理研のSTAP細胞不正事件は、一律減額が続く我が国の研究開発予算にあっての「ぶんどり合戦」の負の代償だったのか。それにしても日本の科学界の信頼を大きく失墜させた責任は大き過ぎる。
更に、今回のSTAP細胞の不祥事の見通しも立たない中で、予算獲得への熱意が衰えていない理研に研究者だって「理研はやっぱり何かおかしい」とあきれているという(毎日新聞 2014.7.6)。何の反省もなく従来通りの予算獲得に走っているのだ。
緊縮財政の折、科学予算だって削減されるのは当然だ。「科学技術関係予算の推移」を見ると、24年度5兆2791億円、25年度4兆4926億円、26年度3兆6264億円になっている。
理研の平成26年度予算を見ると、総額834億2800万円だ。どのくらい減額になっているのか分からないが、それでも財務省は理研の無駄遣いを指摘していた。週刊誌では豪華な調度品の購入が報じられ、STAP細胞論文発表時は小保方研究室が異常な衣替えをしていたのには驚いたものだ。
日本の科学技術はどうなっているのか。
総合科学技術会議がある。資源配分方針に従いアクションプランで問題解決型政策、戦略的重点化を目指す。そしてP→D→C→Aで質の向上を目指すというのだ。
女性の進出にも重点を置き、小保方さんを招いて安倍総理とのツーショットを目論んでいたが、疑惑噴出で取りやめた。もし実現していれば安倍総理は赤っ恥をかいたことになる。政権にとっては冷や汗ものだっただろう。「安易に「うまい話」に乗っかるな」という警告だ。
恐らくこの疑惑だらけのSTAP細胞論文の発表を急いだ背景には、「特定国立研究開発法人」があったのだろう。
「国立研究開発法人制度のあり方に関する懇談会(平成22年3月)の「国立研究開発法人制度のあり方に関する懇談会における指摘事項」からこの制度のポイントを拾ってみた。
国家戦略に基づく基礎研究や国家基幹技術などの研究開発に取り組む主体であり、国際的な知的優位を確保する拠点がこの法人だという。
理研からは、野依理事長、笹井さんの発言が見られる。
笹井さんは、「尖った」科学的優位性と人材の育成による、急成長分野における国際競争力の強化が、この法人の使命で高度な機動力が必要だという。
更に、大学は日本の学問の土台であり、その役割は持続力、包括力を特徴とした知の創生と継承であり、人材育成においては平均値の底上げがある。一方研究開発法人は戦略分野に特化した知の創生であり、国際競争力、優位性に資する特定領域の頂点を形成する基盤整備だという。
大学は平均値の底上げ、この法人は特定領域で頂点を作るというのだ。だからそこに資源(人材と予算)を投入しろというのだろう。私は寧ろ地方大学などで社会に密着した研究をやっている人は多いと思う。そういう研究に投資した方が良いのではないかと思うのだ。どうしても集中させると利権がらみになってきて弊害が出てくるのだ。
そして、野依理事長は優秀な人材を確保するためには、海外の卓越した研究機関や研究者との協力関係を築くことが重要という。
ところが、今、予算などで困っているのだ。
野依理事長は、一律に予算が減少し、独立行政法人評価委員会において最高のS評価をもらっても、予算が増えず、これは大変困ったことだというのだ。
笹井さんも、成果の高い研究開発は容易に予算を削減してはならない。独法改革の名の下に運営費交付金の一律削減が行われたために、研究室の閉鎖、若手の活躍の場の縮小など国際競争力の面で厳しい状況にあるという。
良い人材を確保し、国際的に優位に立つには資金が必要なのだ。そのぶんどり合戦の過程で出て来たのが小保方さんのSTAP細胞不正事件だ。
疑惑が大きくなるまでは理研上げて「STAP細胞」に取り組む姿が見えてくる(毎日新聞 2014.7.6)。
予算獲得の武器にしようと目論んだが、科学の不正は隠せなかった。特定国立研究開発法人の設立と理化学研究所、産業技術総合研究所の候補は変わらないだろうが、先送りになった。
研究開発法人の業務運営では、国家的な研究開発だけでなく、基礎・基盤研究や不確実性を許容出来るような柔軟かつ弾力的なマネージメント構造、ガバナンスが必要と言うが、理研はSTAP細胞不正事件でマネージメント、ガバナンス両面で欠陥をさらけ出した。
野依理事長は現行独法制度にはトップマネージメントが出来ると言ったが、今どう思っているのだろうか。
国の研究開発となると、なかなか国民の理解を得にくい。先の民主党政権時の「事業仕分け」を見ても政策に対して担当者がうまく説明できないのがほとんどだ。目的が曖昧だから同然だ。しかも役人がやるとなると利権がらみになってくる。
理研も野依理事長は即刻辞任し、新しい体制で早く出直して欲しい。ただし、文科省官僚の安易な天下りは禁物だ。
0 件のコメント:
コメントを投稿