2013年8月1日木曜日

東電福島第一原発・汚染水海洋流出公表遅れ:どうして良いのか分からないのが本音では

読売新聞 2013.7.30
情報隠しの意図があったかどうか知らないが、また東電・福島第一原発の汚染水海洋流出の公表遅れが明るみになった。メデイア、漁協、自治体などで批判が高まっているが、東電にとっては「どうしていいのか分からない」のが本音ではなかろうか。

私の経験から言うと、測定や観測で放射性物質が高濃度で検出されても、その原因を確定し、対策を確立し、汚染拡大を防止できなければ容易に発表はできないものだ。社内的にもその点は大事なところだし、社外に発表しなければならないことであれば尚更だ。

だからと言って、東電の公表遅れを擁護する者ではないが、これだけの大惨事で流出している物質が放射性物質であれば東電にも特段の注意が要求されてしかるべきだ。

特に地下水汚染の経路調査、拡散防止工事は難しいし、封じ込め工事は地下水の流れを変えることになり、どこで地下水位が上がるかわからない。地下水位が上がれば躯体や構築物が浮いてくる危険がある。

地下水がどっちの方向に流れているか。高いところから低いところへ流れるのは常識であるが、実際には地下水の動きは複雑だ。

私も地下水の流れの調査をやったことがある。ボーリングの穴にセンサーを投入し、地下水の中に含まれるゴミの動きを水位ごとに調査したが、決まった方向には流れず、拡散したり、流れたり戻ったりの繰り返しでなかなか決まらない。

東電の汚染水の海洋流出がメデイアで大きく取り上げられたので手持ちの読売新聞、朝日新聞を読み返してみた。

地下水流出は、2年前のメルトダウン直後、汚染水が海や地中に漏れた場所で当時漏出防止工事をやったようだ。汚染源は電源ケーブル、海水配管用のトンネルで1万5000トン以上の汚染水が残っているという。当時は出口付近の漏水防止工事をしたが、そのほかは放置し、水も抜かなかったようだ(讀賣新聞2013.7.30)。

昨年12月、港湾内の放射性物質の濃度の下がりが鈍ったので、原因調査のために地下水調査を始めたが、5月に地下水の放射能物質の濃度が急上昇、当初東電は海への流出を否定したが、原子力規制委員会に指摘されても見解を変えなかったが、7月海と地下水の水位が連動していることが分かって初めて、流出を認めた(同上)。

「このまま上昇すると地表にあふれ出るリスクがある」と記者会見で明らかにした。

5月下旬岸壁に近い井戸から高濃度検出、6月19日の海側観測井戸で高濃度の放射性物質検出、29日海に近い観測井から高濃度検出、7月8日護岸工事開始という経過を見ても、もっと早く公表するチャンスはあったとメデイアは追求する。

一方、東電は「事実確認が出来てないから発表しない」考えだったようだが、原発事故対応の拙さを追求される羽目になった。

東電社長は26日の会見で、19日に流出と判断しながら公表が3日後の22日にずれ込んだことを陳謝し、記者の「安全文化をどう考えるか」と問われ、「変わったかというと全く出来ていない」と体質が変わっていないことを認めざるを得なかった(朝日新聞2013.7.27)。

そして、対応遅れは広報に問題があるとして、明確な根拠を示せなくても最悪の事態について迅速に言及することにしたのだそうだ。

地下水汚染の原因調査、対策を検討した経験から、東電の立場は分からないことはない。原因と対策をはっきりさせてから公表するのが通常であるが、今回は余りにも遅すぎる。

福島第一原発の事故当初は、未経験の事態発生で現場は混乱していたと思う。汚染水の施設外への流出は絶対避けなければならない事態だったが、原子炉の冷却作業など優先すべき課題が多かったことも確かだ。

そして、事故現場がどうなっているか確認することが出来ない状態が続いていることも対応が後手後手に回った要因にもなっていないか。

東電を擁護するつもりは全くないが、恥を忍んでも事実を速やかに公表する姿勢は守ってほしいものだ。

情報公開は原子力3原則の一つだ。原子力研究の情報公開ばかりでなく、事故時の情報公開も含まれるのだ。又、情報は早いほど意味があるのだ。


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