2016年3月18日金曜日

国際金融経済分析会合って何なんだ:出てくる提言は分かりきったものばかり

安倍総理肝いりで始まった国際金融経済分析会合って何なんだ。出てくる提言は分かりきった物ばかりだ。今回の会合は消費税増税、参院選向けの国内政策に重点を置くか、伊勢志摩サミットでの「収縮する世界経済」に向けた政策提言に重点を置くかで見方(評価)が変わると思う。

でも、どの提言も国内政策と変わらず、後は安倍総理の決断一つではないか。海外からわざわざノーベル経済学賞受賞者を招聘する意義があったのか。安倍総理のアベノミクスを評価する学者達と思うが、今は寧ろ反対意見、見直し論者の考えを聞き政策に生かす時ではないか。

1回目、コロンビア大のステイグリッツ教授、2回目、ハーバード大のジョルゲンソン教授、日本経済研究センターの岩田理事長、3回目はこれまたクルーグマン教授らしい。

今まで出た提言を新聞記事から拾ってみた。

財政出動、消費税先送り、経済の効率性、成長戦略、岩盤規制撤廃、効率的な働き方、構造改革、金融政策そして大事なのが総需要創出だ。

どれを見ても目新しい内容はない。国内で政策を提言する官僚連中も日夜頭を絞り、海外の情報も収集しているのだから既に出払った政策類なのだ。

違う点は、海外の学者は「日本は余力があるのだから財政出動で世界経済をけん引しろ」と言うことだろう。

リーマンショック後の沈滞する世界経済をけん引したのは中国の52兆円にも上る財政出動であり、7%に上る成長率だ。世界が「中国様様」と言っていたが、ここに来て過剰設備、過剰雇用が問題化し「中国初の世界恐慌」の危険にも言及されている。

中国は強気の経済政策、構造改革を訴えるが、先進国で信用する国があるのか。G20後、麻生財務相は「相当厳しい」との見方を示した。

消費税増税10%への対応が難しいのは確かだ。ステイグリッツ教授は8%への増税は間違っていたという。これで脱デフレから遠ざかったと見ている。あの時の状況はどうだったか。内閣参与の浜田さんなどは先送りを主張していた。

財政再建、社会保障制度の維持を考えると財務省が言うように増税だろうが、消費が益々冷え込む可能性はあるし、2%物価安定目標達成など不可能だろう。その時は日銀の総裁、副総裁が辞任すれば良いが、政治ではそうはいかないのだろう。

アベノミクスの失敗は、即安倍政権の信用失墜だ。安倍総理の引き時だろう。

官邸vs財務省の構図になる。ステイグリッツ教授が増税先送りを言うと、メデイアは即、「先送りか」と騒いだが、何故か、菅官房長官は否定した。

成長戦略もはっきりしない。政府が政策を提言したときはメデイアでも記事になるが、そのうちに忘れ去られる。P→D→C→Aで見直しをしながら目標達成を目指す気など官僚にはない。

岩盤規制撤廃も助言されているが、岩盤にドリルで穴を開ける刃になると安倍総理は豪語していたが、これもどうなったか聞かない。自民党の票田である既得権益者の抵抗が大きいのだろう。JAの改革が進んだように見えるが、農家は自民党を支持しないと言う。

構造改革、特に人口減少問題も取り上げられた。出生率を1.4から1.8に上げようと言う。でもうまく行っても労働力になるのは20年後だ。当然労働力確保に東南アジアからの移民が問題になる。

金融政策ではマイナス金利政策をしっかりやれという。でもこの政策に疑問を投げかける意見もあった。

日銀が下した金融政策の一つだが、あくまでも非伝統的な金融政策だ。劇薬、毒薬と言われており、長続きは禁物だ。

そして総需要創出だ。金利が低くカネを借りやすい環境下でも需要がなければカネの使い道がない。為替安競争で輸出に需要を求めているが大事なのは内需だ。

内需拡大は過去に政権で課題になっていた。中曽根内閣時代の前川レポート、福田内閣時代の21世紀版前川レポートで提言されているが企業の儲けを家計に再分配することに財界が反対してうまく行かなかったようだ。

アベノミクスもトリクルダウンに期待した向きもあり「賃上げ」を強要したがマイナス金利もあって先行き不透明感を経営者は言い出した。

安倍総理は伊勢志摩サミットで主導権を握りたいようだが、提言された政策は既に出そろっている政策ばかりであり、後は安倍総理の決断次第だ。

ノーベル経済学賞受賞者のお墨付きではなく、国内で成果を出した実績で世界に訴えたらどうか。

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2016.3.17掲載
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