2019年7月20日土曜日

安倍総理に問う(3):成果がないのに、いつまで続けるのか「異次元の金融緩和」


「2年で2%」と華々しく打ち上げたアベノミクスの第一の矢「異次元の金融緩和」、一時の成果はあった(?)と思われていたが、これと言った成果はなく、いつまで続けるつもりか。

今回の参院選での自民党公約要旨を見ても経済面では「GDP600兆円」、「成長と分配の好循環」、「ローカルアベノミクスの推進」と記されているだけ。他の党も金融政策に対してのコメントはない。格差拡大で評判の悪いアベノミクスで地方経済の活性化を目指すとでもいうのか。

今は、米中経済摩擦で世界経済は下降局面、欧米中央銀行は縮小、利上げで金融政策正常化を目指していたが、ここに来て再び緩和の動きが出てきた。日銀は「2%物価目標が安定するまで」緩和策を継続し遅れを取っていたが、これで一先ず「ホッと」したところか。

でも他の中央銀行が利下げなどの政策転換もあるが、日銀には金融政策での自由度は小さい。いずれにしても厳しい政策運営になる。

アベノミクスの評価も散々だ。

安倍政権は好転した経済指標を並べて成果を主張するが、実感は感じられない。景気基調を「悪化」と評価したことで初めて「我々の実感に近づいた」と苦笑いする中小企業の経営者だ。

格差は拡大、地方は疲弊している。

一方、リフレ派経済学である「異次元の金融緩和」を非伝統的金融政策と評し実証なき理論とこき下ろす経済学者もいる。アベノミクスで当初円高→円安、株安→株高に移ったように見えたが、京大名誉教授の伊藤先生は、その頃を検証した結果、日銀総裁を更迭し異次元の金融緩和策を打つかなり前から欧米の投資ファンドは日本市場に注目しすでに行動を起こしていたという(アベノミクス批判 伊藤光晴 岩波書店 2014)。信州大学の教授も同じ考えを述べていた。

何のことはない「市場の見えざる手」がすでに働いていたのだ。

そして今、リフレ派の旗振りをした人はどう考えているのか。

日銀のリフレ派政策決定委員はさらなる緩和を主張する。ところがエール大名誉教授で内閣府参与の浜田先生は最近「雇用が改善したのだからいいだろう」と言いだした。2%物価目標未達でも問題にしないらしい。

当初考えられたストーリーは「市場の通貨量を増やす→物価が上がる→賃金上昇→消費拡大→投資増→景気の好循環」のようなものだったが、物価は上がらない。長期金利は低く保っているが投資が増えない。M&A,バブル経済、大企業は儲けを内部留保し、その額は460兆円にもなる。

成長と分配の歯車があっていない。企業の儲けを家計へ再分配するシステムがなかったことで海外から強く望まれた「内需拡大」もことごとく失敗した(前川レポート、21世紀版前川レポート)。

ところで異次元の金融緩和政策をいつまで続けるのか。

国会審議では「2%物価目標が安定的に維持できるまで」と安倍総理は答えていたが、「いつまで続けるわけにもいかない。私の任期中にやり遂げたい」と言ったそうだが、何をやり遂げるのか。景気も好転し緩和縮小、出口戦略で正常化を目指すのか、欧米に遅れを取っているため2%未達でも出口戦略に向かうのか。

国会審議で前原さんに「2%の根拠を聞かれ」、「2,3,4%と専門家は数字を並べるが一番達成の可能性がある2%に決めた」と言う。前原さんは「それだけの根拠か」とあきれていたが、その程度なのだ。

それでも「日銀の黒田総裁に任せている」「信頼している」と他人まかせである。目標設定は安倍総理だったが、未達の原因は黒田総裁で逃げるのか。達成時期も日銀は言及しなくなったが、2021年頃という。それでも2021年の物価上昇率は1.6%と予測し今から未達を宣言しているようなものだ。

非伝統的金融政策である「異次元の金融緩和策」は、実証されていない理論であり、その成果は海外の主流派経済学者のみならず我が国の経済学者も否定している。

また、実際にその通りになっているのだが、日銀の政策決定会合委員の中には「更なる緩和」を主張する者もいるし、アメリカからは新しい経済理論であるMMTが飛び込んできた。なんと日本をモデルにした理論だという。

「国の借金は気にするな。悪いインフレになれば緊縮財政で調整しなければならないが、それまでは財政出動せよ」と言うのだ。

財政出動し、市場の通貨量をさらに増やせば日本の経済はどうなるのか。2010年頃前の白川日銀総裁が危惧していたことが起こる可能性が高くなってきた。



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