国家財政は危機的状態だ。それでも法人税下げを要求する経済界の魂胆は何なのか。今は国の借金1060兆円でGDPの2倍だが、2020年に健全化を達成出来ても2060年には国の借金がGDPの5倍になるという。国や国民の生活はどうなっても企業が存続できれば良いとでも思っているのか。
国の財政が破綻すればIMFの管理下に置かれ緊縮政策が要求される。国の経済は疲弊し企業活動だってままならないのは目に見えている。
それでも経済界は実効税率が他国に較べて高く国際競争力がないと言って税率下げを要求、安倍政権は現行35%(東京)から段階的に25%まで下げることを実施中だ。
減税すれば海外から企業を国内に呼び込むことも出来、海外に出て行った企業の生産設備も呼び戻すことも出来、雇用の維持、経済成長に期待出来ると考えても不思議ではない。
ところが実際は違うのだ。
クルーグマン教授はそのコラム、クルーグマンコラムで減税と経済成長に相関関係はないという(朝日新聞2015.10.9)。米国では大統領選を控え、候補者全員が富裕層向けに大幅減税を実施し財政赤字を膨らまそうとしていると指摘、 過去の大統領の政策から減税しても景気回復は遅れ壊滅的経済破綻がやって来たことや、増税しても活況が続いた例を上げ、税率と経済成長との相関関係は全くなく、減税への執着にはまともな経済的論拠はないと言う。
我が国の世界的にも高いと言われている法人税を見ても財務省の主張もデタラメだという見方がある。
しかし、実際に企業が負担している税負担には、様々な「大企業優遇税制」が適用され実際の税負担は10%も低いと言われているのだ。たとえば研究開発減税があって研究開発の割合の高い企業は結構優遇される結果になっているようだ。
そこでよく言われているのが、大企業の実際の法人税負担率は既に12.9~34.6%と幅があるが、現行の実効税率より低く「そんなに高くない」というのが実情だ。
それでも「下げろ」と言うことは、企業の我が儘としか言いようがない。
法人税が高いから生産拠点を海外に移しているのではないことは経済産業省の「公的負担と企業行動に関するアンケート調査」からも分かる。海外移転の理由の大きいのは、1位労働コスト、2位海外市場の将来性、3位取引先の海外移転で税・社会保険料負担は第5位だ。
おまけに法人実効税率が30%程度まで引き下げられても国内回帰を検討することはない(69.5%)と言われている。今、自動車産業が生産設備の国内移転を進めているのは円安への対応なのだ。
このところの景況感で税収も伸びているようだが、だからといって経営に大きく左右されない法人税下げで税収減を招き、国家財政破綻に導く経済政策を要求していいのか。
企業は儲けを税、社会保険料の負担で国民生活の安全、安心に寄与し、年間付加価値の60%にあたるものを給与として4540万人の雇用維持、創出に当てている。2013年度の実績を見ると、年間付加価値276.3兆円、給与として170.5兆円、税、社会保険料負担に48.3兆円を当てている。営業利益として21.4兆円が設備投資、研究開発投資の原資になっているのだ。
国民生活をより一層豊かにし、付加価値を一層高めるために自ら主体的リスクを取り投資や事業拡大し、雇用や賃金の拡大に努めることが企業に求められる(「豊かで活力ある日本の再生」 Kendanren 2015.1.1)。
政府の政策頼みでは二進も三進も行かない。麻生財務相が言うように「今度は民間出動」なのだ。
今年のノーベル経済学賞にプリンストン大のデイートン先生が選ばれた。消費と貧困、福祉の分析が受賞理由らしい。貧困を減らし、豊かな生活を実現する公共政策に消費行動の理解が必要と主張している。早速購読することにした。
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