2009年11月23日月曜日

理想的政治家でない小沢さんが追求する理想的政治




小沢さんと言えば、剛腕で最も自民党的で、「民主主義」とよく言うが、今の小沢民主党をみると、とてもではないが理想的な政治家とは言えない政治屋だ。しかし、その小沢さんが追求する理想的政治には、賛同すべき点があるのは皮肉なことだ。

 国会は多くの議案を審議しなければならない。しかし、いつも言われることは、国会の会期末を基準に法案審議の日程をさかのぼっていくと、何時までに委員会で議決し、衆院を通さなければならないという。日程がタイトになってくると強行採決になる。野党は、民主主義を否定するモノだと批判すれば、与党は委員会での審議に応じない野党の責任だと主張し合う。

 小沢さんは、これを改善し法案の審議を円滑にするために、「会期制や常任委員会の定例日を見直す」と言う。良いことではないか。しっかり審議してもらって、与野党問わず法案の内容を見直し、「より国民のため」の内容にして欲しいモノだ。

 国会の事務局を強化し、「野党の政策立案のための情報を与える」体制にすることを提案している。長い野党生活で身に染みた情報が入ってこない事への危惧、マニフェストなどを造るに当たって、より正確な行政の情報を得たいこともあるだろう。大幅な人員増に繋がって欲しくないが大切なことだと思う。

 「企業や、団体の政治献金廃止」も国民の政治に対する信を取り戻すためには、是非やって欲しい改革である。鳩山総理、小沢さんの政治資金に関わる疑惑は、政治不信を増大させるばかりだ。しかし、これで小沢さんの政治資金への疑惑を帳消にしたり、鳩山さんや小沢さんの「禊ぎ」が出来るわけではない。更に税金からの政党助成金を増やすようなこともやってもいけない。

 よい改革もあるが、一方で憲法の精神からしても疑問のある改革案もある。

 政策の立案は内閣に一元化しているのだからという理由で「議員立法を原則禁止」することは、どう見てもおかしい。確かに171回国会の議案提案状況を見ても、衆議院提案97件、成立17件で成立率17%、参議院は提案41件、成立1件で成立率2.4%、一方で内閣提案は91件で、成立71件、成立率78%で、圧倒的に内閣が提案する議案の方が高い成立率だ。これだけ見れば、議員立法を禁止しても、大して問題はなさそうだ。

 しかし、国会は国権の最高機関で唯一立法権がある(内閣は憲法に規定はないが、内閣法で認められている)。内閣の提出する議案は、社会の必要性、官の事業、外交など多義にわたり国民生活に必要な政策を提案しているが、今その是非が問われているように、我々の代表による十分なチェックが為されず、官僚の利権の温床になる要因でもある。

 議案が十分に審議されず、おまけに一括提案での採決となると、あの議案はよいが、この議案はダメだと言う場合の対応が不十分だ。

 国会議員の権利として、国民の要望に応えるべく個々の議員、あるいはグループによる議案提出の権利を棚上げすべきではない。

 「官僚の国会答弁禁止」はどうだろうか。小泉内閣の時の女性法務大臣のことを思い出す。専門用語も理解できず、答弁も儘ならず、「仕方ないと呆れかえった」大臣がいた。薬剤師会が推す議員で政治献金に応えた登用だった。決してあってはならないことだ。

 大臣はその政務に長けていて欲しいと思うが、省の政策の細かなところまで把握できるのだろうか。また、そんな人材が国会議員の中にいるのか。今までの予算委員会などの審議を見ていると、詳細は官僚の答弁に頼っていた。メデイアもそこのところをニュースとして取り上げていた。

 耳打ちされながらの答弁を続けるのか、政治主導といいながら自分の考えを述べて混乱を起こすのか。「野党の民主党議員はよく勉強して質問していたが、大臣は官僚に頼るしかなかった。政権交代の兆しは見えていた」と述懐したのは、与党時代予算委員長をした自民党の逢沢さんだ。民主党政権の閣僚に期待したい。

 そして小沢さんは、事あるごとに「日本の民主主義のため」と言う。最近の議席数に物を言わせた自民党まがいの強行採決を、「おかしいんじゃない」と止めた感覚は認めるが、今の民主党の小沢さんの立場を考えると、とてもではないがそうとは思えない。

 小沢さんは「政治は闘争だ。選挙に勝つことだ」と記者会見で言ったと記憶している。確かに選挙に勝って、「数は力」で政治を突き進める事は分からないでもないが、新人議員や比例区で勝ち残った議員を国会活動より地元での選挙活動を優先させるなんて、とんでもないことだ。

 国会議員は国民全体の代表者であって地元の代表者や一部の人の為の代表者ではない。国会でしっかり活動をやって欲しい。中央で政党ががんばれば選挙区でも政党が認められ、候補者も票を得ることが出来る(候補者自らの人気も必要だろうが)。

 政権交代が容易になる小選挙区制、政治家は金集めに窮せず、存分に活動できるようにしようとした政党助成金、国会内で党首が政策を論じ合う党首討論の導入など小沢さんの功績であると言うが、どうなんだろう。

 小選挙区制では、選挙区で落選した候補者が比例区で復活したり、政党の獲得票数の割合以上の議席を確保する結果になり、健全な2大政党の育成にはなっていないし、少数政党は埋没を避けて連立に走る。その結果マニフェストもギクシャクするモノになっているのが今の民主党政権だ。

 政党助成金も300億円を超える金額が税金から持って行かれ、党の活動資金の確か7割位を占めるらしい。しかし、鳩山さんや小沢さんのように政治資金に関わる疑惑、怪しい話に口利きする行為など後を絶たない。どうしてそんなに資金が必要なのか。

 党首討論はどうだろう。小沢さんが代表の時の党首討論では、さすがに小沢さんに軍配が上がった。小沢さんは良いことを言うのだが、自民党政権は政策に活かす事はなかった。主張が平行線では何をやっているのか分からない。鳩山さんになってから1回もやっていない。鳩山さんの政治資金問題を突かれるのを避けるためだと言うんであれば代表、総理の資格はない。

 小沢さんの改革に対する功績は認められる面もあるが、小沢さんに頼る危うさもある。

 イギリスの政治を参考にしているようだが、政治の歴史が違う。そのまま持ってきてもうまく行くはずがない。小沢さんがどんな政治を目指しているのかは、過去の出版物から推測するしかないようだが、口べたは別として記者会見などで十分に国民に説明すべきである。

 次の参議院選は、小沢改革の是非を問う選挙になってもよいのではないか。景気対策、雇用対策は必須の政治課題であるが、国会改革も重要課題である。小沢さんばかりに頼らず、国会議員自ら意識改革を!

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