2009年9月23日水曜日

保管資料のうち、役立つのは最近の5年分か




ある著名な作家が「本が一度家の入ってくると、不思議なことに、なかなか出て行かない」という内容の随筆を書いていたのを見たことがある。
 よく言ったモノで、我が家でも作りつけの本棚では入りきれず、物置の棚にも積み上げられているが、それでも今まで4回ほど大胆に処分した。そのほかにパソコンにも7~8年分の資料が保管されている。

 会社勤務時代にも、どうすれば書類が減らせるか、書類の保管は最大にテーマであった。結局は、法定期間のあるモノは別にして、保管期限5年を決めて極力書類の保管は控えたが、会社の正式な場所に保管しているモノとは別に、個人で同じモノを机の引き出しに保管する事例が多かった。自分で抱え込まなければ安心できないのだ。
  
 個人の価値観にもよるが、書類の保管って、どの程度必要なのだろうか。

 何か仕事で、参照或いは引用すべき資料は、どんな資料なのか。どの程度保管した資料を使っているか、学会の機関誌、書籍の引用文献で調べてみた。

 JGL(日本地球惑星科学連合ニュースレター)で必要な報文があったために保管していた数冊から、何時発表された文献を引用しているか調べた。79件の引用文献で、1年前21.5%、2年前25.3%、3年前11.4%、4年前10.1%、5年前8.9%でそれ以前は2~3%だ。
 以前は学会に入っていたが、今は退会した日本自然災害学会の自然災害科学(Vol.28 No1 2009)では、引用文献52件で同様に34.6%、26.9%、9.6%、5.8%、5年前以前は2~4%だ。
 また、書籍を見ると、あの地球温暖化の是非をめぐる議論の発端となったビョルン・ロンボルグの「環境危機を煽ってはいけない(文藝春秋 2003年6月)」の「地球温暖化」の章では692件の引用文献があるが、同様に22%、18.8%、13.2%、9.4%、13%で、6年前も11.3%であるが、それ以前は2%前後である。
 社会科学系はどうかと思い、都留重人さんの「市場には心がない(岩波書店 2006年4月)」を見ると、引用文献135件のうち、同様に46.7%、11.1%、6,7%、5.9%、11.9%でそれ以前は2%程度だ。しかし社会科学系だけあって、古い文献では1926年の引用もある。

 いろいろ見てくると、引用される文献は、文献が発表される時点の5年前からの文献になる。それ以前の文献は、利用価値が極端に低くなる。
 

 しかし、このことは驚くことに50年前も同じ傾向があるのだ。

 「物理の散歩道(岩波書店 2009年9月)」の「棄てる」の章を見ると、海外の権威ある機関誌の1冊の掲載論文に引用された文献の年代別分布を見ると、5~10年前の文献が大勢を占め、特に5年前以降の割合が大きい。著者は「自分の資料を棄てる、あるいは置き換えるまでの保管期間をファイル後5年と決めてみようかと思う」と言う。

 確かに、その時は面白いテーマだと思って入手しても、今考えると「何だ」と思う例がある。本棚にも限界があり、専門の物書きではないのだから入手5年以前の書籍や、保管資料は思い切って棄てる勇気も必要だ。

 また、資料をスキャンし、パソコンのDドライブに保管されている資料もファイル後5年以上経っている資料は削除しても良さそうだ。ブログに記事を投稿する為に、役立つだろうと思って保管しているのだが、資料が容易に手に入ればテーマも決めやすいメリットはある。

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