時の政権は成長戦略で審議会や会議を立ち上げ政策を検討するが、思うような成果は上がっていない。安倍政権ではアベノミクスの異次元の金融緩和で経済財政諮問会議を立ち上げ政権の提案する政策にお墨付きを与え国会審議を軽視した。
岸田総理は「成長と分配」を掲げ「新しい資本主義経済」を目指し同名の会議を立ち上げた。メンバーは15名で座長は岸田総理、7人は女性で余り聞いたこともない企業を設立した経営者が多い。女性登用が多いが今流行りだ。男性だと「ここは我慢」と言う場面でも女性だと積極的に発言するメリットはある。
会議の目的は産業構造の変革、AI,デジタル化の技術開発で収益の良い企業を立ち上げ成長とともに分配を促進することだろう。岸田総理は「まず成長があってその果実を分配」すると言う。野党はまず分配のために財政出動を訴えている。
経済構造の変革を伴った成長選略はなかなかうまくいかない。新しい資本主義経済会議はまず、中曽根政権時の「前川レポート」、福田政権時の「21世紀版前川レポート」をもう一度検証すべきではないか。
何故、うまくいかなかったのかのヒントがあるのだ。
1980年代、日本は外需で貿易黒字が大きく、時の政権である中曽根政権は米国などから強く内需拡大政策を強いられていた。当時の中曽根総理は日銀の前川総裁をリーダーに経済構造調整研究会を立ち上げ報告書を作成した。
当時のメンバーを見ると、経済界を始め各界のそうそうたるメンバーが名を連ねてきた。前川さんは官僚にはあまり発言させず報告書を作成し公表したが、経済界からは批判が多く出されたという。
だったらうまくいくはずがない。後で官僚が「失敗の要因は「再分配」のシステムができていなかったこと」と述懐しているのを何かで読んだことがある。
企業の儲けを労働者に再分配することで経営者は反対したのだ。そういえはここ30年ほど日本人の賃金は伸びていないというニュースがあった。
今回の会議のメンバーに連合会長も名を連ねているが、雇用者を多く抱える製造業や飲食業など経営者が少ないのが気にかかる。
岸田総理は再分配の必要性を「まず成長が必要で、成長あっての分配だ」という。成長分野の企業をのばし、生産性の向上、構造改革で収益を出しそれを再分配するというのだ。だから成長選略に失敗したら分配などありえないことになる。
一方、野党は財政出動でまず分配だという。現金給付などで生活支援などして景気改善を目指すのだ。こちらも効果がなければ借金の上乗せだ。すでに1200兆円にもなるという
税制の見直しが必要だ。大企業、富裕層への優遇税制の見直し、岸田総理が言っていた金融所得課税強化は市場の動きが気になりトーンダウンした。異次元の量的緩和で市場にカネを流す結果、投資ではなく、社内留保に回り500兆円(GDPと同じ)に近づいている。麻生前財務相が経済財政諮問会議で内部留保を如何にして吐き出させるかがポイントだといったことがあるが妙案はなかったようだ。
成長選略、成長する経済分野そして「再分配」のための税制見直しと新しい資本主義経済会議で対応できるのか。
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