2012年10月30日火曜日

地震予知:それでも「いつ」「どこで」「大きさは」まで期待するか

日本地震学会特別シンポジウムで
信憑性にある前兆現象は一つも
見つかっていないと地震予知を否定す
るロバート・ゲラー教授
2012.10.16NHKニュースウォッチ9

それでも「いつ」「どこで」「大きさ」までの条件を満足する地震予知を期待するか。大きな地震が起きるたびに思うことがある。「どうして発生確率の低いところで起きたのか」、前兆について何も言われていなかったが、「後で検証してみると予兆があった」という事例が目につく。では何故、そこをズッと研究していなかったのかということになる。

地震研究者は他に研究をやっていて、巨大地震が発生したので、改めて震源に関連するデータを検証していたら以前からの兆候があったことが分かるのだ。それでは遅い事になる。

多額の国家予算を地震予知に投入しているにもかかわらず、何故予知できないのかと言うことになる。

3.11東北地方太平洋沖地震が予知できなかった反省から、今月、函館で開催された2012年度日本地震学会でも「地震研究の歩みと今後」というサブタイトルの「地震予知」に関する特別シンポジウムが開催された。東大のゲラー教授は「今まで一つも信憑性のある前兆は何も見つかっていない」と言うが、「地震の起きる時期の範囲を狭めることは出来る」と予知研究の重要性を主張する意見もあったようだ(2012.10.16 地震予知50年 NHKニュースウォッチ9)。

地震列島 ここが心配
朝日新聞2001.5.16
阪神大震災をきっかけに出来た政府の地震調査研究推進本部が各地で地震が起きる危険度を確立で示し警告している(地震列島 ここが心配 朝日新聞2001.5.16)。さらに詳しい記事として「大地震 足元にリスク」では30年以内に大地震が起きる確率も記している(朝日新聞 2012.1.17)。

これらを見ても東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は載っていない。ただ、宮城県沖地震M7.5~8.0、20年後の発生確率81%、30年後98%でいつ起きても不思議ではないと考えられており、これが動いたのかと思ったが、発生直後に専門家らは震源域が異なるため別の地震と指摘していた。

完全に見落としていたのだが、歴史を遙かにさかのぼれば800年代に貞観地震があったのだ。

一番の失敗は、わずか400年の地震の記録で「似たような地震が繰り返す」と考えたことにあったそうだ。しかし、発生間隔は海溝型で数十年~2,300年、内陸型では1000年から数万年で、鳥取県西部地震、新潟県中部地震、能登半島など内陸型巨大地震の断層は、そもそも国の調査の対象外だったのだ。

予測も完全なモノではなく、大事なことは目安であって過信しないことだと地震研究者は言う。

一方で、地震学とは関係ない(?)が予知の研究も進んでいる。チョッと上げてみると、大気中のイオン濃度、FM電波の異常、震源域の上空での動かない地震雲、研究者らで認められている地下水位の異常、動物の異常行動、周辺で多発する微震、ラドン濃度変化などがある。

それぞれの研究者が自信を持って場所、時期、規模を上げて警告するが地震は起きず、メデイアから離れていった予知技術もある(大気中のイオン濃度、FM電波の異常など)。

また、京大地震研が常時観測している地下水位の上昇が止まったと言うことで、地震発生(震源域は思い出せない)の恐れがあり学会やHPでデータを示し警告したが巨大地震の発生はなく、いつの間にかHPからデータも削除された。

確か高槻、京都、大津あたりの交通の要所であり、一旦発生すると多大な被害が発生すると言うことで事前警告したモノだ。巨大地震の発生がなくて良かったと思う一方で、予知の難しさを教えてくれた。

地震専門家の意見が重大視された判決が出た。10月にイタリアのラクイラ地方でM6.3の地震が発生し300人あまりが犠牲になった事案で、安全宣言を出した地震専門家らが禁固6年の有罪判決を受けた。新聞報道によると微震が続き、ラドン濃度も上がったと言うことで警告を発する地震学者もいたそうだ。

この件について、日本地震学会がHPで会長声明を出した。防災行政における研究者の意見表明が刑事責任をもたらす恐れがあるとすれば、研究者は自由にモノが言えなくなり、科学的根拠を欠く意見を表明することになりかねない事を懸念し、結果として刑事責任を問われる事があってはならないと主張している。

地震情報の発信は受け手側がどう受け止めるかだ。当たらずとも参考にし、事前の準備に事欠かないことが必要か。

それにしてもメデイアで巨大地震、富士山噴火の発生を警告する記事が目立つ。日本列島が活発化する時期に入ったことは確かだが、これらの情報をどう受け止めるか。

日本地震学会のFAQ2-10。「Web・雑誌による地震予知情報の信頼性」が載っている。

それによると判断基準として、地震予知の3要素「いつ、どこで、どのくらいの」が明示され、現在の地震活動から見て情報として有用か、根拠としてのデータの観測期間が十分か、第3者が独立な観測で検証を行うことが出来るかなどが上げられている。

これから見ても地震予知って簡単にできるモノではない。地震のメカニズムもやっと分かってきたぐらいで、予知など不可能かもしれない。

大地震 足元にリスク
朝日新聞 2012.1.17

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