2012年6月26日火曜日

高度の安全注意義務、自己責任の欠如した東電に原発を担う資格なし


東電勝俣会長のインタビュー
記事を掲載する読売新聞
2012.6.26

高度の安全注意義務、自己責任の欠如した東京電力に原子力発電を担う資格はない。今回の福島第一原発事故では天災、想定外、官邸の介入もあり、東電は被害者の立場を主張するような事故調査報告書を出したのはつい先日だった。そして今度東電の勝俣会長が事故後初めて読売新聞(2012.6.26)のインタビューに応じた記事が掲載された。

一番ポイントになる福島第一原発の安全対策は「充分であったと思う」と従来の考えを繰り返し、政府と見解が異なっている全面撤退そして原子力損害賠償法の不備などに言及した。

この福島第一原発の事故に関して言えることは、一旦事故が起きると取り返しのつかない事態になる原子力発電事業にあって「高度の安全注意義務」が事業者にどう求められているかだ。

いろんな事故が起きると安全配慮義務違反が問われ責任が追及されるところであるが、今回の原発事故はどうなるのか。

勝俣会長は自分たちの安全対策は十分だったとし、新たな情報にも目配りし確立した知見があれば従う方向だったと言い、国の方針や学会の研究などにも気を配っていたことをしていたというのだ。

当時の新聞報道を捲ってみた。

福島第一原発を襲った波高さは想定5.4mに対して3倍近い14m超、壊滅的な被害を受けたが、東北電力女川原発は9.1mの津波に備えていたので大きな被害はなかった。2009年には過去に大きな津波があり、再び来る可能性が指摘されていた。90年代から東電の想定は甘いという警告は専門家からも指摘されていた(読売新聞2011.3.25)。

そして東電は06年にも設計の数値を超える津波が来る確率を「50年以内に約10%」と予測し、06年7月米国であった原子力工学の国際会議で発表したという。それによると10mを超える確率が約1%弱だったという。報告書では「想定を超える可能性が依然としてある」と指摘していたが、対策にどうつなげるかは今後の課題としたようだ(読売新聞 2011.4.24)

また、08年には東電の試算で高さ15mを超える津波の遡上を予測していた。「想定外の津波」の東電の主張を崩すものだった。それでも東電は対策を強化することはなかった。無理矢理に想定した結果であり、公表の必要もなく、また設備や運用に反映する類のものではなかったと松本立地本部長代理は記者会見で述べている(読売新聞 2011.8.25)。

原子力行政まで関与した東電が産業界からの圧力もあり、頑なに巨大津波による被害を想定外として否定していたことになる。

120kmほど離れた東北電力女川原発が大きな被害を被らず、逆に被災住民を受け入れていたことを考えると何と情けない企業かと思う。

3月15日未明の早い段階から「作業員を同原発から撤退させたい」という真意が政府と東電で大きく食い違っていた。政府、官邸は「全面撤回と受け止めた」というが、東電は「70人ほど残した退避」だと強調した。

無責任な東電だから全員撤退を申し出たのだと思う。しかし、政府関係者の拒否にあい撤退を断念したのだろう。菅総理が東電に乗り込んで「撤退などあり得ない」と迫ったという。その時の東電幹部の受けた印象は異様なものだったと東電の事故調査報告書は言う。

この時以降、官邸が事あるごとに介入してきたことが、指揮・命令系統の混乱を導き、初動対応などに遅れを生じさせたと東電は批判し、自分たちは被害者という立場を鮮明にしているようにも思える。

賠償問題の不備も指摘している。

原子力損害賠償法では、「異常に巨大な天災地変または社会的動乱」が原因の場合は電力会社は責任を逃れる「免責条項」がある。

当時新聞報道では、この免責条項が議論されていたが、東電は世論が激しくなれば公的資金や銀行による資金支援が実現せず、結果的に破綻しかねないと断念したようだ。例外規定は事実上使えない条文だというのだ。

しかし、損害賠償にあたっては東電の「賠償能力」に配慮するよう原子力損害賠償紛争審議会に要望書を出したことに批判が集まっていた(asahi.com 2011.5.5)。
東電の社長も天井知らずの損害賠償になることを恐れたのだろう。
それにしても原子力発電という危険で巨大な技術を扱う電力会社が、高度の安全注意義務に反して経済性を重視した経営姿勢は批判されて当たり前だ。

特に08年だったと思うが、巨大津波の来襲が予想されることが分かった時に、その対策としての防潮堤の工事費が80億円と見積もられていた。80億円という金額は今回の資金注入、損害賠償額に比べると如何にちっぽけな金額であることか。経営者はそれでも自分たちの判断が正しかったと考えているのだろうか。

経営陣には、刑事上、民事上多大な損害賠償の責任が求められている。

高度の安全注意義務、自己責任の欠如している東京電力に、原子力発電事業を担う資格はなかったのだ。

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