2015年7月26日日曜日

憲法学者にとって安保関連法案の「違憲」「合憲」表明は勇気の要ることなのか

憲法学者にとって安保関連法案の違憲か合憲かの表明は命がけなのか。参議院審議では安保関連法案が「違憲」か「合憲」かを議論すべきと思うがそう簡単にはいかないようだ。メデイアのアンケート調査を見ると憲法学者だって、その表明は勇気の要ることなのだ。

憲法学者にアンケート用紙を送り回答率は朝日新聞,東京新聞で約60%、憲法判例百選に名を連ねた憲法学者へのテレビ朝日の報道ステーションで75%だった。更にアンケートに答えた学者の中にも無記名を希望した学者も多いし40%ぐらいの憲法学者が立場をはっきりしていない。

自分が違憲派か合憲派かを表明すること自体が勇気の要ることなのか、あるいはレッテルを貼られることをいやがって「思想の自由」を主張しているのか。

うがった見方をするとアンケートに答えなかった憲法学者は「合憲」派なのか。今、違憲の声が大きい中で合憲派とみられるのを嫌っているのか。

アンケートに答えた憲法学者のうち「違憲」あるいは「違憲の疑い」と答えた学者は東京新聞で90%、朝日新聞、報道ステーションで95%、違憲理由としては「集団的自衛権行使は憲法を逸脱している」、「限定的でも改憲しないかぎり不可能」「立憲主義の危機」「閣議決定での変更に問題有り」としている。

反対に合憲の理由としては個別的か集団的かを憲法判断の基準にすることは自衛権保持の観点から意味はないというのだ。

そして法制の合憲性が学者の意見の多い少ないで決まるわけではないと言う。安保関連法案が憲法に違反するという意見は多数意見であり、合憲とする意見は少数意見と言うことか。

憲法の教科書では解釈で多数意見を通説、一方を少数意見と言われるが、この安保関連法案は「違憲」とするのが通説になるのか。95%の学者がそう考えているのだから通説なのだろう。

一方、安倍政権は合憲の判断根拠として1972年の「必要最小限認める」という政府見解に変えて最高裁の砂川判決を持ち出した。

ところが朝日新聞のアンケート調査では「砂川事件の最高裁判決が集団的自衛権行使を認めているかどうか」の設問に「認めている」0人、「認めていない」96人、「その他」24人で「判決は判断していない」というのだ。
この砂川判決には「どちらともとれる」表現もあるようだが「合憲の根拠にはならない」と見るべきだろう。2人の最高裁判事経験者が朝日新聞紙上で「違憲」「言い過ぎ」とコメントしていた。

更にこの最高裁の砂川判決は司法の独立を疑うものなのだ。

朝日新聞(2015.7.21)の社説「砂川判決 司法自ら歴史の検証を」という記事で、裁判当時の田中耕太郎最高裁長官が駐日米大使らと判決前に裁判の情報を伝えていたことの米政府の公電が公開されたのだ。

最高裁は一審の違憲判決の「世論を乱す少数意見」を避け、差し戻しの判決をしたのだ。高度に政治的な問題については司法は判断しないとしたのだ。

安保関連法案が成立した後、違憲訴訟を起こす動きもあるが最高裁はどう判断するか。

やはり最後は主権者たる国民が違憲かどうかを判断するのだ。そのためには日頃から憲法を語ることが必要だ。

また憲法学者も勇気を持って発言すべきだが、安保法案に大学から「NO」を発する京大発の声明が評判になっている(朝日新聞2015.7.18)。教育や経済など分野を超えた教員と学生が「自由と平和のための京大有志の会」を発足させ公表した声明が評判になっており他の大学にも波及しているという。

文科省が人文系の学部の縮小など改革を要求しているがそんな事をやったら日本の知は劣化を招くだけだ。

今、外交官や軍事評論家が中国、北朝鮮、中東などの世界の動きを解説して安保関連法案の必要性を問うているが憲法の解釈改憲は立憲主義に反し認めるわけにいかないのではないか。

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