NHK クローズアップ現代より 2015.7.1 |
ギリシャがデフォルト、ユーロ離脱か、緊縮政策を了承しEUの支援を受け続けるか。勝手すぎるギリシャの脅しに、ユーロ分断を回避しようとするEUが譲歩するか。6月30日のギリシャの返済不能は一応「延滞扱い」になったが、その影響が限定的だ(?)としても欧州ばかりでなく世界経済は重大な経済局面を経験することになる。
ギリシャ文明と観光のことしか知らないギリシャがどうしてこんなことになったのか。メデイアの報道から拾ってみた。
10年ほど前、放漫な国家財政運営からギリシャ国債は下落、金利が上昇し、高い利子を払わないと資金の調達ができなかったが2010年にユーロ圏に入ることで利子率が低くなり資金調達も楽になった。その楽になった分を返済に充てれば良かったのだがギリシャは更に無駄遣いして借金が膨らみその額は33兆円とも言われている。
前政権はIMF,EU等から支援を受ける代わりに要求された緊縮政策を採用したがギリシャ経済は疲弊、失業率は高まった。生活が苦しくなる一方の国民は「もう緊縮政策はごめんだ」と総選挙で「反緊縮政策」を訴える野党を支持、反緊縮のチプラス政権が発足した。
こんなギリシャ経済、財政の中でどうして反緊縮を訴える民意に乗っかるチプラス政権が出来たのか不思議だが、恐らく民意を背景にEU、IMFを説得すれば譲歩を受けることが可能とみたのだろう。
それが今回の5日の国民投票にも表れている。チプラス首相自ら「NO」に投票しろと訴えている。「ギリシャは降伏しないことを目の当たりにする」とも言う。
ユーロが提案する緊縮政策は最近のギリシャの経済状況を考慮し経済、財政の持続可能な軌道に乗せるように柔軟性のある政策だと言うが、ギリシャにしてみればEUのプログラムをやって来てもうまく行かず、貧困率は上昇しているというのだ。
新聞報道によれば、緊縮政策とは(1)年金支給年齢の引き上げ、(2)年金受給者の医療負担増(3)付加価値税の増が挙げられている。日本の財政再建策と同じで社会福祉費用の削減、増税が主流だ。
逆にギリシャは、緊縮政策は深刻な景気減退につながっている。負担できる人が負担しないで出来ない人に押しつけるという。
ユーロ圏内の豊かなドイツなどが貧しい国(ギリシャ)を助けないでギリシャに無理な緊縮政策を押しつけているとでも言いたいのだろう。
ドイツの強行姿勢は批判の的だが、ドイツ国民にしてみればドイツだって財政は厳しい。自らの放漫財政運営で借金を増やしたギリシャをどうして助けなければいけないのかと言うことになる。
6月30日のIMFへの15億ユーロの返済不能はデフォルトではなく「延滞」扱いとみられたようだ。新たな支援を受けることは出来ないがギリシャの信用は落ちた。
EUも借金の前倒し返済を見送り譲歩案をギリシャに提示したという。一方ギリシャも新しい提案を出した。
でも、2日のテレビニュースでEUは新提案を拒否したという。
ECBもギリシャ中央銀行へのカネの供給の上限を890億ユーロに見直したがギリシャは29日に年金支給のための営業を除いて国内銀行を閉鎖した。その結果、銀行へ殺到する年金受給者、預金者の写真が毎日メデイアの一面に載っている。
5日の国民投票で「緊縮財政にYESかNOか」の審判になる。与党はNO、野党はYES
を主張する。
世論調査ではYES が多いようだが緊縮財政を認めればユーロからの支援を受けることが出来るが生活の厳しさはあるだろう。でも資金がなくて銀行を閉鎖しなければならないような事態を体験すれば生活は厳しくても支援を受け続けることを選択するのではないかと思う。
逆に与党が言うようにNOに投票すると支援も打ち切られデフォルト、ユーロ離脱の道しかなくなるが、緊縮財政NOの民意を背景に交渉を進め譲歩を得る道も残されているのだろう。
とにかくEU,ユーロの分断だけは回避しようとする気持ちは強いが、では豊かな国が貧しい国を助ける域内の了承(構造改革)が得られるかどうかだ。
更にはこの判断は他の国にも影響する。
スペイン、アイルランドはEUの緊縮財政処方で立て直ししているが、イタリア、ポルトガルも問題をはらんでいる。ギリシャだけどうして優遇されるのかと言うことになるとスペイン、アイルランドも黙ってはいないだろう。
このギリシャ問題の世界経済への波及が注目されるが、ユーロ内のギリシャの経済規模はGDPで1.3%、危機の影響は限定的という専門家もいれば、現在の経済危機をより混迷へと導くという説もある。
経済学者の予測は余り当てにならないが、イタリア、スペインにどう波及するかだ。市場は一時上下動を繰り返したが、すでに織り込み済みで大きな変化はないと見る。
ギリシャがデフォルトすれば先進国で初めてのデフォルトだ。経済ニュースから目が離せない。
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