2014年7月11日金曜日

企業への納税強化:経済界の減税要望が国を破綻に導かないか

国の破綻を回避するためには企業、経済界が要望する減税よりも企業への納税を強化すべきではないか。安倍政権は成長戦略と財政再建は車の両輪だと言う。アベノミクスの成果を急ぐ余り安倍政権は第3の矢の成長戦略及びその見直し案を出すが、市場の反応は鈍く、評価の指標である株価は15000円台を彷徨う有様で、これではダメと思って次々に企業優遇策を繰り出す。

復興特別法人税を1年前倒しで廃止し企業は喜んだ。ついで経済界からの要望も強かった法人実効税率の下げだ。現在の35%(東京)を25%まで下げるというのだ。当然税収減は約5兆円、代替財源が直ぐには見つからず数年で20%台まで落とすまで譲歩した。

当初麻生財務相は財務省の意向をくんで、「70%以上の企業が赤字で税金を納めていないのに法人税下げが効果があるのか」と反対したが、安倍総理の熱意に負けて「代替財源が見つかれば」と賛成したようだ。

安倍総理は「法人税を下げる代わりに、賃上げをしろ」と経済界に迫った。

米倉会長は、法人税下げで企業にカネが残る。それが賃上げに回せると考えたようだ。でも国民は消費税増税で負担を強要されているのだ。

今春闘は一定の効果があったと政権は評価するが、実体はそうでもなさそうだ。

朝日新聞(2014.7.11)の「経済気象台」によると、今年の賃上げは7300円で2.28%になるが、物価の上昇、消費税増税で家計には大きな負担になっている。所定内給与は0.2%増(5月)、消費者物価指数は前年比4.4%増だから所定内給与はマイナス4.2%だ。

アベノミクスで円安、株高、金利も低金利を維持、税の下げで企業に所得移転が進んだ(同上)。

逆に、企業の儲けを家計に再配分するシステムは整っていない。前川レポート、21世紀版前川レポートでも内需拡大には企業の儲けを家計に再分配することが必要と提言されていたが、企業側の同意を得られなかった。

経済界が企業に益する税制を要求ばかりしていると国を破綻に導くのではないか。
よく言われていることに、実効税率35%は世界で2番目に高い税率で海外企業の日本進出の壁になっているというのがある。

でもある調査によると、需要がないのであって法人税が高いのは下位の理由だという。

各省庁が別々に減税するので全体の税体制が分からなくなるが、実際には日本の法人税はあれやこれやを勘案すると35%ではなく、20%台になっており更に下げる必要はないというのだ。

欠損金(赤字)を次年度以降に繰り延べる制度、海外子会社の配当金を非課税、研究開発減税は1兆円に上り、減価償却制度の見直しは5000億円になるという。

課税拡大では、赤字や経営難でも納める外形標準課税の拡大で税負担を広く薄くすることだ。以前、石原都知事時代に銀行に外形標準課税を課したことがある。国がやれないことをやった実績は評価出来るが、一部訴訟を起こされたと記憶している。

中小企業への優遇対象企業を減らし、課税を強化することも出来る。

そして政府の税制調査会で話が出ていたが、租税特別措置法の全面的見直しだ。

課税ベースでの税制改革を言うと経済界は法人税下げを要求から下ろすかもしれない。それだけ租税特別措置法は企業優遇税制度なのだ。

驚くべき記事が日刊ゲンダイ(2014.5.20)に掲載されていた。「軽すぎる大企業の税負担」の記事で、法人税引き下げが必要かと主張している。

それによると、トヨタ自動車は過去最高の収益を上げているが、納税は6年ぶりで税負担率は18.5%、みずほFG 0.2%、三菱UFJFG 0.3%、事業拡大を続けるソフトバンク3.7%、京セラ、武田薬品が23.7%、ゴーンさんの報酬の高さが注目された日産自動車が33.5%、久保田が34.5%だ。

住友商事、ソニー、セブン&アイは払ってさえいないと言う。その理由は様々な減税策があるからだと言うのだ。

政府税調も手をこまねいているわけではなさそうだ。

6月25日の法人課税専門調査会で法人税下げの代替財源として租税特別措置法見直しや中小法人への課税強化を盛り込んだ法人税改革案を了承した。

政府税調が、どの程度思い切った見直しをするか。自民党の税調との駆け引きが激しくなるだろう。党が口出しすると選挙が念頭にくる。国が破綻しても選挙が大事か。

おねだりばかりの経済界ではなく、今度は自ら経済再生に向け実績を示すべきではないか。長く経済同友会の代表幹事を務めた品田さんのような気骨のあるリーダーが出て来て欲しいものだ。


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