読売新聞 2015.10.17 |
企業の内部留保は最高の354兆円になるが、国内設備投資は伸びず地に足の付かない国内経済の実態が見えている。政府は世界の動きは借金してでも投資をやる。投資をしないのは経営者の判断の誤りで、第4次産業革命にむけリスクを伴っても設備、イノベーション、人材に迅速な投資をしなければ企業格差は広がるばかりと警告する。
丁度、三井不動産グループの大型マンションで杭打ち工事の施工不良でマンションに傾きが発生し、他のマンション建設にも波及しそうで社会問題化してきたが支持層に杭が達していなかったのが原因のようだが、今の日本経済の停滞もしっかりした経済地盤に足が付いていないことが要因の一つだ。
17日の各新聞には「官民対話」で政府は企業に設備投資を促すが、経済界には戸惑いもあると言う記事を掲げた。
失言が多いと言われている麻生財務相も以前、「財政出動から民間出動へ」と政府の財政政策より民間の設備投資行動が大事なこと主張していたように企業収益は最高でも国内投資が伸びないことは事ある毎に指摘されていたことだ。
16日に開催された経済財政諮問会議の大臣会見要旨を見ると、民間企業は人口減→需要伸びず→設備投資しても売れないと言う考えは間違っている。日本の設備は古い。中古の設備で最新の設備と戦っている現状をしっかり認識し生産性を上げろという。需要というものは古い需要ではなく、イノベーションで新しい需要を作るのだとも言う。
伸びない理由に賃上げ率も低いことを上げている。
GDPの伸び以上に賃上げ率が伸びないと労働分配率が低下しているので内部留保を冬のボーナスに反映させ、春闘ではGDPの伸びを踏まえた賃上げ率を明記すべきだという。又、投資拡大に積極的な企業の法人税を下げろとも言う。
経済財政諮問会議で今後議論を深めると言うが、いつも同じことを言っているような気がしてならない。以前の内需拡大に向けた前川レポート、21世紀版前川レポートでもいろんな提言はあったが、企業の儲けを家計に再分配することに経済界が反対したことで挫折したと聞いている。
同じ16日の「官民対話」についての甘利担当大臣の記者会見の要旨を見てみた。
政府筋はアベノミクスの成果で内部留保350兆円、現預金210兆円になっているが、今だからこそ大胆な投資をやって欲しいと訴える。
その記者会見の要旨によると、経済界の代表は企業が積極的に投資拡大に取り組むよう呼びかけを強化するという。生産性向上の投資としてIoT,ロボット、人工知能などを考えているようだ。投資が伸びていないと言っても海外へのM&A,海外での設備投資があると抗弁する。
逆に投資拡大で法人税実効税率を20%台へ早期に下げろとか規制改革が必要だと言うが、企業の設備投資では需要が大事で法人税への考慮は低いのだが・・。
日商はデフレマインドの解消が出来ていない。中小企業は人出不足対応の設備投資は増加しているという。課題としては安価な電力、税・社会保険料の公平な負担が上げられるというのだ。
経済同友会は内部留保の拡大、海外投資は増加しているが国内は伸び悩んでいる。次は「民間の国内投資の番だ」と正当論をいう。そのためには事業統合、新産業創造が必要で「新事業の創出」に取り組む姿勢を見せた。
経済同友会は経済界の団体の中でも特異な存在なのだろう。「余り政府に頼るな」と発言した代表もいる。
いつも悪いことをして経営が危なくなり日本経済を混乱させる原因になっている全銀協だが、企業の内部留保を如何に成長投資に向かわせるか。国内留保は増加しているが産業全体では不十分なところもあると指摘、リスクマネーの供給やコンサルテイング機能の強化に取り組んでいくという。
日銀が異次元の金融緩和で市場から国債などを買い入れるが、そのカネは日銀の当座預金に入り、そこから先にカネが回らないのが問題ではなかったのか。銀行がカネを貸したい企業は借りてくれず、カネを貸せという企業は銀行にとっては貸したくない企業なのだ。危ない企業に貸すよりも金利が比較的良い日銀の口座に預けていた方が安全というのではなかったのか。
両方の会議で安倍総理は、企業収益は最高でも投資の伸びは不十分、積極果敢な投資を企業に訴えた。
成果をアベノミクスに結びつけること自体に日本経済の実態が分かっていない感じがするが、毎度同じ議論が繰り返されていることを考えると2020年にGDP600兆円、消費者物価指数2%の達成はどうなるのか。
一説によると、CPIの算定基準が来年8月に改定させる。改定された品目で計測すると2%を超える可能性があるのか。GDP統計も基礎統計が整備されるらしいがそうすると600兆円達成出来るのか。
内需拡大だけは小手先のやり方では解決出来ない。
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