最近10年、CO2濃度は増加しているが地球の平均気温の 観測値は横ばいで「ハイエスタ」と呼ばれる現象が起きて いるが、後10年で上昇に転じるとみられている。 毎日新聞デジタル 2014.10.3 |
パリでのCOP21に向けた事務レベル交渉が始まったという。又、COPの時期がやって来たのかという感じだ。科学的検証が曖昧なままエゴが罷り通る会議なのだ。2009年のCOP15で京都議定書の続く枠組みを構築することが出来ていないことが繰り返し報じられている。先進国同士あるいは先進国vs途上国のEGO 丸出しでは進展はしない。
新聞報道によると、今回は事務レベルの交渉で主要排出国の排出目標が出揃い、また全締約国の9割をしめる国の参加で交渉も進むのではないかと考えられているようだが、問題は排出削減の目標の考え方が統一されず、各国が独自の考えで設定しているために成果に対しては疑問が残るらしい。
又、大目標の気温上昇を2度か1.5度未満に抑える事だが、NGOクライメイト・アクション・トラッカーは削減目標を足し算しても気温上昇2℃未満の目標達成は不可能と言うし(TokyoWeb2015.9.3)、万一達成出来ても気温は上がり続けると言う研究報告も目にした。それぞれ研究者がコンピューター・シミュレーションした結果だろうが、今後の温室効果ガス排出量と気温上昇の関係もあるモデルに基づいたシミュレーションの結果なのだ。不確実性は多すぎる。
世界の排出量の4%をしめる日本が30年度までに26%の削減をやって世界の気温がどのくらい下がるのか。知りたいところだが誰も応えない。
我が国の削減目標に世界はがっかりしたそうだが、原子力発電への対応など不確実なところもあり仕方ない目標なのではないかと思うが、環境NGOシャーマンウォッチによると地球温暖化対策ランキングでは61位中53位、非常に乏しいと言う評価だ(朝日デジタル2014.12.10)。
今世界の平均気温は14.57℃だが、排出量削減が進まなかったら日本の平均気温は20世紀末に較べて今世紀末には4.4度上がるという。洪水を起こす可能性のある大雨は10~30%増加する。
政府は国家戦略として「適応計画」を策定し、今後10年間で取り組む施策でコメや野菜に新品種、洪水対策、農作業用ロボット開発、雨水の利用策などが盛り込まれた。
しかし、この地球温暖化対策も政治でこれと言っためぼしい政策が見当たらなかったときに政治家が飛びついたテーマで、科学者による十分な科学的検証を後回しにして政治マターとなったことで、その後の科学的混乱を起こす要因になった。
一番の問題は、気温上昇はCO2など温室効果ガスによる人為説か太陽活動など自然現象に由来する自然変動説かだが、人為説が優位に立っている。
ところが、その人為説にも欠点がある。
GISSによると世界気温はここ100年間で0.5~0.7℃の変動があったが、1940年~1970年ではCO2排出量が10億トンから40億トンに増えCO2濃度は310~325ppmになったが気温は0.2℃下がった例があるという(環境問題のウソ 池田 ちくまプリマ-新書 2006.3)。
確かにこのとき私は大学生で京都にいたが寒かった。これからは寒冷化に向かい就職は繊維会社が有利と言われていた。
そして今まで130年間で0.85度上昇していたが、ここ10年ほどは0.03度の上昇でほとんど横ばいなのだ。一方CO2濃度の上昇は年1.5ppmだったのが2.1ppmと増加している。排出量は増えているのに平均気温は横ばいで鈍っている。「ハイエイタス」という現象らしい。原因は南太平洋で深海まで熱が蓄積しているためだったが、研究者は今後10年程度で温暖化はぶり返すと見ている(毎日新聞デジタル 2014.10.3)。
自然変動説を唱える側に立つと「それ見たことか」と言うことになるが、またぶり返すとなると考えを異にすることになる。
池田先生は更に、 地球の温度は入ってくるエネルギーと出て行くエネルギーのバランスで決まるが、地表から出て行く熱の95%以上は既に存在する温室効果ガスでブロックされ地表の方向に再放射されており、あと数%で飽和に達する。後どんなに増えてもそれ以上は温暖化しない。40℃なんてことはないのだという(同上)。
さて、素直に信じられるか。
一方、自然変動説として太陽活動など自然現象が主因と主張する意見も多い。アラスカ大の赤祖父先生がその代表だろう。その赤祖父先生だってCO2など温室効果ガスも否定はしていない。先生によると、1/6は温室効果ガス。5/6が自然変動に起因するという。
これに対して人為説派は、CO2排出量と気温の観測値を見た場合、自然現象だけでは説明できないが、CO2等の温室効果ガスの条件を加味すると観測値に合うのだという。
どういうモデルにどういう条件をインプットしたらそうなったのかを説明する報文を見たことがない。専門家は皆、スーパーコンピューターで検証した結果だと言うばかりで、そのスーパーコンピューターは日本の地球シミュレーターだという。
人為説vs自然変動説の論争が過去にはあったが、お互いの主張を繰り返すだけで妥協点はない。
科学月刊誌「エネルギー・資源」が2009年新春号でe-mail討論「地球温暖化:その科学的真実を問う」を掲載している(2008年10~11月に実施された)。赤祖父、伊藤、江守、草野、丸山の5人の専門家がそれぞれの意見を戦わせた。
資料をダウンロードして読んでみたが各自がそれぞれ主張する根拠になる資料を提示してのやり取り、また同じ資料でもデータの読み方の違いで議論は平行線をたどり妥協点も見いだせない状況だったようだ。
後に日本学術会議も同じような討論を開催したが、結果は同じだったようだ。
どちらの主張が正しいのかは誰にもわからない。ただ今は人為説を信じて地球温暖化対策が進んでいるようだ。2~3兆円とも言われている莫大な対策費を拠出していいのか。
地球温暖化の要因が自然変動となると仕方ないと諦めも付くが、人為説になるとエゴ丸出しになる。いままでのCOPで進展しなかった理由に、先進国と途上国の利権争い、カネのぶんどり合戦があるし、全締約国参加を訴えてアメリカが参加しなかったこと、排出量世界1位の中国が経済成長の足かせ回避のために「発展途上の大国」という立場を主張し削減に積極的でなかったことなどが上げられるのではないか。そして、「地球温暖化ムラ」の利権者の動きもあった。
COPがまとまりを欠いているということは、かえって莫大な地球温暖化対策費の無駄遣いを回避することに役立っているのではないか。
そう考えるとCOPのもたつきも無益ではない。
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2014.3.26掲載
IPCC第5次報告:政治問題化先行で科学的検証を欠き表現に苦しむか
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