2009年11月8日日曜日

いったんダムを造れば、「堆積土砂」という難題が




「万一の時の為の渇水・洪水対策」か「その為だけの必要性はない」か。

「ダムを作れば、下流の河川は魚もいなくなり、環境は代わり「川は死んでしまう」と言われる。しかしもう一つ処理しなければ機能を失ってしまう「堆積土砂」の問題が出てくる。
 
 新聞報道によると、00年の国土交通省の調査で、予想以上の早さで土砂が埋まっている実体が分かってきたという。中規模以上(総貯水量100万トン以上)の782ダムのうち44ダムが既に半分以上埋まっているという。最も多かったのは千頭ダムで97%、上位6位は電力ダムだ。

 堆積土砂は治水、河川環境だけでなく、対策費用は財政的に大きな問題になってきている。

 ダム寿命とされる100年間に貯まる土砂を見込み、それでもダムの機能が影響を受けないような総貯水量の20~40%程度に設計することが57年以降取り入れられた。その設定での45ダムを見ると18ダムが基準を上回っている。群馬の品木ダムは3.2倍だ。この品木ダムは、今問題になっている八ッ場ダム計画の上流にあり、草津温泉から流出する強酸性の温泉水を消石灰を使って中和する施設の下流に設置されている。

 土砂の埋まる速度も当初見込みで2~9倍で、ほとんど浚渫されていない状態らしい。

 56年に完成した佐久間ダムは総貯水量3億2000万トンであるが、34.7%が埋まり堆積量は日本最大らしい。浸食に弱い花崗岩などが山から崩れ流れ込んだのが原因だ。

 私の住んでいる近くでも、土砂が貯まっているが処理費の問題もあり、放置されているダムが2カ所ある。いずれも碓氷川水系だ。

 一つは、1959年完成の中木ダム(妙義湖)だ。妙義山中(?)に位置し、イワヒバリやオシドリの越冬地にもなっている。急峻な妙義山の間を流れる中木川をせき止めて作ったダムだが、土砂が流れ込み中州が出来ている。総貯水量160万m3。土砂堆積容量は25万m3であるが、最近の新聞報道では、すでに57万m3貯まっており堆積量は230%だという。見た目では、ダムの上流部のかなり広い範囲で堆積しているらしい。

 もう一つは霧積ダムだ。JR信越線横川駅から霧積温泉に行く途中にある。洪水調整が目的で、総貯水量250万m3,堆砂容量は40万m3であるが、既に堆積率は112%になったという。この時期はいつも貯水量は少ないのだろうが、最低水位から50cm上の水位だ。これから冬場にかけ雪が積もれば春先に水量は増えるだろうが、最近は降雪も少ない。十数年前から見ているが手前に堆積した土砂が水に隠れることはない。

 この堆積土砂の浚渫も簡単ではない。浚渫するのにトン当たり3万円かかると言われているが、棄てる場所も問題だ。堆積土砂は廃棄物であり汚泥に該当する。棄てる場所も最終処分場でなければ行けない。そうなるとトン当たり更に数万円かかる。

下部はヘドロにもなっている。落ち葉や枯れ木が自然界にある物質を吸着、ヘドロになり堆積すると濃縮された結果、高濃度のヒ素や重金属が蓄積している可能性もあり、それなりの処理が必要になると指摘する専門家もいる。

 一旦ダムを作れば、下流は河原砂漠、魚類の生息は大きく変わり、海岸線は後退し、消波ブロックが目立つ光景は当たり前のようになっている。作らなくて良いモノは作らない方が良いが、造ってしまったら今度は堆積土砂の処理という難題が待っている。

自然の成り立ちを破壊することは、あらゆる面で不都合が出てきている。

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