あのノーベル経済学賞受賞のクルーグマン教授が安倍総理の「アベノミクス」を評価しているというニューヨークタイムズの紹介記事を見た。安倍総理はお墨付きを得たように見えるが、一方でその円高、株安の持続性、財政持続可能性には深い洞察を欠いたままの政策に懸念もにじませる(毎日新聞2013.1.14)。
安倍総理は、金融政策、財政政策、成長戦略の「3本の矢」で経済再生を目指すと言うが、特に金融政策では大胆な金融政策が必要で、今までは主張したが取り上げられなかったと言う。
クルーグマン教授も、この不況脱出には大胆な財政、金融政策が必要だと主張してきたが、安倍総理が20兆円規模の緊急経済対策や日銀に対する強硬な金融緩和の要求など先進国では出来なかったことをやろうとすることを評価している(同上)。
しかし、一方で安倍総理はナショナリストで経済政策には関心が乏しく、正統派の理論を無視しているのだろうと政策運営に懸念もにじませるが、「そんな事は問題ではなく、その結果も完全に正しい。長期金利は急騰せず、円が急落するのは日本にとっては非常に良いことだ」と評価した(夕刊フジ2013.1.15)。
兎に角、皮肉交じりの評価だ。
クルーグマン教授と言えば、今の経済で緊縮財政はもってのほかで財政出動で景気を刺激すべきだという。
日銀がなかなかインフレターゲットを設定しないことにも失望し、もう日銀へは期待できないとも言い切っていた。
クルーグマン教授は、財政破綻の危機を強調し堅物過ぎる理論にとらわれた中央銀行、政府に失望していたのだ。
でも、クルーグマン教授もノーベル経済学賞を受賞したので信頼されているのかと思っていたが、そうでもなさそうなのだ。
1997年にアジア経済が深刻な通貨危機に苦しんでいたときに、「通貨管理」で素早い対応をしなければ、本物の恐慌のシナリオが実現するのを目の当たりにすることになるだろう」と恐慌を避けるために「通貨管理」の必要性を説いたが、アジア各国は通貨管理をしなかった。そしてアジアは2年もしないうちに景気がもどったというのだ(専門家の予測はサルにも劣る・・ダン・ガードナー 飛鳥新社)。
この本の本音は、「他の人よりも正確に将来を予測した専門家は、自分が正しいことに自信が持てない人達なのだ」というのだ。
クルーグマン教授は自信たっぷりに財政出動、金融緩和の必要性を説き、「アベノミクス」を皮肉交じりに評価するが大丈夫なのか。
大胆な金融緩和、財政出動への抵抗勢力を堅物過ぎる理論にとらわれていると批判するが、責任を持たない学者と国民の生活に責任を持たなければならない政権、官僚の立場の違いではなかろうか。
安倍総理は、大胆にも先進国でやれなかった経済対策をやろうとしているのだが、大胆な金融政策偏重の政策には疑問が残る。
日銀白川総裁の考えにもっと耳を貸すべきだ。
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