2%物価目標を目指しての日銀の量的・質的金融緩和は、円安、物価上昇で「経済の悪循環」の様相を呈し、更に消費税増税で個人消費の停滞が出て、日銀の言う「景気の前向きな循環メカニズム」も怪しくなってきた。報道によると黒田総裁は、目標達成が困難であれば、「追加緩和であろうと、なんであろうとやっていく」と悲壮感ともとれる発言をしたそうだ。
日銀の量的・質的金融緩和で市場に年に60~70兆円のカネを流しマネタリーベースの増加をやっている。民主党・菅政権の時は110兆円、野田政権の時に120兆円だったのが、安倍政権になって130兆円、2013年末で200兆円、2014年8月で243兆円、2014年末で270兆円を目指している。
白川総裁の時はゼロ金利政策も併用し、緩和な量的緩和をやっていたが、黒田総裁になって量的緩和に重点を移した。
円は野田政権時1ドル77円ぐらいだったのが、102円から今は107円台前半まで安くなった。安ければ良いのかと思っていたら中小企業は悲鳴を上げているらしい。購入材料が高騰しているのだ。
今の日銀はマネタリーベースを増やす考えの政策委員で構成されている。。
民主党政権時、「円高の要因は市場に出回る円が少ないために円高になっている。円の通貨量を増せば円安に動く」という論法で野党の自民党や民間エコノミストから追及され、先の衆院選では主要な政策論争になり、ゴタゴタもあって民主党政権は惨敗した。
また、デフレ脱却ができないのはインフレターゲットの設定がないからだと言い、安倍さんは日銀総裁を更迭しインフレターゲット論者である黒田総裁を起用した。脱デフレは政権の最大課題の一つなのだ。民主党・菅政権のとき脱デフレ宣言を検討したが諦めた経緯がある。安倍政権も当然課題になっている。
2%物価目標、異次元の量的・質的金融緩和で市場は期待感から円高→円安、株安→株高に転じ安倍総理のアベノミクスの第一の矢の効果が上がっている。
しかし、円安は輸入品の高騰で物価高となり「悪循環」の様相を呈し、消費税増税もあって賃上げはあったものの実質賃金はマイナス成長だ。そのために個人消費は停滞し、GDP成長率にも陰りが出てきた。
消費税増税10%も迫り、その判断基準が「7~9月期のGDP成長率」だから「今の経済状況では先送りした方がよい」という経済ブレーンの発言もあるが、日銀をはじめ政府関係者は、財政再建、社会保障対策もあって「消費税10%へGO」なのだ。
日銀副総裁は先の金沢市での講演で、「今の物価上昇は単に円安によるものではなく、「量的・質的金融政策」によるものだ」という意味の考えを披露した。円安で輸入品は値上がりしているが、そういう需要は減少し行く行くは価格引き下げの効果を出すというのだ。
本当にそうなるのか。食料品などは一斉に値上げになっている。
日銀は量的・質的金融政策で物価が上昇しているという。市場にカネがあぶれるのだから物価は上がるだろう。その結果GDP成長率も上昇する。
でも、賃上げが追い付かず家計は縮小、消費が低迷しGDP成長率も覚束ない。だから日銀はなりふり構わず目標達成のために「何でもやる」と言うのだ。黒田総裁、岩田副総裁には首がかかっている。
決して今の日本経済は日銀が言うような「前向きな循環メカニズム」を維持しているとは思えない。
「後ろ向きの循環メカニズム」、「経済の悪循環」の危険があるのだ。
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2014.9.11掲載
今の物価上昇:日銀副総裁曰く「単なる円安によるものではなく、「量的・質的金融緩和の効果」と
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