2009年12月4日金曜日

ビジョンなき政権交代だったのか


鳩山民主党政権の右往左往ばかりが目立った、短い臨時国会が4日閉会した。
 私達は、「何か政治が変わるんではないか」と期待して、民主党政権を選択した。しかし、明けてみれば、ビジョンを欠く政権だったのではないかと疑う。野党時代は、自民党政権の政策に、何でも反対をしておけばよかったが、実際に政権の座に就くと、現実と前政権からの継続性で大きく悩む結果になった。

 おまけに、議席数で多数を確保するための国民新党、社民党と連立を組んだ為に、郵政民営化見直しや普天間基地移転問題で振り回される結果になり、さらに社民党のお家の事情から連立離脱の可能性まで出てきた。

 「ねじれ国会」が本当に悪いのかというと、決してそんなことはない。しっかり国会で審議し、それでも妥協点が見いだされない場合は、多数の議席数を使っての強行採決/再議決も許されると思うが、十分な審議が為されないままでの議席数頼みの議決は大いに問題がある。「ねじれ国会」は政権党の暴走の歯止めでもあるのだ。

そもそも国民新党や社民党のマニフェスト(公約)は、多数の国民の信を得ているのか。安易な連立は公約違反になりかねない。

「政治を根本から見直す」姿勢は評価できる。

 確かに「事業仕分け」は、事業費の半分以上が人件費であったり、ピンハネ法人の為に事業であったり、官僚の説明しにくい事業はムダな事業と思えた。問題はあるだろうが、公開で実施したことは国民から評価されている。しかし、100人の議員を霞ヶ関に送り込んで政治主導を目指したが、政務三役が認めた事業が「廃止」「見直し」の判定を受けることもあり、政治主導の難しさが伺える。

 子ども手当などは団体を通さない直接支給と言うことで、税のあり方を変えるものだろうが、国民の60%は反対している政策ある。少子化対策なのか、内需拡大策なのか、不透明な気がする。バラマキ予算であるのなら自民党政権と変わらない。

 税金の無駄づかい削減のための公共事業の見直し、高速道の無料化など耳さわりのよいことに違いないが、マニフェスト実現に向けた財源は十分にあるのであれば、はっきり示すべきである。

 今国会での民主党政権をみると、国民に示すビジョンを持っているのかと疑うこともある。

 雇用・経済対策では、「デフレ宣言」はしたものの、経済対策は示さず、日銀に放り投げの感もする。国際舞台で内需拡大による経済危機対策をぶち上げたのは良いが、どんな経済社会を描いているのか。是非知りたいところである。

 そして今必要なのは、「財政出動」か、「財政赤字削減」か。経済学者でも意見が分かれている。需給ギャップが40兆円とも言われているのだから、ここは思い切って財政出動すべきだという意見が強い。しかし、日本はGDPの170%を越える債務を抱えた、先進国一の借金国なのだ。財政赤字の積み上げは、国民や投資家の信頼を損ねる。

 円高、株安経済をどう乗り切るのか。財務相は円高容認発言をし、批判されると「異常事態」と認め為替介入の可能性も示唆した。事務次官や官僚に代わって大臣が会見するのか良いが、軽いコメントは禁物だ。

 地球温暖化対策では、他国に突出して25%削減を提案し、米国、中国、インドの削減目標を引き出したのはよいが、相当厳しい目標だ。改めて別メンバーで家計への負担を試算すると言うが、政権寄りの結果が出るのは目に見えている。

 さらには、これから政局になりそうな普天間基地移設問題では、国外、県外を提案しているが、具体的にはどこなのか。何も言っていない。今更「検討しろ」ではないだろう。
国内では社民党に配慮し、対外的には米国の不信を買う安全保障に未来はない。このままでは有事の際に本当に米国は助けてくれるのか。

 オバマ大統領は、東京演説で「日本を守ることに変わりはない」と特に言及したことは、米国の日本軽視を打ち消したのだろう。対等な立場での日米関係の維持は簡単にはいかない。

 後1ヶ月で通常国会が開会する。民主党政権は、国民にビジョンを示すべきである。ビジョンなき国会議論は政治ごっこだ。そんなことをやっている時ではない。

 政治資金規正法での疑惑で鳩山さんは「辞任すべきだ」と思うが、国民は、企業献金疑惑に比べ悪質性が少ないと言うことで鳩山さんに鷹揚な反応を示している。だとすれば、なおさら国民に応えるべきである。

 何をどう我慢すれば、どんな社会が見えてくるのか。
 自民党も押しつぶされることなく、しっかりしたビジョンを示せないのか。

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