2013年8月26日月曜日

検察、原発事故で関係者不起訴:地震・津波は天災でも事故拡大は人災ではなかったのか

検察は、原発事故で業務上過失致死傷容疑で告訴、告発されていた東電幹部、政府関係者を不起訴処分にするという。地震や津波は天災であっても、その後の事故拡大を防止できなかったのは人災ではなかったのか。

あれだけの大惨事を起こし、今なお各方面に大きな影響を与えている東電・福島第一原発の原発事故で誰も責任を問われないのは、被災者はもちろん、国民にとっても不思議なことだ。

東電の事故調を除いて、各種事故調はこの惨事を人災と断定していたのではないか。それでも業務上過失致死傷罪が成立する条件を満たさなかったというのか。

捜査のポイントは2点、①15mの津波を予測していたか、②震災後の事故対応に問題はなかったかで責任のありかを追及するのは当然だろう。

「業務上」というのだから、原発に携わるのだから他の業務に比べても高い「注意義務」を要求されるはずだ。それともトップ経営者、総理を始め政府関係者には日常業務としての責任が問われないのか。

設置されている防潮堤より高い15mの津波を想定したシミュレーションがされ、その結果かさ上げ工事に80億円かかるということだったが、「そんな津波はありえない」と幹部が拒否したようだ(これは事故調でもはっきり名前まで記している)。

更に近くの東北電力女川原発では、高い津波を想定し防潮堤をかさ上げしたというではないか。被害を最小限に食い止められたので、地域住民に避難場所として提供されたと報道されていた。福島第一原発とは大違いの対応だったではないか。

当時の地震、津波研究者は「我が国ではM9の地震など起きない」と考えていたことは確かであるが、一部研究者は異論を唱えていたはずだ。

そんなことを考えると巨大地震、巨大津波の来襲には「予見可能性があった」とみるべきではないか。

おそらく東電関係者は、「知らぬ存ぜぬ」で責任回避をしようとしているのだろうが、検察はしっかり判断すべきだ。

また、震災後の事故対応には大きな責任があり、事故拡大防止、防災対策も不十分で人災としか思えない。

特に、総電源喪失で原子炉への冷却水供給がうまくいっているのかどうかの判断ができなかった。通常であれば「像の鼻」から蒸気が出ているのを確認すればいいのだが、現場に近づけないこともあって確認できず、対応が後手後手になった。アメリカではその訓練をしているというが、東電は今まで一度も訓練をしていなかった。学識者は「繰り出す応急処置はすべて失敗だった」とコメントしていた(NHK検証番組より)。

水素爆発を防止する「ベントの解放」も菅総理(当時)が現場視察を急いだために東電が躊躇したと言っていたが、政府事故調では、総理の現場視察はベント実施に影響はなかったという。

東電は、今回の事故を天災、官邸に振り回されたと主張し任転嫁していたが、事故後の対応のお粗末さは政府事故調で明らかにされている。

政府事故調は、地震・津波の自然現象が起因とするが、格納容器破損→放射能放出を想定せず、津波対策、シビアアクシデント対応など防災対策がなされていなかったし、事前の事故防止策、事故後の現場対応、政府、自治体を含めて被害拡大防止が不十分だったことを指摘している。

注目すべきは、福島第一原発と近くにある福島第二原発の対応の違いだ。総電源喪失でも第二原発は次なる代替手段が実際に可能かどうかを確認の上で注水手段の切り替えをしたというが、当然のことが第一原発ではできていなかった。

これほどの大惨事で、まだ収束のめども全く立っていない事故の責任がだれにもないこと自体がおかしくないか。

検察審査会が、強制起訴するかどうかだ。大いに注目すべきだ。




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