すべきではないか。15年もデフレから脱却でず、日本経済再生のため円高是正が喫緊の課題と安倍政権は従来と異なる次元の金融緩和を含む「アベノミクス」を発表した。

民主党・野田政権での日銀との合意文書取り交わしでも反応が鈍かった市場だが、安倍総理の口先だけの政策に市場は反応し円安に動き出した。78円台だった為替も見る見る90円台へと下落した。あまりに早い円安は日本経済に支障を来たすとの閣僚発言で一時円高に動くが、円安基調は変わらない。

海外からは通貨安競争と批判されるが、今までの円高が異常だったことを考えると円安への動きは日本経済にとってはプラスだ。

ところで、この円高の要因が何だったのか。

米国の経済状況、ドル安政策、ギリシャをはじめとする欧州の政府債務危機など外的要因もあるが、わが国だって政府債務は1000兆円を越し先進国一悪い状況にある。

それでも円が買われたのだから、海外は相当悪いと市場は見ているのだろう。

それでも要因というと、通貨供給量の差が上げられる。市場に流れる円を増やせば円安になるというのだ。今は少ないから円高になっているという。

政府、市場の一層の金融緩和の要求に日銀はしぶしぶ資産買い入れ枠を増やし対応している。

この通貨供給量については、先の国会でも白川総裁が参考人に呼ばれ質疑が繰り広げられたが、考え方の主張ばかりで平行線のままに終わっている。

通貨供給量の不足を主張する学識者、エコノミストは多い。

内閣府参与になってインフレターゲット論を主張する浜田エール大名誉教授もリーマンショック後、欧米では通貨供給量を3倍に増やしたが、日銀は1.5倍しか増やしていないと言う。

この考え方は多い。先に衆院選での野田総理の五反田駅前の街頭演説(実際は松原・衆院議員の街頭演説)で松原議員も同じ事を聴衆に訴えていた。通貨供給量を増やさなければ円高は改善しないと。

先の国会審議でも通貨供給量が少ないのではないかと参考人の日銀・白川総裁が責められていた。

これに対して、白川総裁はマネタリーベースで対GDP比での比較では先進国一高い比率で決して通貨供給量が少ないわけではないと反論した。

白川総裁の記者会見でも、マネタリーベースで資金供給額を比較、資産買い入れ基金と貸し出し支払残高は120兆円で、名目GDP比27%(米国は約19%)で、今後50兆円を加えるとGDP比40%になり供給量は十分であると言う。日銀には珍しくフリップ・ボードを用意しての記者会見だった。

それぞれが自分に都合の良いデータを使って発言しているのだとしたら問題だ。もし、この供給量の差が問題であるのなら、もっとしっかり国会で議論すべきではないのか。

通貨供給量をどの程度まですれば良いのか。資産買い入れの無制限枠となると行過ぎたインフレの危険もあるだろう。

肝心な点を十分に議論せずに「大胆な金融緩和」云々は、日本経済、国民経済にとっては迷惑な話だ。

28日に国会が召集されるが、早急に審議に入り、国民に真偽を明らかにすべきではないのか。










2013年1月20日日曜日

経団連は積極的な賃上げでデフレ脱却に向かえ

何時までも「おねだり」
ばかりではデフレ脱却
は無理。賃上げに活路を
経団連

経団連は、積極的な賃上げでデフレ脱却に向かえ。又、春闘の季節がやってくる。人件費を抑えようとする経営者のお決まりのフレーズは「先行き不透明」だ。普段は社員に向かって「皆さんが、がんばってくれるから会社の景気は良い」と言ったり、メデイアの質問に「会社の業績は上がっている」と経営力をアピールする経営者も春闘では「先行き不透明感が拭えない」と定昇、ボーナス交渉に釘を刺す。

もうかなり前だが、3万円のベースアップもあったことがある。ベースアップなど「とんでもない」と言い出してから相当の年月が経つ。労働者側も「仕方ない」の傾向が続いた。

でも今年はチョッと様子が違ってきているのではないか。

11日の緊急経済対策発表での記者会見で、安倍総理は「企業がお金を借りて投資して売り上げを伸ばす。これによって雇用や賃金を増やす好循環を生み出していかなければならない」と賃金にも言及した(讀賣新聞2013.1.12)。

「アベノミクス」による経済再生のシナリオを描く安倍政権は、雇用増、賃金増を目指し、企業が従業員の賃金や雇用を拡大したときは法人税で考慮する税制改革をやると甘利経財担当相がテレビ出演で言及した。

それを受けてか、経団連も定昇へ見直しをしなければならなくなった(讀賣新聞2013.1.20)。

今回の緊急経済対策を経済活性化に向けた取り組みが盛り込まれたと経済界は歓迎するも、景気浮揚のための、更なる需要喚起策を要求するなど要求ばかりで、「経済界は何をするのか」一向に見えてこなかった。

リストラ、人件費抑制に汲汲とする経営者も意識改革が必要になる。

クルーグマン教授も「今の企業利益は、労働者を排除してのものだ」という。

連合も今春闘で「給与総額の1%を引き上」を要求するという。

政財労がデフレ下での不況に風穴を明けるための一策は、賃上げから始めることなのか。「先行き不透明」は誰だって言えることだ。そんな経営者に使われている社員こそ哀れだ。

政党の野合・合流、連立:政治の混乱と不信を助長するだけか


政党の生き残り、隠れ蓑、数あわせの野合・合流、連立は、政治に混乱と不信を助長するだけで失望だけが残る。それでもやらなければならない大義は何なのか。第三極として期待された「日本維新の会」で続く内部抗争、分党で後味の悪い結果になった「日本未来の党」、「生活の党」、衆院選で大惨敗の結果を受け再生の難しい民主党の姿を見ると、そう感じざるを得ない。

遠くは、日本新党、新党さきがけなどが連立で樹立した細川政権を思い出す。熊本県知事を辞めた細川さんが日本新党を作ったのを機に新党が乱立した。保守の細川さんは、選挙で惨敗した自民党と手を結ぼうとしたが、小沢さんから「総理はどうか」と持ちかけられ新党の連立政権になった。

当時、細川さんが何を目論んで自民党と組もうとしたのか定かでないが、数で政権を取ろうとする小沢さんと組んでしまった。

結果は、唐突な環境福祉税構想の発表で政権内がギクシャクし、自らの「政治とカネ」の問題で政権は7ヶ月で消えていった。

今回の衆院選で第三極を目指すはずだった「日本維新の会」も期待外れに終わり、その原因が石原さん率いる「旧太陽の党」との合流にあったとして、今主導権争いが勃発しているように見える。

期待の大きい橋下さんは、取り繕いに必死らしいが、メデイアの作り上げた石原ブランドに頼った失敗は大きい。古い体質の自民党と戦うはずの橋下さんが古い自民党体質の「旧太陽の党」と合流したのだから整合性を疑う。

「大阪維新の会」と「旧太陽の党」との確執は解消できないのではないか。

小沢さん率いる「国民の生活が第一」がダーテイーさを隠すためにクリーンな嘉田「日本未来の党」を隠れ蓑にしたが、民主党分党時のゴタゴタ、立候補者届け時のゴタゴタで信頼を失ってしまったのだろう。

保守から革新のごちゃ混ぜ民主党も内部抗争、離党騒ぎ、反執行部発言の垂れ流しで衆院選は大惨敗で、再生の可能性すら危惧されている。旧社会党系が主導権を握るか、保守系グループがどう出るかが党の運命に関わってくる。

では既成政党はどうか。

社民党、共産党は伸びない。社民党は選挙を経る度に消滅の道を歩んでいる。

最後までアジェンダを守った「みんなの党」も、第三極の核として期待されている。政策第一を貫いた姿勢は信頼できる。

しかし、連立を組んだ場合にどうなるか。政策、党運営に微妙な違いもありそうなので、党内主導権争いも出てくるのではないか。

どっちみち「頼れるのは自民党だ」という考えの傾向は、先のメデイアの世論調査での「投票するとしたらどの政党か」の質問に、自民党が37%の圧倒的多数だったことからもうかがえる。

民主党に至っては消費税増税の8%にも届かなかったのではないか。

しばらくは、自民党+公明党の連立政権に頼るしかないが、ねじれ国会対策で他党と連立を組むにしても政権公約に影響が出るような連立では、国民は離れていくだろう。

若者の政治離れをインターネット選挙導入で回避しようとしているようだが、そんな事で投票率が上がることなど考えにくい。

地に足の付いた政党が望まれるのではないか。

2013年1月19日土曜日

政府・日銀合意文書:2%目標明記で経済は動くのか

日銀と政府の合意文書の
内容骨格を報じる
読売新聞 2013.1.19

安倍政権と日銀のデフレ脱却に向けた合意文書の骨格が分かってきた。昨年10月の日銀と野田政権で取り交わされた合意文書とは、2%の物価目標明記が違うだけだ。これで市場は好感を抱き、円安、株高に続いて企業収益改善、賃金上昇、雇用拡大のデフレ脱却シナリオが進むのか。

衆院選以来、安倍総理の口先政策だけで円安、株高基調が続くが、行き過ぎた円安、海外からの「通貨安競争」の批判が出てきた。

次は国内企業の収益改善、設備投資、消費が上向くかどうかだ。
ところで、今回の自民党政権との合意文書と昨年10月に取り交わした民主党政権との「デフレ脱却に向けた取り組みについて」とどう違うのか。

大きな違いは、昨年、日銀は「引き続き1%を目指して、強力に金融緩和を推進していく」としていたのが、今回の合意文書では、安倍総理の強い要望もあり2%目標を明記するらしい。

でも、日銀も「中長期的な物価安定の目途」としては2%に言及している。

昨年10月30日の野田政権と
日銀との合意文書
日銀白川総裁に言わせれば、「インフレーション・ターゲッティング」とは「フレキシブル・インフレーション・ターゲッテイング」と同義で目途と目標を分ける意味はなくなっているというのだ。

ならば、日銀は目途の拘らず、目標にすれば良いのではないか。政権だって何故か目標に拘っているのではないか。

達成時期だって、明記されず「中期的」という。長期が抜けた分、早く結果を出そうとしているのか。

政府の役目も官僚が作成するのだから政策名称の違いはあっても、内容に違いはなのではないか。白川総裁は規制改革、構造改革の必要性を説くが政府の動きは鈍い。

官僚の抵抗に遭っているのではないか。これこそ安倍総理のリーダー・シップだ。

説明責任も要求されている。

昨年の合意文書では、「デフレ脱却など経済状況検討会議」において定期的に点検するとなっていたが、今回は復活した経済財政諮問会議で検証するらしい。

こう考えて来ると、野田政権での合意文書と大きくは変わらない。

それでも安倍総理に大きな期待がかかっているのは、「やる気」と強い政権のイメージがあるからではないか。

市場はすでに織り込み済みで動いているので、共同声明が発表されても大きな動きはないのではないか。

今後の国会審議に注目したい。

2013年1月18日金曜日

日銀新総裁人事:物価の番人として良識ある賢人はいないのか


真価が問われる日銀
日銀新総裁人事が話題になってきたが、物価の番人として良識のある賢人が出てこないのか。デフレ脱却に向け従来とは次元を異にする金融政策を含めた「アベノミクス」遂行に欠かせないのが新・日銀総裁の人選になり政府が誰を選ぶのかが注目され、現実には安倍総理の2%物価上昇目標と考えを同じくする人物、財務省OB,日銀出身、あるいはインフレターゲット論の学者の名前が挙がっている。
                 
要するに安倍総理と考えを同じくする人物が使いやすいのだろう。安倍さんが集めた内閣府参与もインフレターゲット論者だ。

今、安倍政権に群れている人達は、自ら主張するインフレターゲット論を政策に実施したい学者、エコノミスト、あるいは総裁になりたいためにインフレターゲット論をぶっている人たちではないか。

しかし日銀総裁には、独立した物価の番人という重要な仕事がある。政府に対しても金融政策上強く発言できる良識ある賢人が必要なのだ。

メデイアの報道によると、先の経済財政諮問会議でも、白川総裁が「金融面での後押しと政府の成長力強化の取り組みが必要」と主張したのに対して、安倍総理は「日銀も責任を持ってやってほしい」と要求するばかりの安倍総理だ。

安倍総理は、2%の目標設定を要求するが、白川総裁に言わせると「インフレーション・ターゲットとは今ではフレキシブル・インフレーション・ターゲットともいわれ、目処も目標も区別する意味はないといわれている」そうだ。

だったら、日銀は2%の物価上昇に向け、とりあえず1%を目指すと言っているのだから取り立てて2%設定を要求する必要もないのではないか。

そして次の決定会合では合意文書を作るというが、日銀と政府は共同して当たることは法律にも書いてあるし、先の野田政権時でも合意文書を取り交わしている。

それらの内容と次回の合意文書では意味が違っているのか。

安倍総理は、むきになって取り組んでいる姿勢を見せているのではないか。

脱デフレを謳って選挙によって選ばれた安倍政権は、どうしても景気刺激の経済対策を取りやすく財政赤字が続くし、市場やマスコミからは一層の金融緩和が要求される。

今、インフレ2%目標設定、財政出動すれば赤字財政の拡大、過度のインフレの危険がある。国債の信任も下落するだろう。その時は緊縮政策、インフレに対する適正な金融政策が必要になってくる。

日銀の真価が問われるのだ。

日銀総裁は国会の承認人事ということは、国民が選んだ日銀総裁ということになる。

物価の番人として、良識のある賢人を選んでほしい。

2013年1月17日木曜日

大飯原発・活断層調査:航空レーザー測量で最終判断を

大飯原発・活断層調査に「航空レーザー測量」を採用できないか。大飯原発の下を走る活断層調査が行き詰まっている。数次の現地トレンチ調査でも「活断層か、地滑りか」判断がつかなかったようだ。

地質学的にもどう決着がつくのか注目していたが、今唯一稼働中の原発を止めることになるかもしれない活断層調査は、社会的影響も大きく、なかなか最終判断を下すのも決断が要る。

素人考えでは、地滑りだとその幅は数百mだろうが、活断層なら数kmだろう。原発施設からかなり離れたか所での新たなトレンチ調査も考えられるが、どこを調査すればいいのか判断に苦しむだろう。

そこで、以前から話題にはなっていた「航空レーザー測量をやってみたらどうか。

朝日新聞(2013.1.17)で「活断層 レーザーで見抜く」の記事に目がとまった。

それによると、建物や樹木などが密集する地面の地形を上空からレーザーをあてて透視することにより活断層が見分けられるというのだ。

15年前から開発され、今は精度も上がっているようだ。

昨年11月の日本活断層学会で名大の鈴木教授が、阪神大震災で大きな被害の出た市街地でも活断層の分布がはっきり確認できたという(同上)。

現地トレンチ調査と、こういう最先端の科学調査で大飯原発の活断層問題に終止符を打ったらどうか。

日本はどこへ行っても活断層だらけだ。日本海側も巨大地震の可能性はある。その時期が40年ほどの耐用年数までには発生しないだろうと思うが、わからない。

万一発生し、原発の重要施設が破壊されれば、福島第一原発の二の舞だ。放射能汚染が広がり琵琶湖の水が汚染されれば、それこそ嘉田知事が危惧する京阪神の飲料水危機だ。

費用がどれぐらいかかるかわからないが、最先端技術で最後の詰めをやるべきではないか。







突き進む安倍総理の「アベノミクス」:P→D→C→Aで目標管理を


市場に期待を抱かせている安倍総理は、2%物価上昇率目標に向け「アベノミクス」を突き進めているが、P→D→C→Aによる厳重な目標管理が必要だ。従来にない次元の違う金融政策でのデフレ脱却、機能的は財政政策で緊急経済対策、民間投資を引き出す成長戦略の「三本の矢」は1本欠ける経済再生は覚束ない。

この「アベノミクス」に関しては、専門家でも賛否両論ある。

早く国会を開いて審議し、国民に説明すべきだ。デフレ脱却に向けて2%の目標の意味、その可能性、そして目標達成に向けどのような管理をしていくのか。失敗すればどういう事態が考えられるか。

先に、安倍総理の「アベノミクス」を評価したというクルーグマン教授は、安倍総理の事を「経済政策に関心が乏しく、深く考えた訳ではなかろうが、そんな事は問題ではない。結果も完全に正しい」と皮肉交じりの評価なのだ。

だから、安倍総理がどういう理論で2%目標を掲げてデフレ脱却を進めようとしているかだ。

経済財政諮問会議や内閣府参与の考えを履行では心許ない。

また、2%目標に向け、政策をどう管理しようとしているのか。ここで品質管理で使う手法であるP→D→C→Aが役立つ。

特に大事なのが、C(CHECK)だ。どういう指標で、どういう限界値(管理値)で監視するか。目的に向け外れていれば軌道修正が重要になる。そしてさらに実行をすることだ。

このCHECKは、役人文化ではあり得ないことだ。役人は一度決まった事業は、どんなことがあっても推進し続ける。軌道修正などは先人の仕事を否定することになり、その役人は将来がない。

そんな役人文化で2%物価上昇を掲げてデフレ脱却をやられては迷惑だ。

デフレ脱却に政治生命(?)をかけるのであれば、自らP→D→C→Aを頭に置いて目標管理を怠らないことだ。

各種会議の委員、内閣府参与は失敗しても屁理屈を言うだけで責任は取れない。責任はすべて安倍総理にあるのだ。

2013年1月16日水曜日

新聞に軽減税率適用:増税を煽りながら身勝手すぎないか

読売新聞 2013.1.16

甘ったれるな!新聞業界、増税を煽りながら軽減税率要求とは虫が良すぎないか。財政再建、社会保障の一体改革では増税は避けられないと政府の増税戦略を後押ししていたのではないか。ここへ来て、増税は勘弁では主張に整合性が見えない。8%増税は受け入れるべきだ。

確かに、増税推奨の記事を垂れ流したのは財務省の強要もあったかもしれないが、増税一辺倒の記事掲載は公器としての新聞を疑う。

新聞協会の声明要旨を見た。

国民が正しい判断を下すには、様々な分野の情報を手軽に入手できる環境が重要で、「知識に課税せず」「新聞には最低税率を適用すべし」という認識は欧米では共通しているという。

でも今回の消費税増税では、増税一辺倒の主張で決して国民に正しい判断を下せる情報を提供しているとは言えなかった。

又、最近の活字離れによる読み書き能力の低下は、指摘されている通りだ。しかし、新聞離れのためとは決して言えない。著名作家の小説などが国語の教材から離れていたことが大きいのではないか。

より少ない負担で、新聞を容易に購読できる環境を維持する事は、民主主義と文化の健全な発展に不可欠だという主張も理解できるが、だから新聞に軽減税率の適用を求めるのは納得出来ない。

公器としての新聞の価値は、増税に関して言うなら賛否両論を掲載すべきではなかったか。

あれだけ増税賛成論をぶったのだから、8%の課税は受け入れるべきだ。

2013年1月15日火曜日

あのクルーグマン教授が安倍総理の「アベノミクス」を評価するも、懸念も


あのノーベル経済学賞受賞のクルーグマン教授が安倍総理の「アベノミクス」を評価しているというニューヨークタイムズの紹介記事を見た。安倍総理はお墨付きを得たように見えるが、一方でその円高、株安の持続性、財政持続可能性には深い洞察を欠いたままの政策に懸念もにじませる(毎日新聞2013.1.14)。

安倍総理は、金融政策、財政政策、成長戦略の「3本の矢」で経済再生を目指すと言うが、特に金融政策では大胆な金融政策が必要で、今までは主張したが取り上げられなかったと言う。

クルーグマン教授も、この不況脱出には大胆な財政、金融政策が必要だと主張してきたが、安倍総理が20兆円規模の緊急経済対策や日銀に対する強硬な金融緩和の要求など先進国では出来なかったことをやろうとすることを評価している(同上)。

しかし、一方で安倍総理はナショナリストで経済政策には関心が乏しく、正統派の理論を無視しているのだろうと政策運営に懸念もにじませるが、「そんな事は問題ではなく、その結果も完全に正しい。長期金利は急騰せず、円が急落するのは日本にとっては非常に良いことだ」と評価した(夕刊フジ2013.1.15)。

兎に角、皮肉交じりの評価だ。

クルーグマン教授と言えば、今の経済で緊縮財政はもってのほかで財政出動で景気を刺激すべきだという。

日銀がなかなかインフレターゲットを設定しないことにも失望し、もう日銀へは期待できないとも言い切っていた。

クルーグマン教授は、財政破綻の危機を強調し堅物過ぎる理論にとらわれた中央銀行、政府に失望していたのだ。

でも、クルーグマン教授もノーベル経済学賞を受賞したので信頼されているのかと思っていたが、そうでもなさそうなのだ。

1997年にアジア経済が深刻な通貨危機に苦しんでいたときに、「通貨管理」で素早い対応をしなければ、本物の恐慌のシナリオが実現するのを目の当たりにすることになるだろう」と恐慌を避けるために「通貨管理」の必要性を説いたが、アジア各国は通貨管理をしなかった。そしてアジアは2年もしないうちに景気がもどったというのだ(専門家の予測はサルにも劣る・・ダン・ガードナー 飛鳥新社)。

この本の本音は、「他の人よりも正確に将来を予測した専門家は、自分が正しいことに自信が持てない人達なのだ」というのだ。

クルーグマン教授は自信たっぷりに財政出動、金融緩和の必要性を説き、「アベノミクス」を皮肉交じりに評価するが大丈夫なのか。

大胆な金融緩和、財政出動への抵抗勢力を堅物過ぎる理論にとらわれていると批判するが、責任を持たない学者と国民の生活に責任を持たなければならない政権、官僚の立場の違いではなかろうか。

安倍総理は、大胆にも先進国でやれなかった経済対策をやろうとしているのだが、大胆な金融政策偏重の政策には疑問が残る。

日銀白川総裁の考えにもっと耳を貸すべきだ。

新幹線「7分清掃」:品質管理の基本を学ぶ


新幹線の「7分清掃」が脚光を浴びているらしい。短時間に作業を簡潔することは、品質管理の基本(手本)だ。同じ理由でラブホテルが品質管理に役立つと言われたことがある。もう40年も前の話だ。

私も新幹線通勤していたので清掃員の姿、仕事を見ていたことがある。

列車が到着する前に、乗降口付近に7人ぐらいの作業員が清掃道具を持って並んでいる。降車が終わると車両に乗り込み、ドアーには「清掃中」の看板が吊される。車内ではシートを回転させながらカバーをはがし、窓や床に残されたカンやゴミを回収し、床を拭く。カーテンも元の位置に結ぶ。これを1~2人でやるのだから手際は良い。

ずっと以前に比べると、清掃の質は上がっている。今ではお客が手に持ったゴミを降車時に受け取ることもしている。

「何で今、新幹線の清掃か」と思ったら、米CNNで「7分間の奇跡」で世界に紹介されたらしい。日本では当然と思うサービスに世界は驚いているというのだ。(讀賣新聞2013.1.15)。

これと関連して、ラブホテルの清掃が話題になったことがある(利用したことはないが)。
品質管理の良い手本だというのだ。

ラブホテルでお客さんが退室した後、「一番最初にする仕事は何か」。クイズのようだが、正解は「部屋と浴室の換気」だそうだ。熱気、湯気の換気に一番時間をかけるらしい。

そしてシーツ替えだ。ベッドとの間にモノが挟まっていないかどうか、ベッドの下に何か落ちていないかも確認するらしい。

そして、バスルーム、洗面所の清掃だ。湯気でガラスや壁が曇っているのを払う。

最後に窓を閉め、最終確認して清掃は終了し、次のお客さんを待つのだそうだ。1人作業だが何分で終わるかは忘れた。お客の回転をよくするためには清掃時間も重要なのだ。

群馬県安中市にあるラブホテル(今は名前が変わっている)には、近県のラブホテル経営者が見学に来るほどだったという。
「ラブホテルの清掃が品質管理の手本になる」と当時の経済書が記事にしていた。

清掃という仕事は蔑まされていたが、今は重要な経営の基本なのだ。

清掃と言う仕事を社員にやらせて経営改善した話も聞くし、今デパートで一番きれいなところはトイレだ。矢祭町では経費削減のために役場の職員がトイレ掃除をするようになり職員の意識改善に役だったという。そして東京駅近くの高層ビルでは周辺の街並みが見渡せる場所にトイレを作った。

「清掃は下請け作業」のセンスは、昔のことだ。今は、改善提案で「サービスの向上」にも役立ち、それがビジネスにも繫がるというのだ。

これは、日本人が最も得意とする分野の一つではないか。