2011年10月10日月曜日

八ッ場ダム:政権に翻弄され混迷極まる公共事業










































止(や)めようにも止(や)められず、止(と)めようにも止(と)められず、政権に翻弄され、混迷する八ツ場ダム建設。民主党政権で中止→検証→先送り、再度自民党政権で推進になるのか。民主党政権交代での公共事業見直しの象徴となり本体工事を中止させられた八ッ場ダムは、当初建設反対だった住民が今度は建設推進を訴える羽目になった。

まだ紅葉には早いが、八ッ場ダム建設工事がどうなっているか知るために、9日、一年ぶりに川原湯温泉を尋ねた。

まず瀧見橋で吾妻川の紅葉を見たが、まだ早そう。でもすでに葉が茶色くなった木もあり、今年の紅葉もあまりきれいではないかもしれない。

瀧見橋の下流を見ると、ダム本体工事の前に建設された河川水を迂回配水する地下トンネルの呑水口構築物(正式にこういうかは忘れた)が顔を出している。

見物に来ていた年配の夫婦の女性が「こんなすばらしい景色が水没するなんて残念ですね」というと男性は「巨額の建設費を使いながら、まだ完成しない。ダム工事を中止させた民主党も落としどころが分からなくなっているのではないか」、「そう思いませんか」と私に話を振ってきた。「民主党政権で中止、検証そして先送りで再度自民党政権で推進になるのではないですか」と考えを述べた。

さながら、朝の情報番組のキャスターとコメンテーターのやり取りまがいだ。それだけ八ッ場ダム建設は政治マターなのだ。

8月の強雨で川原湯温泉駅まで土砂が流れてきたというので、工事中の盛土部分が流出したのかと注意してみたが、駅前の急傾斜の崖にシートがかけられ、大きな土嚢が置かれていた。崖の上がどうなっているのかは確認できなかった。川原湯温泉街は急峻な崖と脆い岩肌が露出している。土砂崩れが起きても不思議ではない。

最初に打越代替地に向かった。約25軒ほどの新築住宅が建っている。美容室が2軒営業中だった。消防施設なども建っているが空き地が目立つ。すでに地域から離れていった人が多いと聞いたので計画通りに行っていないのだろう。1年前に来た時と町の様子は変わらない。しかし建っている住宅を見ると豪華な建物もある。

向かいの代替地、川原畑地区を望んでも様子は同じだ。


違ったところといえば、代替地を結ぶ仮称湖面1号橋の工事が進んでいることだ。川原湯温泉の歓迎アーチがあり、以前茅葺屋根の食事処があったところに橋脚が造られていた。生活優先工事なのだろう。

温泉街を歩いて上った。住居や旅館の撤去跡のコンクリートの基礎がやけに目に付く。いつ書かれたのだろうか、廃業した旅館の歓迎板に○○ご一行様のかすれた文字が哀れだ。

温泉街の中心地に来た。1年前に来た時、最後の常連客を送り出し「長い間のご愛顧、ありがとうございました」の看板を出していた「高田屋」は、撤去されていた。その隣にあった「みはらし館(?)」も撤去され、残っているのは「柏屋」だが、玄関ドアの内側に「休館中」の表示が出ていた。

標高586mがダム天端の高さでダム水位は583m、ほとんどの旅館が水没するのだ。

最盛期は22軒ほどあったという旅館も、今はどのくらいだろう。撤去したといっても、廃業したのか、休業したのか分からない。

さらに温泉街をあがり、JRの新駅が出来る付近まで行った。詳しい図面が分からないのいだけれど、八ッ場トンネルの工事現場が広がっていた。向こうに有名になった仮称湖面2号橋が見え、すでに車が通っている。

ダム本体工事が中止になるのか、着工になるのか、民主党は今年秋までに結論を出すという。その事業主体の国土交通省の八ッ場ダム検証では、建設しないで河川改修や地下法水路など他の案に比べ総事業費で1000億円以上安いという。そりゃあそうだろう、他の案はダムより大掛かりな工事らしい。国土交通省は、八ッ場ダム建設を継続して進めた方が安いということ強調する検証ではないか。

でも、今回の台風12号、15号による大規模な土砂崩れ災害、水害を考えると、八ッ場ダムによる治水も見直されるのだろうが、常に満杯で水を貯めていてはいざという時に洪水調整が出来るのか。むしろダムを守るために放流することによって下流で水害を増すことにもなりかねない。

発電施設もないので、電力不足対応にもならない。しかし、下流に発電所があるので少しは役立つか。
ダムが出来なければ、県道、国道、JRの付け替え、代替地移転、住民の町外転出は何だったのかということになる。県道、国道、JRの付け替えについては豪雨時に、今の国道の通行止め、JRの運転休止対策にはなるが余りにも巨費だ。

例え、ダムが出来たところでダム湖畔の新川原湯温泉にお客が来るのか。近くに草津温泉、伊香保温泉などを有名温泉があり、十分に競争できるのか。古びた温泉が川原湯温泉の風情であれば新しい温泉に興味がわくか。さらに温泉旅館もさることながら、温泉客を迎える娯楽街が造れるのか。

八ッ場ダム建設は、止めようにも止められず、止めようにも止められない二進も三進もいかない公共工事の様相を呈してきた。検証しようにも、計画時の計算書も無いという。

写真上段左:打越代替地の現況


写真上段右:瀧見橋下流に構築されたトンネル配水路の呑口構造


写真2段目:仮称湖面1号橋の工事現場

写真3段目:川原湯温泉街での旅館撤去跡

写真4段目:新JR川原湯温泉付近の工事

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