2015年7月4日土曜日

赤字国債38兆円、それでも日銀は何故追加緩和80兆円に拘るのか

税収増により赤字国債発行も38兆円になるが、何故か日銀は追加緩和80兆円に拘る。2014年度の税収が当初予定の50兆円を超え53.9兆円という21年ぶりの高水準になったと新聞が報じる。だから14年度の国債の新規発行は38.5兆円になる。財政ファイナンスの疑いがかかるが日銀の量的緩和も40兆円に縮小しても良さそうだが、追加緩和80兆円に拘る。

いつまで続けるのかゼロ金利と追加緩和ということになる。

2年で2%の物価安定目標達成を目指す日銀だがその達成は覚束ない。下振れ防止に日銀は景気の下支えで追加緩和を維持する。

又、2年で2倍のマネタリーベース増で脱デフレ、円安による企業の活性化を目指すが円安による輸出産業の業績改善は果たせそうだが輸入品の高騰による生活必需品の値上がりは国民の生活を脅かす結果になっている。

マネタリーベース増→マネーストック増→銀行からの企業への融資増となり日本経済の復活を夢見たがなかなか思うようには行かないようだ。マネタリーベースは2年で2倍、270兆円を超え最近は320兆円になった。

ところがマネタリーベースより経済を評価するときに重要なマネーストック(銀行から企業に回るおカネの量)は年に2~3%の低い伸びで企業の生産活動に生かされていない。その要因に需要が少ないこと、内部資金で十分にまかなえるということなのか。だから市場にダブついたカネは株や土地の高騰、バブルへとなった。今では円安になり海外から国内回帰の傾向も出ているようだが、この銀行から企業へおカネが流れないことは経済財政諮問会議で麻生財務相も指摘し民間議員が「その点も議論しましょう」と言っていたがどうなったのか。

「ゼロ金利下ではマネタリーベースの効果は無い」と言ったのは確かノーベル経済学賞受賞のクルーグマン先生だ。本当にそうらしい。

また、日本が長いデフレから脱却出来ないのはマネーストックの伸びが低いためで日銀は福井総裁、白川総裁時代から緩やかな量的緩和を実施していたのだ。だから1000兆円を超える借金になった。反対に欧米ではリーマンショック後、極端におカネを市場に流した。

黒田総裁が2年で2倍と目標を掲げたのもマネーストックを大きく伸ばそうとしたのだが欧米に較べ遅かった。だから今も苦しんでいる。マネタリーベース増で円安になり当初は効果もあったが需要の躍起にはなっていない。

このままで日銀の80兆円に上る追加緩和はどうなるのか。

脱デフレの効果も出ていない。2%物価安定目標達成も危なっかしい。日銀の今の金融政策は「時間稼ぎ」で、成長戦略、財政再建の必要性を黒田総裁は強く説く。

でも市場は何かと日銀の追加緩和を期待する.景気の下支えには効果があるのだろう。

また、米国の金融政策の正常化を狙った利上げのタイミングも近づいている。円安ドル高が懸念されているが日銀も出口戦略を検討しなければならなくなる。取り敢えずは50兆円への縮小か。

日銀の信認も問われる。国債が下落すると金利が上がる。金利1%で5.6兆円の損失が出ると日銀が試算している。大量に国債を保有する日銀をはじめ銀行の資産減額は経営にも影響してくる。「国債はリスク資産」と言われ銀行管理も強化されるらしい。

ゼロ金利で慣れた企業は金利が上がると経営に影響する。特に中小企業は大変だと聞く。本当にそうか。寧ろゼロ金利でないとやっていけない日本経済にこそ問題があるのではないか。中小企業が困ると言うがカネを借りたい企業には銀行は貸したがらない危ない企業なのだ。

又、年金受給者など高齢者の生活が厳しいと言うが、預貯金の金利を上げれば利息も付いて少しは楽になるのではないか。社会保障費の削減ばかりされては迷惑だ。利率を上げて少しは預金の金額が上がることも考えて欲しい。

そして日銀の失敗はアベノミクスの不信につながる。

だから「成長戦略」「財政再建」は喫緊の課題だが、どの政権も同じ課題に苦しんでいるし当てのない経済成長に頼みすぎることに警戒感も出ている。財務省vs経済財政諮問会議が政府の経済運営に陰を投げかける。

先日の朝日新聞(2015.6.24)での元日銀副総裁である山口さんのインタビュー記事が気になった。山口さんは「2%と言う物価上昇目標は無理、日銀は早く現実的な目標に変えた方が良い」という。

異次元の金融政策というアベノミクスも何ら特異な経済政策ではなく高橋是清蔵相が1930年代に円安化、財政拡大、日銀の国債引き受けをやった平成版なのだ.当時と同様に景気回復の効果はそれなりにあったが緩やかなインフレを作ろうとした日銀の成果は上がっていないという(同上)。


期待感だけではダメなのだ。

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