2020年にプライマリーバランス(PB)を黒字化する財政健全化を各政権は公約するが、誰が、どこで真剣に検討しているのか。「国民の理解が必要」と言うが国民に日本財政の本当の姿を説明したことがあるのか。
国、地方合わせた借金は1000兆円を越えGDP比200%で先進国一の悪い状況にあることは財務省がよく口にする。消費税増税時も先送り出来ない喫緊の課題だという。でも資産も借金の半分ぐらいあるから財務省が言うような危機ではないとも言う経済学者もいる。本当はどうなんだ。誰も責任ある説明はしない。
先日、NHKの国会中継を見ていたら野党の女性議員が財政健全化で質問に立った。「現在の借金は」という質問に財務大臣は1029.9兆円と答えた。「資産があるだろう」という質問に確か640兆円と答えたはずだ。だったら本当の借金は約400兆円で消費税増税など急ぐ必要は無いのではないかという話になったはずだ。
更に外為特会で余剰金が出ている。「10兆円ぐらい借金の返済に当てたらどうか」と追求したが、麻生財務相は「大きな為替変動で日本経済に影響がある時に使うためにある」と言い「私が発言すると株価、為替に影響するのでマイクの前では話せない」という趣旨に答弁をしていた。聞きに来てくれれば説明できるというのだが財務省の利権を守る姿勢がありありだった。
こんな調子だから公の場で財政再建、借金縮小の議論をすることは不可能なのか。
そんな時、朝日新聞(2015.4.28)の経済気象台で「財政健全化への甘い姿勢」が目に止まった。安倍総理は度ある毎に経済再生と財政再建の両立を目指すというがその言動から経済再生が最優先で財政再建にかける意気込みが感じられないと言い、財政の構造改革が必要だと言う。
一体政権はどこで財政健全化の検証を行っているのか。海外では財政規律を守るために法制化されているが、我が国でも法で基本方針を規定しなければ借金は増える一方ではないか。
ドイツは憲法改正規定があり、フランスも検討中らしい。イギリスには財政責任法がある。EUはGDP比3%以内、債務残高はGDPの60%という協定がある。アメリカは最近も債務上限の見直しを拒否されデフォルトの危険もあると新聞に出ていた。議会の承認を得なければ借金の上積みが出来ないのだ。
日本も各政権が2020年度にプライマリーバランスの黒字化を掲げているが、実情は基礎的財政収支GDP比1.6%で9兆円を超える赤字だという。それでも達成すると見栄を張る。国際的な公約になっているので未達なら市場が乱れると思っているのだろう。
我が国ではどこで,誰が検討しているのか。財務省に任せっきりだろうと思うが思いつくのは経済財政諮問会議だ。ここでどんな議論がされているのか調べるために「中長期の経済財政の展望と財政健全化」が議題になった平成27年度第2回、第4回の経済財政諮問会議議事要旨を開いてみた。
民間議員が財政健全化は、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革の3本柱で実施し、2020年までの5年間で2015年に較べPB対GDP比3.3%改善したらどうかと提案している。その内訳は消費税引き上げで1%、経済再生、歳出改革で0.5%などが提示されているのだ。
PB/GDPで分子の財政を縮小し、分母のGDPを拡大しろというのだ。17年度のは10%の消費税増税があるし、日銀の出口戦略も出てくるだろう。マクロ経済運営は極めて重要な局面を迎えるというのだ。
アベノミクスの経済成長路線でGDPを増やし、歳出を絞って財政再生を目指すというのだ。そうなれば計算上は改善できる。
でも経済気象台は成長だけに頼っていては真の問題解決にはならない。財政の構造改革が必要と説く。
安倍政権も借金を積み上げているようだが、財政法5条には中央銀行の公債引き受けを禁止している。今の日銀の市場を通じての買い入れは通貨供給の手段として認められているがいつかは「財政ファイナンス」とみられる。既に経済再生諮問会議でもその危険を指摘している。
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