2012年11月28日水曜日

円高から円安基調へ:安倍効果か、日銀の政策か


7879円台の円高基調から82円台の円安が続いている。安倍総裁の金融、経済政策が効果を発しているのか、それとも日銀の金融政策のためか。自民党安倍総裁は、デフレから脱却するために思い切った金融緩和をし、円高を是正していくと言えば、民主党は日銀と連携していくと言い、その日銀は自民党が政権公約に掲げたインフレ目標導入に否定的だ。

今まで、77~76円台に円高が進むと、政府は為替介入し、日銀は様子見をしながらもさらなる金融緩和を実施、9月、10月は連続で金融緩和を強化し78円台を保ってきた。

ところが、安倍総裁が、建設国債の日銀買い入れ、物価上昇率目標2%、日銀法の改正などを打ちあげると市場は反応し、円安、株高傾向に転じ、今は82円台前半で推移し、株は9400円台にはいった。

欧州経済、米国経済に大きく影響されるために、この状況が今後も続くかどうかはわからないが、今のところ誰が見ても安倍効果と思った。

ところが、日銀・白川総裁は、円高の悪影響を意識して金融緩和をやっているとしながらも、安倍総裁の金融、経済政策を「現実的でない」と批判した。

野田総理、民主党は政府・日銀が一体となってデフレ脱却を強力に推進するといい、通常国会で大規模な補正予算を組むという。安倍総裁が言っている建設国債の日銀買い入れなど従来とは次元の違った政策には反対している。

財界でも、経団連会長は「建設国債の日銀買い入れ政策は、禁じ手で無謀すぎると批判する。安倍総裁が「自分の発言で相場が円安、株高に動いた」といえば、米倉会長は「安倍総裁の発言で動いているとは思えず、円安は日銀の緩和策の成果だ」という(朝日新聞2012.11.27)。

本当のところはどうなんだ。

我が国だって政府財務残高は1000兆円、対GDP比でも200%を超え、先進国でも一番悪い状況にありながら円高とは、余程他国の状況が悪いのか。

政府の単独為替介入も、一時の効果はあったが長続きはしなかった。それでも、市場に警戒感を持たせ、これ以上の円高を回避させる効果はあっただろう。

国会審議で、日銀が実施する金融緩和に効果があるのかどうか聞かれた日銀・白川総裁は「その時、その時で状況は違うが、効果があるものと考えて実施している」と答弁していた。

デフレ脱却策でも、リーマンショック後、欧米は通貨量を2.4倍に増やしたが、我が国は1.5倍で低い水準だと言い、デフレ脱却が進まない要因に挙げる(松原前衆議院議員談 2012.11.27.東京・JR五反田駅での野田総理街頭演説にて)。

国会審議でもマネタリーベースでは、欧米各国はリーマンショック後大量に増やしているが、我が国は僅かな増加だと日銀を批判するが、白川総裁は対GDP比でみると我が国の方が高水準だと抗弁する。

日銀・白川総裁が、名古屋市での講演で、「強力な金融緩和が円高への一定の歯止めになっている」と発言した報道(朝日新聞 2012.11.27)を見て、「デフレ脱却の道筋」(名古屋での経済界代表者との懇談会における挨拶 日銀 白川総裁2012.11.26)を日銀HPから開いてみた。

それによると、欧州危機は極端な事態に発展するリスクは後退したが緩やかな景気後退局面に入っている。為替レートを見ると、円高化した水準で高どまっており、企業の海外進出の動きが強まっており、根強い円高傾向がそうした動きを加速している面もあるという。
これは、企業の海外シフトの加速や中長期的な成長期待の低下につながり、我が国経済に負の影響を与えることを懸念して、強力な金融緩和を推進しているという。

最近の金融政策運営では、当面消費者物価の前年比上昇率1%を目指し、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と資産買い入れなどによる強力な金融緩和を続けることを約束している。これらの政策は、政府による為替介入と相まって、円高への一定の歯止めとして作用していると考えているようだ。

円高への歯止めに効果があったとしても、円安への効果ではない。

良く議論になる物価上昇率でも、安倍総裁は物価上昇率2~3%を掲げているが、日銀は、「物価上昇の目処は1%台が現実的」という考えを変えていない。政府による成長力強化が実を結べば1%より上がってくる可能性があるともいう(産経新聞 2012.11.27)。

その経済成長率については、潜在成長率は就業者数の伸びと付加価値生産性の伸びからなるという。就業者数の伸び率はー0.6%、2020年でもー0.8%と減少幅は拡大している。付加価値生産性も比較的良好な時期でも+1.5%で、これから考えても先行きの潜在成長率は1%以下だという。

政府や自民党は名目3%の成長率を目指していることを考えると、早期にデフレから脱却し、物価安定のもとでの成長路線に復帰するには、「成長力の強化」と「金融面からの後押し」の両方が必要だと言い、企業は付加価値の高い商品、サービスを提供しなければならないのだ。そして、金融機関は資金面からサポートする。政府は、思い切った規制緩和などで企業が挑戦しやすい環境を整備することが何よりも重要だという(デフレ脱却の道筋)。

デフレ脱却、経済成長は企業、金融機関、政府、日銀それぞれが約束を果たすことが必要であるが、今は日銀の金融政策に過度に頼りすぎではないか。

安倍総裁の金融、経済政策に市場が反応するということは、政府の規制緩和、日銀の金融政策にまだ不満があるということではないか。

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