2009年6月19日金曜日

増税を言う前に「省利省益予算」(特別会計)を根本的に見直せ



財務相だった塩川さんが国の財政について、「母家ではお粥をすすっているが、離れでは子供がすき焼きを食っている」と表現したことがある。国の一般会計では国会での審議もあり、ケチケチの予算であるが、もう一つの会計である特別会計は国民の監視から離れ、官僚が思うままに彼らの事業などに使っていることを説明したモノだ。

 私も3年程前に国の会計はどうなっているのか調べたことがあるが、分かった事は一般会計は約83兆円、特別会計は約450兆円で、一般会計から約50兆円が特別会計に繰り入れられていることだった。一般会計と特別会計を合計した約530兆円が国の予算ではないのだ。内容はものすごく複雑で、素人には全く分からないものだった。

 国会議員の一部や財政学者は、税金の無駄づかいをテーマにしたテレビ番組で、国の予算は約210兆円と言っていたが、その内容が分かった。

 最近出版された、「亡国予算」(北沢著 2009.5.8 実業之日本社)、闇に消えた「特別会計」により、概要が分かった。

  それによると、08年度の予算は一般会計で歳入総額83.1兆円、特別会計は368.4兆円に上る。特別会計は一般会計の約4.5倍になっている。

 ところが、一般会計と特別会計の間では資金が行き来する重複計上されているために、本当の姿はこの重複計上を除いた純計ベースで見なければならないと言う。

 そうすると、一般会計の歳入純計が81.0兆円、特別会計が155.6兆円、歳出純計は一般会計で34.2兆円、特別会計が178.3兆円だ。特別会計の規模は一般会計の5.2倍にもなる巨大な金額なのだ。

 

 その特別会計がこの1世紀の間、国民(国会)の監視なしに、官僚事業に思うままにつかわれてきた悪例が蔓延っていた。しかも特別会計には予算があるが、決算はないらしい。予算取りはするが、最終的にいくら使ったかが報告されていないのだ。そこで特別会計から事業費用以上の交付金(余剰資金)を受けて、余った金が「埋蔵金」になっているらしい。

 変な事件を起こし、表舞台から去った元東洋大の高橋洋一さんが発掘し、中川さんが「埋蔵金がある」と騒ぎ、問題が明るみに出て、政府、財務省も隠しきれなかったようだ。

 行政改革推進法で、2006年度の31あった特別会計が統廃合し2011年度に17まで減らされるそうだが、問題は名称を変えて統合されたりして「特別会計の数だけ減らした」と主張されることだ。

 一般財源からの組み入れ(約50兆円)、目的税(例えばガソリン税)、数々の保険料、使用料、手数料などで賄われる特別会計ではあるが、本来必要が無くなった事業、省利省益でやっている事業で、「国民のため」になっていない事業もまだあるはずだ。

 特別会計での事務、事業を徹底的に見直す必要があるが、民主党が根本的に見直すといっている課題の一つだろう。

 先の党首討論でも、麻生さんは3年後に増税をお願いすることになると訴える一方で、鳩山さんは増税の前に徹底した見直しをすれば10兆円は捻出出来るので、4年間は増税しないと言う。210兆円の約5%に当たる金額だ。

 民間会社は、予算に対して5%カットでの執行は当たりまえだ。官僚だけが、余剰資金で事業をしていいはずがない。国民の実生活に無関係な事業は大幅に廃止すべきだ。

 北沢さんも、その著書で、特別会計の不用金10兆円が毎年活用できると指摘している。決算ベースでは、巨額の使い残しが出ているのだ。

 

 北沢さんの前書を購読し、その怒りを官僚、自民党政権に向けよう。統廃合と言いつつ廃止せずに、統合するだけの行政改革は許してはいけない。

 

 足尾鉱毒事件で被害住民の側にたって争った田中正造は「国民が監督を怠れば、為政者は盗人になる」と警告した。100年前のことであるが、今も十分に通用する警告である。


写真は財務省とそのHP「特別会計のおはなし」

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