2018年5月7日月曜日

東電原発事故公判:「対策先送り」と「15.7m予測」の2つの合理性の競合


久しぶりに東電原発事故公判でのやり取りを見て、「対策先送り」と「15.7mの津波予想」の2つの合理性が競合していることが分かった。経営者が対策を先送りした「合理性」と若い技術者が「15.7m津波対策」を必要だと感じた「合理性」だ。どっちが道理、理論にあっているかが争われる。

これだけの甚大な事故を引き起こした責任は大きく「予見可能性」があったかも争われる。経営者はこう言う事案では「知らなかった」とか、「業務上に該当するか」で争うが副社長は会議にも出ているし、それ以上の経営陣も報告を受けていたことになる。

東電は原発という危険な設備を運転管理する事業者で安全に対しては最大の関心を持って経営しなければならないが東電はその点が欠けていたことになる。

確かに15.7mの巨大津波が押し寄せることが予見できたかが重要だ。

その点では、2002年7月に国の専門機関が「15.7mの津波が来る可能性有り」と警告、2006年9月、原子力安全保安院は「地震対策の見直し」を指示していた。事件が起きる5年ほど前になる。

それを受けてか、2008年3月に東電が検討を始めた。80億円の工事費が算出されていたが、経営陣は「先送り」を決定した。裁判ではこの辺の経緯が審理され、新聞が報道していた。

そして、2011年3月東北地方太平洋沖地震が発生、巨大津波で東電福島第一原発の緊急電力系統が損傷しメルトダウンが発生、甚大な原発事故となった。

2008年に防潮堤増強工事に着手していても間に合わなかっただろうとも言われている。

検討した技術者は工事に取りかかるだろうと思っていたが、当時の武藤副社長から「先送り」と言われて力が抜けたとも言う。その後東電は他社にも「先送り」決定を伝えたという。武藤副社長は専門家に見直しを指示、学会が結論を出せば対策するとも言ったようだ。

若い技術者は切迫性に関しては「合理性なし」とかんがえたようだが防潮堤増強に関しては必要だと考えていた。

15.7mの巨大津波が押し寄せることには経営陣は合理性を感じていなかったのだろう。

地震の予測は難しい。30年以内にM8~9が発生する確率が70%と言うと何時熾きても不思議ではないが未だ発生していない例もあれば発生確率が8%が既に起きてしまった例もあるのだ。

「合理性」は人間によって判断が異なる。予見可能性、安全意識があるかどうかが大きく影響する。

又、経営者にとっては業務上過失死傷罪の成立要件がある。3人の旧経営陣に「日常業務に安全確保」があったかどうかも関係する。甚大な事故を起こしながら国民感情とは違った判決になる事もある。

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