日銀のデフレ脱却へ向けての政策は尽きた感じがしなくもない。日銀は12日の金融政策決定会合で、追加緩和を見送る判断をした。各国中央銀行の相次ぐ利下げにも拘わらず日銀は追随しないというのだ。詳しいことを知ろうと日銀ホームページから「総裁記者会見要旨 2012.7.13」を見た。白川総裁は「金融緩和の最適なスピードを引き続き意識しながら景気、物価の展開や効果をじっくり見極めながら適切な政策運営を行っていく」と言い、その結果が様子見なのだ。
利下げというが、日銀はゼロ金利に近い0~0.1%の政策金利で推移するように促しており、コールレートは0.07~0.08%程度になっている。これを完全にゼロ金利にすると、金利水準は下がる効果があると思うが、その副作用もあり十分意識する必要があるというのだ。相変わらず用心深さは変わっていない。
先の日銀総裁選びの時、白川さんが副総裁から急遽総裁に格上げされた。その時の新聞は、政策金利はゼロ金利に近く、政策の自由度は少ない。誰が総裁になっても難しい対応を迫られると論評していたが、その通りだ。
今の世界経済をどう見ているか。我が国は復興関連需要などから「緩やかに持ち直しつつある」といい、消費者マインドも改善の傾向がみられるが、海外では欧州経済は停滞し、中国も減速しており全体には減速状態から脱していないという。
日本経済の先行きについては、内需が堅調に推移し、海外経済が減速状態から脱すれば緩やかな回復経路に復すると考えているようで、物価面でも前年比でゼロ%近辺で推移するとみている。
そして、世界経済を巡っては様々な不確実性が大きいが、日本銀行は、デフレから脱却し、物価安定の下での持続的成長経路に復することが極めて重要な課題と認識しているというのだ。
更に、この課題は幅広い主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しの両方が揃って初めて実現するのだと指摘し、日銀は引き続き適切な金融政策運営に努め、金融システムの安定確保に万全を期すという。
成長路線強化に向け、政府もしっかり財政政策をやれと言っているのか。日本再生戦略に期待しているともいう。
今盛んに新聞は「札割れ」を報じている。固定金利オペなどで応札額が資金供給予定額に満たない状態が続いているのだ。
ところが日銀は、これは金融緩和政策が浸透している結果だという。こうした状況でも、資産買い入れなどの基金は、本年末65兆円、来年6月末には70兆円程度積み上げ、現行の金融緩和を間断なく進めていくと従来の考えを強調している。そして、ゼロ金利政策と相まって「中長期的な物価安定の目途」の実現を目指すというのだ。
日銀は、強力な金融緩和がいずれ効果をはっきしていくものと考えているという。
何度も聞くコメントであるが、今までのことを考えるとデフレ脱却、物価上昇に効果がなかったのではないか。それでもこれから効果が出てくるというのか。
デフレ脱却で何時も問題になるのがマネタリーベースだ。
今回も記者がマネタリーベースの伸び率が低く、強力に金融緩和をしているとは見られないという。平均残高は昨年12月に115.5兆円、今年の6月に119.9兆円で4.5兆円しか上がっていない。
しかしこれについても白川総裁は従来通り対GDP比では先進国の中央銀行の中では一番高い水準であると反論する。
でも在野のエコノミストは、2008年を100とした時の流通通貨量の伸び率は、先進国が急激な緩和を行っているのに対して、日銀は相変わらず緩慢な増加なのだと指摘する。通貨量を増やせば、デフレ脱却、物価上昇、円高対策になるというのだが、日銀は頑なに拒否する。
しかし、日銀が今までやってきた金融政策に大きな効果がなかったことを考えると、日銀がやっていないのは通貨量の増加だけだ。
市場に資金は十分にあるが、企業が技術開発で消費者が欲しがる製品を市場に出していないことに原因があるという日銀の指摘もうなずける。雇用の確保を考えると内需拡大が優先課題だ。日本再生戦略もまとまるようだが、今まで成長戦略が効果がなかった原因は何なのか。
今回発表される再生戦略も、政権が変われば反故になる。そんなことを考えれば企業家もやる気が出ないのでは。
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