「地震計が動いていたら」、「あの現象が前兆だったのか」、これが今の地震、火山噴火の現実なのか。戦後最大の火山噴火事故になった御嶽山噴火も死者51人になり、予知が出来なかったのか、あの現象でも入山規制は出来たはずと反省や批判が出ている。
でもほとんどが被害の大きさから来る後出しなのだ。
大きな自然災害は、ほとんどが天災ではなく人災の様相を呈しているのだ。
読売新聞(2014.10.5)の火山列島(下)を読んで驚いた。御嶽山噴火も予知でき、甚大な被害を最小限に食い止めることができる可能性もあったのだ。
それによると、監視体制にも問題があった。火口から15km内に12台の地震計が設置されていたが、内3台は故障や電源の問題で作動していなかったという。もし山頂に設置した地震計が動いていたら前兆が把握できたかもしれないのだ。
いつもそうだが、緊急時に計測器や安全装置が作動しなかった例は多い。設置者の維持管理、問題意識の欠如だ。予算を取って設置しても維持管理できなければ何の意味もない。無駄遣いになる。
それでも地震、火山の研究費は年々減少しているらしい。昨年は200億円で、火山研究には20億円程度だという。当然人の確保も難しい。
地震、火山大国の日本が、このように弱体化したのは2004年の国立大学法人化、交付金の減少があるという。
研究員不足も否めない。約696人いるなかで火山研究者は少ないのだ。だから火山研究は「絶滅危惧種」と揶揄されている。活火山に設置された数少ない研究所も常設研究者は稀だそうだ。
何時噴火するか分からない火山で、こつこつデータを蓄積し解析していく研究は忍耐もいるし日の目を見ることも稀だ。
私も一度火山研究がどうなっているか知りたくて、日本火山学会講演予稿集(2012年10月)を取り寄せて見たことがある。
火山の噴火記録を集計した研究があり、2000年の間に噴火は1135回経験している。九州沖縄が399回、関東中部261回、伊豆小笠原209回、北海道135回、東北130回だという。噴火の研究の機会が少ないのだ。関東中部では浅間山、富士山が圧倒的に多い。
当然対象も今話題になっている火山で、浅間山、伊豆大島、阿蘇、雌阿寒岳、箱根山、新燃岳、硫黄島、霧島、桜島などで静かな活火山を研究している人はいない。
でも、2011年の東北地方太平洋沖地震以降、20の火山で地震活動が活発化、富士山では富士山直下のマグマに影響を与えたし、深部の低周波地震は増えている。巨大地震が発生した後は数年で火山噴火の可能性があり警戒せよと言う。
なかなか火山研究が市民権を得るのは難しいようだ。研究内容も素人には難しすぎる。
一方で地震の方はどうかというと、この分野も心許ない。よく聴くことに「あの現象が前兆だったのか」という。巨大地震の後に関連するデータを調べていたら前兆と思われる現象が見つかったというのだ。
東北地方太平洋沖地震では、その前にスロー・スリップが北の方から南下し止まったところで巨大地震が発生した。だからスロー・スリップを監視すれば地震の予知は出来るのではないかというのだ。今、千葉県沖ではスロー・スリップの間隔が縮まっている。止まったところで巨大地震が発生するのではないかと危惧されている。
スロー・スリップが検証できるのであれば、スーパー・コンピューター「京」で常時チェックし予知に活用してはどうかと思うのだが。
一方で、地震学者ではないがGPS測位で異常値を観測し、地震の発生を予測する手法も役に立ちそうだという。国は全国に1300基のGPSを設置しているのだから常時解析に力を入れて予知に生かしたらどうなのか。
「あの現象が前兆だったのでは」でなく、「異常が見つかったので警戒を」にはやくかえてほしいものだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿