集団的自衛権行使で合憲の根拠に最高裁の砂川判決を引用したのは疑問(園部さん)、言い過ぎ(那須さん)と2人の元最高裁判事が朝日新聞のインタビューに答えた(朝日新聞2015.6.30)。2人とは園部逸夫さんと那須弘平さんだ。
安保関連法案に野党や憲法学者から「違憲」と追求され、安倍政権は集団的自衛権行使の合憲の根拠に最高裁の砂川判決を引用していたが、砂川判決は憲法9条の下で在日米軍を認めるかどうかの判断であって集団的自衛権の行使は争点になっていない(園部)というのが正しい見方だが、集団的自衛権の問題は無関係ではないと那須さんは言う。
それによると、判決にある裁判官の個別意見の中に集団的自衛権を意識した主張と理解出来る記述があるというのだ。
この記述を引用する格好で政府の見解が出来上がったのだ。恐らく内閣法制局が考えたのだろう。
那須さんは判決では集団的自衛権の行使について容認するとも否定するとも言っていない。これが判決の実体に一番近いというのだ。
これで大体経緯が分かってきた。
そして憲法解釈の変遷について、内閣法制局が憲法9条に関し精緻な解釈を積み重ねて来たが今回はその限度を越えている(園部)と言うし、72年の憲法解釈を変更しなければならない深刻な国際情勢が発生したというのは本当か、具体的に何かを政府は説明するべきだとも言う(那須)。
ここは先ほどの党首討論で、安倍さんが集団的自衛権の行使をホルムズ海峡の掃海を念頭に置いていることに対して岡田さんが「ホルムズ海峡で何か変わったことでもあったのか」と問うたが、安倍さんは直接説明することは避けた。岡田さんは「私の質問に答えていない」と批判すると安倍さんも「私の質問に答えていない」と応戦の仕合になった。
今までに80時間の国会審議を経たと言っても根本的なところは説明不足で安倍さんが「丁寧な説明」と言うが安倍さん自身の説明も自分の知識の範囲内での答弁だから要点を避けた説明にしかなっていない。
自民党の高村さんは「国民の命、生活を守るのは政治家であって憲法学者ではない」と言い、「違憲か合憲かの最終的判断は最高裁がする」と言って砂川判決を持ってきた。
しかし私は「最終的な判断は主権者である国民だ」ということをブログの記事の中で書いたが、園部さんも判決では第1次的には内閣と国会、最終的には主権者たる国民の政治判断に委ねられると判断しているという。
今回の2人の元最高裁判事のインタビュー記事は安倍政権が引用する砂川判決の根拠の是非をよく説明し、政権が無理強いする理由がよく分かった。
そして最後に、憲法はその時の国際情勢によって生かされている。国会議員は党派を超えて改憲の是非を議論し良心に従って安保政策と今後のあるべき憲法の姿を国民に問うべきだという(園部)。
安倍系保守が幅をきかせリベラルがダンマリを決め込む今の自民党に集団的自衛権行使を担わせることが出来るか。
0 件のコメント:
コメントを投稿