景気低迷、安倍総理は経済失速というが、増税が悪かったのか、需要不足が問題なのか。異次元の金融緩和で日銀は市場に300兆円を超えるカネを流しているが、海外要因もあり一向に目指す成長にはほど遠い。8%への増税が悪かったと言うが、国内需要不足が問題ではないのか。
各国が為替安競争で需要を海外に求めている。輸出国は儲かるが輸入国は自国製品が売れず、雇用にも悪影響が出ている。「強いアメリカ」を主張する米大統領候補のトランプさんも為替安競争を批判し多くの米国民から支持されている。
日本はTPP法案を国会へ提出すると言うが、アメリカは自国に不利と全ての大統領候補者はTPPに反対している。
新興国、中国経済が減速する中で米国市場にも頼れない状況が出てくる。
今、世界の著名な学者を招聘し国際金融経済分析会合が開かれている。安倍総理の強い意向で実現しているが、主要テーマは消費税10%への増税の可否、伊勢志摩サミットに向け世界経済への提言をまとめたいようだ。
メデイアは会合での提言、海外の学者、エコノミストのインタビュー記事を掲載する。同じ経済環境にありながら自らの理論(?)に基づいて十人十色の感じもする。
消費税増税については、ステイグリッツ教授は「間違った方向」と8%への引き上げを指摘するし、ルービニ・ニューヨーク大教授は特派員協会での講演で「直ぐに中止を発表すべきだ」と発言した(讀賣新聞2016.3.19)。
そんな中で増税派と思われる学者もいる。ハーバード大のジョルゲンソン教授は、「今はそういう状況ではないので、増税先送りは慎重に」という(讀賣新聞2016.3.20)。
選挙も控えて、官邸vs財務省、自民党税制調査会の構図も見えてくる。与党の公明党は軽減税率を導入するので増税賛成のようだ。
租税特別措置法で優遇されている大企業がさらに法人税を下げで恩恵を受けるので法人税税収は減る一方だ。代わりに社会保障費の自己負担分増で国民の負担は多くなる。年に数兆円増える費用を「社会保障と税の一体改革」で維持しようというのが消費税10%への増税で3党合意されている。おまけに先の増税先送りで景気条項を削除してしまった。黙っていれば増税だ。
景気対策として、国民の消費を刺激するためには将来への不安感を払拭させることも大事だ。
年金制度など社会保障制度の維持は、その一つだろうが消費税を10%に上げても2020年度までのPBの黒字化は無理という。それでも政府は黒字化を目指すというのだ。
2020年は誰が総理をしているか分からないが、安倍総理でないことは確かで、無責任な約束か。
経済を成長させ税収を上げることも必要だが、民主党政権時の税収は40兆円を越える程度だったが安倍政権になって50兆円を越えるところまできた。アベノミクスの成果(?)か、底上げかが議論になっている。「経済財政諮問会議でも議論せよ」と安倍総理は言うが、YESマンの集まりだから「アベノミクスの成果」というだろう。
でも少子化対策で費用はアベノミクスの成果を当てれば良いと民間議員が主張したが、麻生財務相はアベノミクスの成果は中長期計画で織り込み済みなので別の安定財源を見つけろという。
確かに税収は増えている。その底上げ分を景気対策に使うというのだが、選挙を控えてバラマキ予算、財政健全化に反すると批判が出ている。自民党政権は自分たちの安定議席を確保できるなら国のカネなどどうなっても良いのだ。
消費税増税は、やってもPB黒字化は困難、やらなければ社会補保障制度を維持することは難しい。国と地方の借金1000兆円越えをどうするか。
でも、消費税増税が景気停滞の本当の要因なのか。ジョルゲンソン教授は「今は極度に景気が悪化しているとは思えない。増税先送りは慎重に考えるべきだ」というアドバイスに耳を傾けるべきだ。
脱デフレ、円安、株高を目指し、政府、日銀は異次元の金融緩和策で市場にジャブジャブカネを流す。2%物価安定目標達成に80兆円という量的緩和を継続しているが、「限界がある」と批判されると、補完措置、マイナス金利政策と初めての政策を動員し、黒田総裁は「何ら問題はない」と強気の発言を繰り返す。
預金金利、住宅ローン金利など低下し企業はカネを借りやすい環境下にあるが、経営者は「確かにカネは借りやすくなっているが受注量が増えるかどうかは不透明」として設備投資に尻込みしている。
今、国内需要が不足しているので各国は為替安競争で輸出に力を入れ海外市場に期待している。それでは不公平感が出て決して長続きはしない。輸入国から異議が出る。
各国が国内需要の創出に力を入れなければならないことは分かる。設備投資は増え、企業も儲かり、その一部が家計へ再分配され、更に消費が伸び、経済の好循環を構築できるはずだ。
それに将来の不安が払拭できれば個人消費は増え成長戦略が描けるが、需要不足を成長分野に求め財政出動するには限界があり、各国共に構造改革が必須条件だ。
G20でも財政出動と構造改革の必要性を訴えていた。
今、盛況なのはIT産業関係だが、やっぱり「物づくり」で製造業が立ち直らなくてはならない。60%以上をサービス業が占めるようだが、小企業で家内工業、労働環境は悪く賃金も低い。雇用条件の改善も必要だ。
グローバリゼーションで国際競争力を付けるには労賃の安い中国へ、労賃が上昇したため、今度は東南アジアへ。円安で一部の生産設備が国内戻ってきていると言うが勢いはあるのか。
「仕事量は増えたが、工賃は低いままだ」と嘆く中小企業の経営者がいる。あの日本の代表企業であるトヨタだって、何年ぶりかで下請け企業にコストダウンの要請をしたという。今は工賃を上げる時ではないのか。下請けを虐めて自分が大儲けする「ジャストインタイム」「カンバン方式」こそ見直すべきではないのか。
規制改革、岩盤規制撤廃は政治の仕事だ。古くから言われているが一向に成果が出ていない。既得権益者の抵抗が大きく、即票田に結びつくのだから遅遅として進まないのは当然だ。
構造改革は今までの経験から無理、財政出動も票のためにバラマキになりやすく縛りが多い。期待の成長路線は規制も多く、既得権益者を潰しても新たな権益者が生まれ新規参入者の障害になる。官僚機構は根深い。
消費税10%先送りしても効果がないのであれば、一層のこと増税に踏み込むべきではないのか。
グローバリゼーションとかいって国際競争に勝つために従来の「日本の良さ」を犠牲にしてしまった。為替も株も60%は海外投資家の瞬時によるコンピューター取引で翻弄されている。あの会社を育ててみようという株主はいなくなった。
そんな中で需要創出なんて出来るのか。
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