2009年10月30日金曜日

東京モーター・ショーに見る自動車産業の夢と現実







東京モーター・ショーも29日の入場者累計で28万人を越えた。今回は出展社も241社から122社に半減し、開催日も減らしたという。27日に入場してみたが、確かに以前の様な人気はない。それでもコンパニオンが立っているブースは人だかりが出来ている。

 今回は、環境への取り組みが目立ち、「CO2を全く出さないゼロ・エミッション」を目指している。

 今のところ主流は、ハイブリッド・システム、アイドリング・ストップ、筒内直接噴射、可変バルブのタイミングなど燃費改善対策が施され、15~30km/Lの燃費車だ。これに減速時に生じるエネルギーを電気に変える減速エネルギー回生システムも加わりより燃費のよい車になっている。

 実用化の近い電気自動車に各社が力をいれている。プラグインタイプは、家庭の100V、200Vで充電でき、急速充電器を使えば15分ぐらいで、80%を充電できるらしい。スバルのハイブリッド出品車Plug―in STELLAは、1回の充電で90km、エネルギー効率もよく、電気代100円で100km走るとPRしている。

 そんなモノかと思ったら、ニッサンのLEAFの航続距離は160kmだという。1回の充電で10km以上は走ることが出来るが、その根拠は80%のドライバーの1日走行距離が100km以下という調査から考えているらしい。

 担当者に「電気自動車はどうですか」と聞くと、自分のドライブ計画では、往復距離、充電施設のある場所、充電時間などいろいろ勘案して計画を立てる必要があると言う。コンビニや高速のPAなどでの充電インフラの整備は進んでいるが、長距離ドライブや田舎に帰る計画などは対応出来ないこともある。

 また、注意しなければならないのは、航続距離もエアコンなどを使うと短くなると言うことだ。先の総選挙で東京地方区から立候補した小池さんが、エコを唱え自分も電気自動車2台を使用したが、距離が短く、エアコンを使うと更に短くなるので真夏の選挙は大変だったという記事を見たことがある。今の電気自動車の実情をよく表している。

 CO2排出“ゼロ”と言うが、それは走行時であり、家庭で充電する必要があるので、当然電力会社ではCO2が発生することになる。決してCO2排出がゼロ出はないが、今のところガソリン車に比べれば、遙に少ないと言うことだ。

 最終的には燃料電池自動車なのだろう。一部分野で走っているが、実用化にはほど遠い。

 参考出品車を見ると、自動車産業の夢がいっぱいである。スバルのHYBRID TOURER CONCEPTを見ると、車内ジェットやクルーザー感覚のコックピットデザインで、コンソールユニットはITを駆使したタッチパネルが施され、未来カーとは言え直ぐにでも市販されれば乗ってみたい車だ(販売価格は別として)。

しかし、自動車産業の現実は厳しい。

 昨年のリーマン・ショック以来、車の生産は大きく落ち込み、期間工や派遣社員の首切りが進み社会現象までになった。日本自動車工業会の乗用車生産台数を見ると、特に今年1月~5月にかけての生産台数は40万台でピーク時の約50%に落ち込んだ月もあるが、今年9月は72万台と前年同月比で20%減まで持ち直した。

 更に、運転免許保有者も2000年7314万人、2004年7825万人、2007年7991万人、2008年は8045万人と伸び悩んでいる。スズキの鈴木会長が、教習所での教習生が減ってきていることを考えると、自動車産業に往年の期待は出来ないとコメントしていたが、それが実体だ。

 生活環境も関係する。東京では駐車場を確保しようと思えば、月に2万円以上かかる。維持費のことを考えると、レンタ・カー、カーシェアリングなどの分野も伸びるだろう。

 今の車を大事に、長く乗るのがいろいろな面で一番良さそうだ。

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