2009年11月26日木曜日

山、露頭、化石から日本誕生を知る下仁田ジオパーク







 いや正確には、まだ下仁田ジオパークではない。下仁田町役場(群馬県)の教育委員会によると来年正式に申請し、正会員になる予定だという。

 地質や地形など地球の持つ遺産を、市民が地球に親しみ地球を科学的に知るために活用する仕組みが世界ジオパークネットワークで、日本ではユネスコの支援で委員会が設立された(JGL 2009.No4)。我が国では洞爺湖・有珠山、糸魚川、島原半島が今年加入が認められた。

 ここ群馬県下仁田町は、街周辺には孤立しているように見える山、鏑川の河床の青色をした巨岩、崖に露出した断層が多く見られ地質学上、何やら意味のありそうな風景が広がっており、中央構造線の一部が露出している場所でもある。

 私が学生の頃は、中央構造線は、西南日本を日本海側と太平洋側に分ける大断層線で、諏訪湖付近に始まり、四国、九州まで伸びている。諏訪湖付近では、糸魚川―静岡構造線と交わっているのをよく目にする。中央構造線が諏訪湖の辺りで止まっているのだ。

 どうしてこんな変なことになっているのか。一つの原因は、中部日本以西の活断層を地形からチェックし、地図に書き込むと活断層分布図が出来るが、活断層の大部分がこの地域に密集し、横ずれ断層が主らしい。一方、東日本は蜜になってなく、逆断層なのだそうだ。

 ところが、その後、下仁田に中央構造線の一部の露出が確認され、関東地方を横切って、茨城県沖に伸びているという記事を見た。何時の頃だったのかと、県立自然史博物館で出版物を調べてみた。1990年辺りではまだ、見あたらないが、1995年頃になると、下仁田構造帯、諏訪湖から東側で中央構造線の記述が見受けられる。その頃なのだろうか。

 一度見てみようと、下仁田を訪れた。青岩公園を見て、下仁田地質見学会などを催している下仁田自然学校のある自然史館に行った。

 公園入り口の案内板に、下仁田地質は1953年藤本治義先生が「根なし山」の考えを発表、1960年から6年にわたり山下登先生が中心になって研究が行なわれ、興味深い地域になったそうだ。

 この下仁田町中を東西に大断層が通り、中央構造線の東の延長だという。

 青岩公園では、海底火山活動で出来た岩が、大規模な地殻変動で高圧を受けて変成岩(三波川結晶片岩)となり、変成作用で出来た緑泥岩を見ることが出来る。この三波川帯は、中央構造線の太平洋側の外帯だ。

 自然史館では、発掘した化石類や採取した石片など多くの標本が保管され、出版物も販売している。青倉の廃校になった小学校に移転するために整理中であった。資料の中から
下仁田地質見学案内の冊子(100円)を買った。この辺の事が詳しく出ている。この冊子には、諏訪湖からの中央構造線が下仁田を経て関東山地を抜け茨城県沖の太平洋に抜けるように記述されている。

 翌日、改めて他の場所を見るために再訪した。

 ポイントの確認に困って、町中で談笑している年配の方に「大北野―岩井断層を見たいのですが」と聞くと、「私が案内しましょう。丁度散歩中です」と案内をかって出てくださった。

 西牧川(鏑川)に架かる八知代橋から下流に淵が見える。鬼淵と言うらしいが、この右岩がその大断層が露出している箇所だ。右手上に善福寺がある。その墓地の下を断層が走っている。

 案内してくれた男性の家の墓所がある。この3月に墓に陥没が見つかったというのだ。墓地に近づくと、立派なモノだ。人間が入れる地下室があるのだが、そこで陥没が見つかったのだ。

 断層は動いている。糸魚川―静岡構造線の松本付近は、左ずれで、1000年当たり8m以上動いているという。中央構造線も大地震を起こしかねない活断層である(「地震と断層」 東京大学出版会 1995)。

 上流には、今でも沢山の貝の化石が採取出来るという。

 下仁田層からは、海に住んでいた貝の化石が40種類以上見つかっている。化石を調べることにより、その地層の堆積した時代を知る事が出来る。それによると、2300万年から1600万年前らしい(下仁田地質見学案内 下仁田自然学校 2005.2.18)。

 日本列島最古の岩石が形成されたのは、南半球の赤道~中緯度地域、ゴンドワナ大陸の一部だ(4億2000万年前)。海洋底の沈み込む場所、海溝で、深海の堆積物や海洋地殻の一部がはぎ取られ、陸側に付け加わる作用(付加作用)で日本列島の土台ができあがったのだ。日本らしい格好ができあがったのは約1億3000年前。日本海が拡大し始めたのが1700万年前だ(日本列島の誕生 平 岩波書店 1991)。

 日本誕生に興味を持ち、それを知ることは防災にも役立つ。今まで発生した巨大地震も、すでに分かっている活断層もさることながら、未知の断層からも発生しているのだ。
写真左 青岩と「根なし山」
写真中 川井の大断層 大北野ー岩井断層の一部が露呈 中央構造線の一部
写真右 下仁田構造線

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