ここに来て安倍政権の政治寿命が来ているように見えるが、安倍政権の峠からどんな日本が見えるのか。以前、堺屋太一さんが「峠の群像」を書き、ベストセラーになりNHKも大河ドラマに採用したことがある。堺屋さんは1700年頃の元禄時代と1980年頃の年代は時代の方向が変化する時期になる「峠」の時代だと言った。
私は「峠の群像」よりもその直後に出版された「峠から日本が見える」という経済書らしい本を購入し読んでみた。詳細は覚えていないが、堺屋さんは「峠から見ると日本の姿が見えてくる」と言うのだった。
峠は大事だと思う。時代の方向が変わってくるのだが、それがはっきりわかるときもあれば、知らず知らずのうちに代わっていることもある。特に経済などは後になって「あの時が分岐点だったのか」とわかることが多い。
翻って今の自民党安倍政権を見ると峠は何時なのか、あるいは何時だったのか。その峠からどんな日本が見えるのか。
長い期間のうちでの峠(分岐点)は堺屋さんのような人でないとわからないが、短い期間だと我々でもわかるのではないか。
戦後70年と言ったり、55年体制の崩壊と言ったり、復活と言ったり自民党長期政権が倒れ、細川内閣、自社さ連立政権、安倍1次政権に続く自民党たらいまわし政権、民主党たらいまわし政権と不安定な政権交代が続いた後、安倍第2次政権が始まった。
分裂、解体、再集結で揺れる野党をしり目に安倍総理はポスト安倍潰し、強権政治で一強独裁政権にのし上がり、自民党は総裁任期を2期4年から3期6年に規約改正し長期安倍政権を築いてきた。さらに4選に二階、甘利さんが言及する。
折角、政権交代できる2大政党制が始まったのかと期待されたが、野党はそれなりの地盤が構築できず政党支持率0~7%の集まりでは35%の自民には太刀打ちできない。峠ではなく小高い丘程度だったのか。
しかしその間、肝心の安倍政権の政策はどうだったか。
2012年12月、経済成長の新戦略アベノミクスの「3本の矢」、第一の矢は「大胆な金融政策」、第二は「機能的な財政政策、第三が「投資を呼ぶ成長戦略」を放ち円高→円安、株安→株高へ、輸出産業を活気づかせ飛ぶ鳥を落とす勢いになった。
異次元の金融政策は、日銀に「2年で、2倍」をキャッチフレーズに物価上昇2%を2年でやってのける公約だったが、いまだかって物価は1%前後、異次元の量的緩和も6年たつは出口戦略も見えず、行き詰まり状態で安倍政権は何もせず日銀の一本足打法と揶揄されている。
市場におカネを流し低金利を維持するが企業の設備投資は伸びない。物価も上がらず、消費も伸びない。経済の好循環が構築できないのだ。
経済の構図が変わってきているのではないかと見る向きもある。
成長戦略も経済界からは規制緩和が進んでいないと批判されているが森友学園、加計学園疑惑と規制緩和、戦略特区構想も安倍総理のお友達への利権誘導ばかりが目立った。
2015年9月には安倍第一次政権の末期を呼び起こす、女性閣僚2人が辞任することになった。公職選挙法違反、政治資金規正法違反の容疑だが安倍政権は早々と2人のくびをきった。
そのうちの一人小渕優子議員の政治資金規正法違反容疑は事件が明るみになって東京地検特捜部も1週間と言う早い時期に家宅捜査に着手するが、現役の長野原町長が自分がやったことと辞職し逮捕された。
群馬県政を揺るがす疑獄事件に発展するかと思っていたが、小渕さんは辞職し、資料もパソコンのHDにドリルで穴をあけ廃棄する乱暴さを見せつけた。
この辺から安倍政権もおかしくなって来たが、アベノミクスも津々浦々まで恩恵をもたらすこともできず、2015年9月、アベノミクスの第2ステージと言って「新しい三本の矢」を放ち2020年を目標にした。
新しい第一の矢は「希望を生み出す強い経済」と言ってGDP600兆円を目指す。計算方法の見直しなども進めているようだ。第二の矢は「夢をつかむ子育て支援」として出生率を1.4から1.8%に上げた。第三の矢は「安心をつかむ社会保障」で増えてきた介護離職をゼロにするという。
一億総活躍社会、50年後も人口を1億人を維持、デフレ脱却は目の前と言う。
確か以前はGDPもアメリカが1位(1000兆円)で日本はアメリカの半分(400~500兆円)で第2位につけていた。ところが日本のGDPは伸びず今、2位の中国(約1200兆円)にも大きく後れを取っている。
安倍総理の経済政策で円安、株高に転じたというが、実態はそうでもなさそうだ。その頃海外の市場は日本の株安に注目し日本への投資が始まったばかりだったそうだ。タイミングよく安倍総理の経済政策が当たったかのように見えたのだ。
だからその後の三本の矢、新三本の矢の成果もパッとしない。市場の動きは海外の経済情勢に大きく影響を受けて動いている。日本の経済政策の効果があったことがあったか。
そして今回の2人の閣僚の辞任、文科省の大学入試への民間のテスト採用先送り、文科相の「身の丈」発言、安倍総理の「桜を見る会」の私物化は公職選挙法違反のあくどい事案と失政が続き通常なら内閣不信任決議の政局だがその動きは見えず。
安倍政権の峠はすでに超えている。何時かと言うと2016年頃の内閣支持率がと不支持率が接近したり逆転したりしているときではないか。そして2017年に森友疑惑次いで加計疑惑が出てきた。
それでも世論調査で支持されているということは「他に代わる内閣がない」「他の内閣よりマシ」と言うだけのことか。
安倍政権の峠から何が見えるか。
「4選もあり」とする甘利さん、二階さんの望みはないだろう。長期政権を維持するための人材がいない。
今回の不祥事で政治生命が尽きかけていないか。安倍政権を担いできた菅さんは自派グループの2人の閣僚辞任で求心力を失い、安倍さんとは関係がぎくしゃくしているという。麻生さんも後継者に譲る動きもある。
解散総選挙の情報もあるが、本当に打って出る力が残っているのか。伊吹さんが大事なことを言っていた。憲法改正は国会の専権事項、権限のない安倍総理が憲法改正を掲げて選挙に打って出るのは憲法違反だというのだ。
その憲法改正も安倍総理の任期中に達成できる可能性は無くなった。岸、安倍家の長い念願、自民党是と言うが、安倍さんが先頭に立って旗振りするごとに野党は警戒する。国会の憲法審査会に出席すると強引に改正へ動かされるのではないかと野党の警戒心が強い。「審議するのはいいが、改正はできない」と言うことか。
安倍総理の国会での政策論争に問題がある。
野党の質問で問題の本質に触れていない。「やっているふり」をしてごまかしている。「あの悪夢のような民主党・・」ともう存在しない政党を批判したり、自席からのヤジは質の悪い総理に見える。哲学、倫理観のない総理と言った専門家がいるがその通りだ。
得意とする外交も手詰まりだ。日米貿易交渉はトランプ大統領に点数を稼がす結果になったし、北方4島返還問題ではプーチン大統領に押され気味で1vs1の密室会談で何を話し合っているのか。中国と首脳会談をやっているが尖閣諸島周辺の環境はほとんど改善していない。それでも習主席の訪日を希望しているというが自民党内で反対する議員もいる。
対韓、対北関係は全くの手詰まりだ。韓国が関係改善を申し込んでいるようだが、その前提は輸出の規制管理強化の緩和だ。できるはずがない。
アメリカとはトランプ大統領の大統領選の結果次第だ。保護貿易、保護主義でイギリス、フランス、ドイツと同盟国にギクシャク感が出てきた。米軍の駐留費負担増は同盟国を蔑ろにする動きだ。従来のアメリカ外交とは180度違う方向だ。
安倍総理はトランプ大統領との友好関係を外交の力にしようとしているが、共和党で親日派のアーミテージさんも「いつまでトランプ大統領でいるはずがない、政策が変わる可能性もある」とインタビュー記事で警告していた。
安倍総理での内政、外交は手詰まりだ。1億総働く社会、50年後も人口1億人を維持、デフレ脱却は「目前」というが安倍総理の任期中にできる目標を掲げていない。
野党がだらしないので政権交代はないだろうが、ポスト安倍で誰が出てくるか。岸田さんも動き出した。保守系リベラルとして宏池会が結集できれば可能性は一番高い。
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