2015年1月24日土曜日

「イスラム国」人質殺害予告;危険に飛び込む前に「止める勇気」も必要では

イスラム国の人質殺害予告
テレビ朝日 スクランブル 2015.1.21
20日のメデイアが報じる「イスラム国」人質殺害予告の映像は私たちには大きな衝撃だった。自ら紛争状態にあるシリア、イラクに入っていったとは言え、危険に飛び込む前に「止める勇気」も必要ではなかったかと疑問になる。

戦争状態の危険な地域に入っていって現状を報告しようとするフリー・ジャーナリストの後藤さん、自らのビジネスに実績を残そうとする湯川さん、それぞれ目的があっての行動だったのだろうが、「危険と対峙するとき、止める選択肢」もあったのではないか。それがプロの道だと思うのだが。

自ら選んだ行為なのだから「自己責任」が問われるところだ。後藤さんはビデオで自分の責任に言及していたが、政府も国民も腹の中ではそう思っても実際にはそうはいかないのだ。政府はあらゆる外交ルートを通じてコンタクトしようとしているがシリア大使館は一時閉鎖しヨルダンに移転しているのだから情報収集も簡単ではない。

こういう事態になるといろんな専門家、事情通がテレビに顔を出す。イスラム国にパイプがあると言うジャーナリスト、大学の元教授も記者会見で発言しているが「政府からの協力依頼はまだ来ていない」と不満顔だ。この2人は北大生事件で公安から家宅捜索を受けているのだから無理だろう。

ネット時代だから情報発信もネットだが、これでは交渉相手が掴みにくく政府の考えが相手に伝わっているかどうかの確認も不確かだ。それでもネット上でそれらしい形跡を追っかけているのだ。

湯川さんと後藤さんが人質になっていることは関係者の間では確認できていたようだが、後藤さんが人質になっていることがメデイアに出て来たのは初めてではないか。フリー・ジャーナリストとして戦争状態になっている国の現状を報告したり、出版したり幅広い活動をしている数少ないジャーナリストの一人らしい。

23日にはお母さんも記者会見で「後藤さんはイスラム国の敵ではない」という意味のメッセージを送っておられた。聞くところによると2週間前に子供さんが生まれたという。そんな状況の下で何故イスラム国に走ったのか。

友人である湯川さんを助けるとか、イスラム国の現状を取材するとか言っておられたそうだ。「家族より友人の方が大事なのか」と素朴な疑問が出てくるが、過酷な戦争を一緒に戦った戦友との絆は家族との絆以上に強いと言った戦争経験者がいたが、シリア、イラクの厳しい環境の元で一緒に活動した友人も同じことなのだろうか。

ところでこの人質殺害予告は安倍総理の中東訪問と関連が強いと言われている。安倍総理は17日のカイロで中東政策として今まで25億ドルの支援をしたが今度新たに22億ドルの支援をするという。そしてイスラム国がもたらす脅威を少なくするために難民、避難民の人道支援に約2億ドルの支援をすると発表した。

この人道支援をイスラム国が敵対行為を判断したようで、2人の身代金として約2億ドルを要求してきた。金額が符合するので安倍総理の中東訪問のタイミングを見た人質殺害予告とみられている。

メデイアの報道によると、海外のメデイアはこの人道支援を大きく報道してはいないようだ。日本は聲髙に主張するが、残念ながらその通りには受け止められていない。安倍総理のバラマキ外交が裏目に出た事件なのだ。

では「どう解決するのか」、判断も難しくなってきた。

政府が言うように「テロに屈せず」が基本だが、米英も全面的に支援すると言っている以上は身代金解決は遠いのではないか。身代金を支払えば国際世論を敵に回すことになる。米国も国際的イスラム国壊滅作戦に出て来た。

考えてみればどんな理由があれ、最後はビジネスなのだ。

おカネが入らなければ仕事を続けることは出来ない。他の人より差の付く結果を出そうとすれば無理をしてでも危険を顧みずに飛び込んでいくことになる。うまく行けば評価されるが、失敗したから今回のような人質殺害予告事件になったのではないか。

山登りでもよく言われる「撤退する勇気を持て」と同じで「危険と思ったら止める勇気」も必要だ。死んでしまえば何も出来なくなる。


兎に角、無事救出されることを祈るばかりだ。

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