2010年11月18日木曜日

中国漁船長釈放:指揮権発動は、本当に無かったのか


10月24日の突然の那覇地検による中国漁船長の釈放は、誰でも政治的決着と見ていたし、17日の参院予算委員会で野党が「中国との密約」説を糾したが、政府側はきっぱり否定した。しかし、思い返すと指揮権発動に準ずる行為があったことが想像できる。

18日の参院予算委員会の国会中継を見ていた。全部通して見ていたわけではないが、自民党の林さんが、柳田法務大臣を相手に指揮権の質問をしていた。それは「どういう場合に指揮権を発動するか」に関しての質疑だったと思う。

尖閣ビデオの公開の是非、中国政府との密約の有無、中国漁船長の釈放問題などが論戦のテーマになるのは当然としても、政府側の歯切れの悪さは否めない。裏に何かあったのではと疑いたくなる。国会の論戦は、菅政権にとっては厳しい。

指揮権発動があったかどうか、当時の新聞報道を読み返してみた。

中国漁船による、領海侵犯、海保の艦船との衝突事件は10月7日に発生、公務執行妨害罪で船長が逮捕された。

この時、「国内法で粛々と処理する」と関係者は大見得を切った。しかし、ここから中国側の恫喝が始まった。4人の日本人会社員の拘束、レアアースの輸出制限、APEC開催など切られるカードが日本に不利なモノだ。

10月22日、菅総理は「超法規的措置」を探ったようだ。過去にも人質解放に向かってこのようは措置が執られたことはあるが、中国漁船の衝突事件、公務執行妨害罪に対して超法規的措置を探るなんておかしい。

しかし、仙石さん、前原さんが動いたようだ。

同じ頃、米国でクリント国務長官と会談していた前原外相は、中国との関係を心配するクリントン国務長官に「もうすぐ解決する」と自信を見せたという。

そして、10月24日、逮捕拘置中の中国漁船船長を那覇地検は処分保留のまま釈放を発表した。「我が国国民への影響や今後の日中関係も考慮すると身柄を拘束したまま捜査を続けることは相当でない」とコメントしたことはまだ忘れていない。

柳田法務大臣は、早々と「指揮権発動はなかった」と会見した。疑惑を早めに打ち消そうと企んだのか。

那覇地検は、福岡高検、最高検と協力し判断したという。検察官一体の原則があるから当たり前の話だ。

しかし、尖閣諸島が日本領土であることを考えると、国内法で起訴すべきであり、不起訴は尖閣諸島を手放したことになる。誰だって今回の措置は間違っていると思うはずだ。

中国との関係、APECを成功裏に終わらせたいとする菅政権にとっては、中国の機嫌を損ねることは避けたようだ。

「法と証拠で処理することを旨とする」検察にとって、「今後の日中関係を考慮して」とは、政治的に判断せざるを得なかったことだ。

その政治的判断とは、直接に法務大臣が検事総長に発動する指揮権ではなく、それに準じた形で行なわれたのではないだろうか。

官邸の誰かが、最高検の誰かに、「超法規的決着」の可能性を臭わせばいいことだ。菅総理や仙石官房長官が直接法務大臣に言ったり、法務大臣が検事総長に言うと政治生命が終わることぐらい知っているはずだ。

菅政権の意を汲んで検察が釈放を判断したのではないか。それが次席検事のコメントに現れている。

検察官には一体の原則があるが、行政組織の一部である。指揮権発動に準じた動きがあったと見るべきだろう。

官政権の寿命も長くはない。国会審議を見てても閣僚の稚拙さには呆れるばかりだ。
写真:中国人船長の釈放を発表する那覇地検次席検事 2010.10.24テレビニュースより

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