派遣社員を保護するという名目で労働者派遣法改正法案が衆院を通過したが、本当に派遣社員を保護出来るのか、そして日本経済再生に向けて整合性のある政策なのか。少子高齢化で労働力の不足が懸念される中で安定した仕事や年収300万円が確保でき若者が結婚し良質な労働力の再生産が可能になるのか。
今派遣労働者は127万人と言われ、派遣を続けないという人と正社員になりたいという人が半々だという。そういう両者の希望を折半したような法改正の内容だ。
法は派遣社員の受け入れ期間の制限を撤廃する規制緩和だ。従来の26業務区分を廃止し全ての派遣社員が同じ職場で働ける上限を3年とした。
3年後には企業が直接雇用で正社員にするか、新たな派遣先を紹介するか、派遣会社が無期限雇用するか。3年ごとに課を変えれば派遣社員の能力アップも期待出来るともいう。
更に派遣会社を許可制にして違反したときは事業許可を取り消すなど強化するとも言う。
改正案では、派遣社員にとっては待遇改善、正社員への道が開けるというが、問題は企業や派遣会社が法の趣旨をどう生かすかだが、メデイアの報道によるとすでに「3年でやとい止め」の動きが出ているという。若い人は良いが年配になると新しい職場は見つけにくいとの不安も出ている。経営の足かせにもなりかねない無期限雇用を派遣会社が本当にやるのか。
企業が業務の一部を派遣社員に任せることは他でもない固定費に大きなウェートをしめる人件費の削減だ。人件費を抑えることは企業にとっては利益になるが派遣社員の待遇の不安定は個人消費の減少、経済の成長に支障を来す。雇用が確保でき人件費が高騰すれば個人消費も伸び、経済成長が期待出来るが、それに逆行しないか。
ところで日本経済再生を掲げる安倍政権にとって労働者派遣法改正は整合性の取れた政策なのか。
経済界は長い間希望していた。テレビ画像で安倍さんと経団連会長が仲良く並んでゴルフに興ずる姿を見ると経済界と政権の癒着構造しか想像出来ない。経団連会長は満足の意を表するし、安倍さんは「世界で一番企業活動がしやすい国」を目指すという。
でも人件費削減で企業が儲かったとしてもデフレ感覚は変わらず内部留保に専念する一方、派遣社員は生活が苦しきなり個人消費は落ちる。
労働者が安心して働ける仕事、年収300万円の確保で若者が結婚し良質な労働力の再生産が出来る社会を築かなければ将来このツケは必ず企業に回ってくるのだ。
そういうビジョンに欠けていないかと思う派遣法改正案だ。
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