2015年10月15日木曜日

横浜市都筑区の大型マンション、杭打ち施工不良:業者は何故、不正行為に走ったのか

杭打ち施工不良で手すりが2cmずれる
TBSテレビ ひるおび 2015.10.15
横浜市都筑区で三井不動産グループが販売した大型マンションで、杭打ち工事に施工不良が見つかり渡り廊下の手すりが2cmズレる事態が発生している。原因究明は調査結果を待つしかないが、何故、施工業者は不正行為に走ったのか。同じ地面だから地盤も同じだろうと安易に考えボーリング調査を手抜きしたのか。

新聞報道を見ると、マンション住民が渡り廊下の手すりがずれていること、玄関ドアの開閉でキシム音がする異常を見つけたそうだ。

三井不動産グループは当初、3.11東北地方太平洋沖地震の影響で心配ないと応えたそうだ。

その後、交渉しているうちに杭打ち工事を請け負った旭化成建材(東京)が、データの使い回しをしていることが分かった。全52本の杭のうち28本を調べたところ6本が支持層に達してなく、他の2本が長さ不足だったという(読売新聞2015.10.15)。

他のメデイアでも3棟分で杭38本にデータの使い回しが見つかったという。

ニュースを伝える情報番組では「住んでいる人は不安でしょうね」というが一生に一度の大きな買い物であるマンションでの事態は不安が尽きないだろう。補修で終わるか、建て替えるか、解決までには時間がかかるだろう。私もマンションに住んでいるが管理組合の理事にとっては大変な交渉になる。

情報番組によると、段々詳しいことが分かってきた。このマンション建設は三井不動産レジデンシャルー三井住友建設-(下請け)日立ハイテクノロジーズー(下請け)旭化成建材の構図になっており使い回ししたデータは旭化成建材から三井住友建設に報告されていたらしい。商業施設建設と関連しているので孫請けまでしていたのだ。それぞれが儲けをピンはねして下請けに回すので最後の業者は厳しい見積もりになる。チョットした事で儲けはなくなる。

その孫請けの旭化成建材の作業にはベテランのチームリーダーが付いていたようだが、必死に打っても支持地盤に届かないデータ取得ミスや機材の操作ミスもあってつじつま合わせのデータを提出したという。

同じ地面だし地盤も同じだろうと安易に考えて他の場所のデータを使い回ししたと言うことか。支持地盤まで届かなければ届くまでやってみるのが常識だし、あんな簡単そうな機材に操作ミスがあるのか。

私も土木工事には興味があり、現役の時は最終処分場建設や排水の嫌気性処理設備の建設に携わった。いずれも土木工事が重要なのだ。

嫌気性処理設備は大きな反応槽を海寄りの軟弱地盤に建てるためにボーリング調査、杭打ち工事は最重要工事になる。

ボーリング結果からは40m程下に支持地盤が見つかった。業者は15m程度の杭を相当数打ち込み地盤の摩擦で支持する方法を提案してきたが、本数が多いために杭と杭の間隔が狭く、これでは地盤の摩擦を利用する支持杭は期待出来ないと判断した。

水を流すために不等沈下は絶対に避けなければならないのだ。

対案で太く長さ15m×3本の杭を溶接しながら支持地盤まで数十本打ち込むことにした。これほどの工事はやったことがないと言うことで杭打ち機も地域外から持ってきた。15mの杭を3本溶接しながら打ち込んだ。業者はこんな工事はそんなにはないと言っていた。

民間企業の工事費はどこでもコストダウンが至上命令だが、本社も良く認めたものだ。上司の説得が聞いたのか、本社の連中は分からなかったので何も言わなかったのか。

何でもそうだが現場の技術屋の判断は重要だ。その時、最高の技術で最善を尽くす。万一、後に不具合が出て来ても「不可抗力」と言われるまでにしなければならない。

構築物で不正行為が発覚する度に現場の技術屋はどういう考えで仕事をしていたのか疑問に思うことが多い。手抜きで浮いた費用と補修や建て替えで必要な費用を比較すると計り知れない損失になるのだ。


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