2016年6月1日水曜日

日本経済学会はどう見る:「アベノミクスは失敗」か、「アベノミクスは間違っていない」か

日本経済学会HP
アベノミクスは経済ではないが、
学問的にはどうなのか、評価は
今政局は「アベノミクスは失敗」か、「間違っていない」かの判断で大きく変わってくるが、日本経済学会はどう見ているのか。理論的、実証的考察をやっているのか。

先の伊勢志摩サミットでは、沈滞する世界経済をけん引すべく機動的財政出動に合意したが、安倍総理は今の世界経済がリーマンショック時の経済に似て危機的状況にあると主張しG7版「3本の矢」による政策の総動員を訴えた。

コモデイティ-価格を比べた時、リーマンショック時と今とでそれぞれ5.5%も下落しており再び危機的状況にあるというのだ。これにはドイツ、イギリス、アメリカが異論を唱えた。

後で分かったことだが、このデータは誰にも相談せず経済産業省が作製し安倍総理が唐突にサミットで提示したのだ。

日本が消費税10%へ増税する根拠として、リーマンショックや大震災がなかった場合を安倍総理は想定していた。増税したくない安倍総理は今がリーマンショック時と同じ状況である事をG7首脳が同意すればお墨付きをえたことになり、堂々と増税回避を提案する事が出来たはずなのだ。

ところが異論も出てお墨付きは得られなかったが、記者会見では世界経済は危機的状況のリスクを抱えていると発表し、併せて「アベノミクスは間違っていない」とエンジンフル回転するとまで言い出した。

会期末の昨日、野党は「アベノミクス失敗」を理由に内閣不信任案を出したが、与党の多数で否決された。

アベノミクスの評価が分かれているところだが、これが政局にも影響するのだ。個々の経済学者はアベノミクスをそれぞれの検証し発表するが二分している。

ところで日本経済学会はアベノミクスをどう理論的に実証しているのか。そう思って日本経済学会のHPを開いてみたが、学会の春季、秋季大会でも議論された形跡はない。

唯、日本法制学会が研究補助事業として学術的観点からアベノミクスを理論的、実証的に考察した論文を募集していることをHPで会員に知らせている。

思えばアベノミクスというが経済学ではなく、金融、経済政策の寄せ集めで経済学者が真面目に論じる価値はないとみているのだろう。当然だろう。安倍さんの経済学だ。世界的に通用する物ではない。

思い出すのはレーガノミクスだ。俳優のレーガンさんが大統領になったのだから驚いた。南カリフォルニア大のラファー教授が提案したラファー曲線から減税すれば税収増になると言うのだが、失敗に終わった。

そんな事を考えるとアベノミクスは理論的根拠はないのだから日本経済学会が正式に議論、論評する物ではないのだろう。そして過大評価すべきでは無い。
自民党幹事長をやった中川さんが名付けただけのことなのだ。

ところで、学会のHPから2015年度石川賞を受賞した一橋大の塩路教授の論文の受賞理由に面白い内容があった。

為替レートが円安になり円高が是正され輸出企業は儲けを出しているが輸出数量の増加が見られない現象を度々指摘されていたが、塩路教授は、円安にもかかわらず日本の輸出企業が現地価格を引き下げる行動をほとんど取っていないからだという。

何のことはない。企業は円換算での儲けを出していただけなのだ。

真面目な経済学者にとってはアベノミクスなど目にないのだろう。

又、思い出すのはエリザベス女王が「何故、経済学者はリーマンショックの危機が起きること分からなかったのか」と経済学者に質問されたことがある。経済学者が即答できなかったが、後日相談した結果「金融市場や世界経済について多くの警告はあったが、誰も全体を見ていなかった」と報告したという(朝日新聞2012.10.11 危機を読めない経済学)。

アベノミクスも日本経済全体を見渡してどう評価するか。学会の仕事ではないか。 

関連記事
2012.10.12掲載
経済学は社会に役立っているか
yamotojapan.blogspot.jp/2012/10/blog-post_12.html

0 件のコメント: