アベノミクスでデフレ脱却が出来るか、正念場を迎える年になった。安倍総理は年頭会見で景気回復の実感を収入アップという形で国民に届けるという。地域による格差も大きいので津々浦々まで浸透するのは難しいだろう。
第3の矢の成長戦略も6月までに見直すと言うからには、言われているように族議員、業界団体の抵抗でうまく行っていないのだろう。規制緩和の難しさを示しているようだが、例え規制緩和が出来たとしても今度はまた新しい利権者が出てくるだろう。
「イタチごっこ」なのだ。
ところで安倍総理は企業収益改善→賃上げ→景気の好循環を描いている。「所得の再分配」という永年の課題に果敢に挑戦しているのだ。
思い出してみよう。輸出で儲ける日本経済に海外から猛烈な批判があった時、時の政府は有識者に提言を求めたのが前川レポート、21世紀版前川レポートだ。いずれも提言はあったが失敗した。
その要因に、企業が儲けを分配する「再分配」に抵抗したからだ。
でも、市況の急回復で業績が向上し安倍総理の強い要望もあって経団連は賃上げを参加の企業に奨める事態になって儲けの再分配の動きが出て来た。
7日朝のNHKニュースで、ある証券会社が若手社員層を対象に確か3%の賃上げするという。かなりの儲けを出したことと、優秀な人材を確保したいためと言う。他社で追随するところも出てくるだろう。
問題は製造業だ。系列、下請け、孫請け企業を入れると裾野が広い。
賃上げに言及したメーカーもあるようだが、中小企業では仕事はあるが金銭的にはアベノミクスの効果は受けていないという。円高で苦しくなると下請けにコストダウンを要求し、それなりの利益を確保する。内部留保は280兆円に達するというのだ。しかし、円相場も75円から今は104円だが、下請け企業に円安還元をしているのか。おそらく円安還元は遅れるのだろう。
私が現役の頃も見積もりは2~3社の相見積もりは常識だった。更にコストダウンを要求すると最後は仕様を落としてくる。材質は悪く作業員の技術も2流になる。それで満足していては大きな損失になる。
無駄も極力省こうとする。当然のことと思うのだが、新しい発見は失敗や無駄から出てくる場合もある。
無駄の削減での生産方式というとトヨタの「カンバン方式」だ。「必要な物を必要な時に」、徹底したコストダウンは脚光を浴び、品質管理手法として我も我もと教えを請う事になった。それが、コストカットの下請けいじめとなる。固定費に占める人件費の割合が一番高いために給料カットになり、それでも駄目なら首切りになる。
低い給料で、減った人数分も働かされる。それが恒常的になり景気の低迷を招きデフレからの脱却が長期間出来なかった。
民主党・菅政権の時、「デフレ脱却」の検討がされたがかなわなかった。今、円安、株高でデフレ脱却のチャンスであるが、脱却の宣言は控えられている。
やっぱり、儲けの再分配が出来、家計が潤い、消費が増え物価が上昇するのでなければデフレ脱却とは言えないだろう。今、消費者物価指数は上昇傾向ではあるが消費増の結果ではなく、円安による輸入品の物価高が大きく寄与しており、決して「好ましい好循環ではない」のだ。
安倍政権が矢継ぎ早に打ち出した数々の企業優遇減税、異次元の量的緩和、一方で消費税増税が私たちの家計にどう影響してくるか。企業や金持ちは優遇され、一方で負担を強要される大多数の国民が安倍政権に審判を下すときが迫っている。
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