米中貿易摩擦交渉の先行きも不透明で世界経済は下降リスク、折角金融政策正常化に向かって利上げを目指していた欧米中央銀行も、市場の利下げ、再び金融緩和への逆戻り期待が強まる一方、国内政治では緊縮財政に不満が高まりポピュリズムの台頭で政権交代するも不安定になってきた。
FRB・パウエル議長はトランプ大統領の強い利下げ要求に折れたのか、利上げを一旦中止したが、利下げに言及しだした。米国内経済は最近の雇用も22万人増で問題ないとみていたが、米中貿易交渉で景気下降リスクもあり、新聞報道では7月末に利下げすると発表すると、世界市場は金融緩和トレード、ドル売り円買いで為替相場は107円台に。それでも市場は年3~4回の利下げを織り込み済みだという。
欧州ではイタリア、ギリシャで見られる緊縮財政への不満でポピュリズム政党が台頭し、ドラギ・ECB総裁は緊縮財政を見直し緩和への道を逆行する舵取りをせざるを得なくなった。
一方、6年間も異次元の金融緩和策以外に無策だった日銀も欧米中央銀行が「緩和路線への逆行」でニンマリで景気後退のリスクなら「更なる行動をとる」と見栄を張る
市場は景気後退の事態が想定されると「緩和」を期待する。それにこたえるかのように中央銀行は「利上げ中止」、「利下げ」を臭わし市場の期待に応えようとする。
しかし、市場にカネを流す緩和は、バブルを引き起こすことはあっても消費や経済成長には効果が薄い。市場は機能不全にかかっているのだ。パウエル議長、ドラギ総裁はこの動きに不満なのだろう。
先のG20財務相・中央銀行総裁会議に出席した朝日新聞の原真人編集委員は朝日新聞(2019.7.10)の「多事泰論「中央銀行トップたちの憂鬱」で、集合写真で麻生財務相、黒田総裁は前列中央に笑顔で座っていたがFRBパウエル議長は後方の立ち位置、ドラギ総裁は全体との距離を取り左端に立った。2人の苦悩を原委員は感じ取ったのだ。
G20財務相・中央銀行総裁会議では「必要があれば更なる行動をとる」と言うことは金融正常化の道をいったん中断し「利下げ」をすることだろうが、日本は金融正常化が遅れ取れる政策に限界があることはわかる。
マイナス金利、長期金利ゼロ政策を続けていくことへの弊害はわかっているが、具体的に日本経済にどういうマイナス効果が出てくるのか。
世界恐慌を考えるとバルブ経済から何らかの引き金があって経済悪化、経済破綻それが世界に波及したのだ。1929年頃に比べればセーフテイ―ネットも整備され世界恐慌までは至らなくても大変な状況になることはわかっている。
火種はGDP世界第2位の中国経済だろう。過剰な生産力で商品の売れ残りが多い。一帯一路構想も「債務のワナ」など支援国で問題が発生、支援計画も多くが破たんしているようだ。
欧州各国の財政危機、反EU勢力の増加も火種の一つだ。
アメリカがイラン核合意離脱で経済制裁を強化していることがホルムズ海峡の原油輸送路確保でエネルギー安全保障の問題を引き起こした。アメリカは単独でなく、友好国でホルムズ海峡の安全を確保するために日本へも協力を要請したという。
一方GDP世界第3位の日本の火種はどうか。日銀が国債を多量に買い入れたために国債価格の下落は日銀の経営に、ゼロ金利政策は銀行経営に影響を与える。日銀は政府と一体だから倒産することはないだろうが、地方銀行も統合、合併で生き残りをかけている。
こういった危機的状況に世界経済は直面する状況下でトランプ大統領は世界経済をどう考えているのか。多国間交渉を否定し2国間交渉で相手国を脅し、けん制することでアメリカ優位の交渉を進めている。
GDP世界1位の大国、世界の警察官をして世界の秩序を守ってきたアメリカが自国第一、保護主義で協調路線を破滅させ、各国との軋轢が世界覇権を狙う中国の進出を許し自由主義世界のリーダーが不在の状況を形成している。
何が原因で世界経済が破滅していくのか。火種を多く抱えたまま、誰が仲裁役をかってでるのか。イギリスはEU離脱で混沌としている。フランスのマクロンは国内政治で問題を抱えているし、EU改革も反EU勢力の増大でうまくいきそうにない。ドイツのメルケル首相は移民問題で引責辞任が予定されている。EUから誰か出てくるか。
市場も身勝手な緩和要求でぼろ儲けするときではなくなった。金融正常化、世界経済の安定で身を切る思いをするべきではないか。
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