2015年6月25日木曜日

日本銀行バブル:日銀の異次元の金融緩和は期待出来ない、1日も早く現実路線へ目を

読売新聞 2015.6.24
「日本銀行バブルだ」。2年にわたる日銀の異次元の金融緩和策には期待出来ない。日銀の課題は1日も早く現実路線に目を向けるべきだ。黒田総裁はピーターパン流に「1度2%物価安定目標を疑うとその達成は不可能になる」と言い、追加緩和に迫られて現状維持政策の悪循環を繰り返しているが、実体経済は株価、地価のバブル状態、緩やかな物価上昇など期待出来ない。

更にFRBは金融政策の正常化に向け利上げのタイミングを計っている。日銀も出口戦略を考えるときが来る。国債買入量の削減はどう影響するか。国債価格下落は長期金利の上昇をもたらすと警戒されているが、今の極低金利でないとやっていけない経済こそが異常だという。

朝日新聞(2015.6.24)の「中央銀行バブル」での元日銀副総裁の山口さんのインタビュー記事は「やっぱりそうなのか」と納得のいく内容だった。24日、株価は20868円で2年ぶりに高値を付けたが、これも異次元の金融緩和で市場に溢れたおカネが株や土地の購入に廻りバブルのような様相を呈している。だから「中央銀行バブル」とタイトルを付けたのだろう。

リフレ派である安倍政権や日銀はマネタリーベース増を強調し市場に溢れるほどのおカネを供給した。でも経済を評価するのに大事なのは「マネーストック」だと山口さんはいう。銀行が貸出量を増やし企業や家計が自由に使えるお金をどの程度増やしたかが重要なのだ。

ところが異次元の金融緩和を実施しマネタリーベースは2倍になったがマネーストックは年に2~3%という低い伸びだという。民間企業の投資意欲が低く、おカネの需要がないのが要因らしい。企業は内部資金で十分設備投資できたのだ。

この点は経済財政諮問会議で以前、麻生財務相が「銀行口座におカネがあるが、そこから外にお金が出ない。そこが問題なのだ」と指摘したことがある。その時民間議員も「その点もしっかり議論しましょう」と同調したが議論したという形跡はない。

では何故に日銀は異次元の金融緩和を続けるのかというと、資産価格が上がることは景気の下支えになることは確かだし、国債の買い入れ量が金融緩和のシンボルにもなっているからだ。

しかし、FRBの利上げのタイミング、ECBの量的緩和の開始、ギリシャ問題、賃金も上がり始めたが2%物価安定目標達成は無理。目標に拘れば追加緩和に迫られる。
そこで日銀は早く現実に目を向け目標を変えた方が良いと山口さんはアドバイスする。

アベノミクスも1930年代の高橋是清の円安、財政拡大、日銀の国債受け入れ政策そのもので何ら新鮮みはないが当初は効果があった。でも物価上昇による緩やかなインフレは今のところ失敗しているし、2年で2%の物価安定目標も達成無理で先送りされたが、エコノミストのほとんどは可能性がないとみている。

資産の価格は予想、期待感で上がるが、物価は賃金コスト、供給力のゆとりの要素が大きく予想や期待感だけでは動かないのだ。

日銀は2%物価安定目標達成までは量的緩和を継続する意向であるが、日銀の金融政策だけではどうしようもない事態になっている。

国債の買い入れ額も大きすぎる。今赤字国債は年37兆円だが、日銀は80兆円の追加緩和をやっている。2%は過大な目標設定でもある。赤字国債を削減するには財政健全化を確実なものにしなければならない。2020年度にPB黒字化を目指すが未だ9兆円を超える赤字が予想されている。経済財政諮問会議の提案で赤字額/GDPの比も経済指標に入ってきた。歳出改革で分子を減らし、経済成長で分母を大きくすると達成可能なのか。

又、銀行の貸し出しを増やすことだ。需要を喚起し企業の投資意欲を高める必要があるがそれには成長戦略が関連する。

「人口減少社会に向って構造改革をしっかりやれ」と言うことだろうが日銀が出来ることは量的緩和維持で市場におカネを流し続けるか、緩和縮小に舵切りするかだ。金融政策の正常化に向け出口戦略も議論すべきだ。ゼロ金利でないとやっていけない日本経済にこそ問題があるのだ。 

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