2013年7月29日月曜日

消費税引き上げ法附則第18条・景気条項をどう考えるか

秋口に消費税引き上げに向けて判断を下す時期が迫ってきたが、この改正消費税法附則第18条・景気条項で財務省と官邸、与野党を問わず増税反対派と賛成派の思惑の違いが出て来ているが、この附則第18条・・消費税率の引き上げに当たって、当時の民主党・野田政権での審議を思い出してみよう。

財政再建、社会保障費の恒久財源として消費税増税は自民党が早々と10%を公約に掲げ、民主党政権で財務相を経験した菅総理(当時)が参院選前に唐突に消費税引き上げ、自民党の税率10%を参考にしたいと発表し惨敗、続いてこれも財務相経験者の野田総理(当時)が財務省の援護を受け強力に推進し成立させた。自民党総裁だった谷垣さんも財務相経験者だった。

その審議過程で、増税に反対する議員達が景気条項を附則に加えることで高いハードルを築くことになった。

当然、財務省は反対だ。増税に足かせとなるし、経済成長率を数値で記すことは法律の内容にそぐわないと抵抗したが、押さえつけられる結果になり譲歩した。

当時のNHKの予算委員会の審議を聞いたが、野党議員の質問に安住財務相(当時)は「今の経済状態でも増税はGOだ」という意味の答弁をしていたのを覚えている。デフレ下でも経済は成長しているし、増税に問題はないという発言だった。

しかし、消費税増税は景気の腰を折り経済成長に支障を来すことの懸念は、今も拭えないし、十分に議論された形跡もない。

そこで今、安倍総理は「秋口に自分で判断する」と財務省の増税既定路線を制止し、財政再建に関わる「中期財政計画」も増税を前提にしない考えを示した(讀賣新聞2013.7.28)。

メデイアの報道によると、その判断時期も臨時国会前という。だとすると、国会の衆参予算委員会での審議なしに判断を下すことになるのか。

しかし、いつものことであるが、抜本的改革は後回しで国民に負担を強いることが先行する政治が続く。

この「消費税率の引き上げに当たっての措置・・附則第18条を財務省のHPから開いてみた。

その趣旨には、世代間の公平を確保するために社会保障制度改革、行政改革、財政再建、税制改革などに取り組むとし、経済状況を好転させる政策を講じることを条件に税制の抜本的改革の一環が消費税の引き上げなのだ。

今までメデイアで景気条項の問題が指摘されていたが、附則第18条を全部読んでみるのも重要だ。いずれも財務省「社会保障の安定財源の確保などを図る税制の抜本的か改革を行うための消費税法などの一部を改正するなどの法律案の概要」による。

第1項:
消費税率の引き上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施する為、物価が持続的に下落の状況から脱却および経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度を目指した望ましい経済成長のあり方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講じる。

第2項:
この法律の公布後、消費税率の引き上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応するかんてんから、第2条および第3条に規定する消費税率の引き上げに関わる改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目および実質の経済成長率、物価動向など、種々の経済指標を確認し、前項の規定を踏まえつつ、経済状況などを総合的に勘案した上で、その施行の停止を含めて所用の措置を講じる。
 
私も、まともに読んだのは初めてだ。

法律の附則にしては条文が長たらしい。こういう条文は何とでも逃げ道がある。必要な措置、所要の措置を講じるでも逃げ道はありそうだ。

第1項の名目3%、実質2%の成長が達成出来なければ経済状況は好転したと言えないのか。目指す成長率が平成32年度までの平均と言うが、そんな先のことまでどう判断するのか。

第2項でも、目標達成の為の措置を講じさえすれば増税は出来るとも解釈できる。

政府、日銀、エコノミストの一部には名目3%、実質2%の成長率の達成は可能を考えているが、民間エコノミストの多くは不可能と見ている。

安倍総理は「自分が判断する」と言うが、それは無理だろう。賛否が二分した時、どう判断を下すのか。専門家の判断に任せるだろうが、その公正を期すための方策を考えた方が良さそうだ。


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