2015年11月16日月曜日

財政出動派のクルーグマン教授が、そのコラムで財政緊縮派を皮肉るか

クルーグマンコラム「緊縮の悲劇 予想を超えた」
朝日新聞 2015.11.13
こういう時は財政赤字を気にせず、財政出動すべきだと主張し続けたクルーグマン教授がそのコラム「政策転換の教訓 緊縮の悲劇 予想を超えた」で緊縮財政派を批判している(朝日新聞 2015.11.13)。不況時の財政赤字は有益で有害ではないことがわかっていたのに、経済学の基本と違って何の証拠も分析もせず財政赤字を心配するようになったと言う。

財政赤字は危険だという考えが出てきて緊縮政策に走り雇用、生産を短期的に押し下げたが、クルーグマン教授も想定外の長期的な成長を損なうことになった。緊縮財政は財政面だけ見ても自滅を招く政策で、不況にもかかわらず財政支出を削減した国は、国内経済を痛め、将来の税収にも打撃を与え国の借金さえ増えてしまうというのだ。

経済学はどう教えているか、Daniel B.Suitsの「スーツ経済学原理(上)」(学習研究社 1978.11)を開いてみた。

それによると、「財政政策と財政赤字について、雇用と所得を無視して予算を均衡させようとする試みは経済の不安定性をもたらしやすい。税収は総需要とともに自動的に増減するので、予算を均衡させようという政府の措置は経済の安定化に必要なこととは正反対なものになることが多い」というのだ。

今、IMFは財政破たんした国を救済する代わりに緊縮財政を要求する。ポルトガルはIMFの要求通りやったが、国内経済は疲弊、国民の不満は高まるばかりのようだ。

ギリシャもIMFの緊縮政策を受け入れ緊縮財政をとっていたが、総選挙で反緊縮派が勝った。国内経済に疲弊、緊縮財政に反対したのだが、新しく反緊縮財政の政権ができたが、IMFなどは救済する代わりに緊縮財政を要求したため、破たんか救済かの選択の国民投票で救済を受け入れることになった。

中国は、2008年のリーマンショック後、4兆元(50兆円を超える)の巨額投資で成長率7%以上を確保、世界経済をけん引したように見えたが過剰生産設備、雇用不足でバブル崩壊、世界経済の減速を招いている。

共産党一党独裁政権で「市場の見えざる手」に任せることは無理なようだ。中国は新常態への移行期というがクルーグマン教授はどう見るか。

我が国も財政再建と成長戦略は日本経済再生の車の両輪と言い、先進国一悪い国の借金のため財政再建も喫緊の課題にしている。政府、日銀は異次元の金融緩和で市場にカネを流し企業に設備投資を促すが内需不足では経済界も動きが鈍い。

クルーグマン教授は以前日本にも「赤字財政を気にせず、ここは財政出動だ」とアドバイスしていた。

IMFなどは各国に財政の正常化を要求している。クルーグマン教授の言うようにはいかない。

「この緊縮財政という壊滅的な政策は、長期的な責任の名において行われ、間違った方向転換に反対した人は無責任だと退けられた」とクルーグマン教授は皮肉った。

ある経済学者が言っていた。「経済学は実験することができないから難しい」と。一旦政策を決めて実行し、万一失敗すると取り返しのつかないことになる。

「重鎮がみんなそう言っているから」と政策決定する方法はよくないと、緊縮財政を批判、米国でさえ危機前に比べ現在の状況ははるかに悪いとも言う。

ところが今、猫も杓子も緊縮政策だ。クルーグマン教授の言うように財政赤字を気にせず財政出動する国は見当たらない。だから財政出動していればどうなったかはわからない。でも内需拡大ができず経済は停滞したまま赤字だけ溜まることにもなりかねない。


クルーグマン教授は最後に、「間違ったことを認めようとする人物が如何に少ないことか」と嘆くが、クルーグマン教授はどうなるのか。

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